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米2月中古住宅販売件数、金利上昇を一因に10年ぶり高水準から減少

by • March 23, 2017 • Finance, Latest NewsComments Off1815

Existing Home Sales Decline From 10-Year High.

米2月中古住宅販売件数、米1月住宅価格指数、MBA住宅ローン申請件数指数をおさらいしていきます。

全米リアルター協会(NAR)が発表した米2月中古住宅販売件数は年率548万件と、市場予想の555万件を下回った2007年2月以来の高水準を達成した前月の569万件から3.7%減少している。前年比では5.4%増と、前月の5.6%増から鈍化しつつ7ヵ月連続でプラスだった。金利上昇が一因とみられ、2月は1月に続き2.5%に乗せる場面がみられた。

内訳をみると一戸建てが489.0万件と、2007年2月以来の500万件乗せを達成した前月の504.0万件を3.0%下回った。複合住宅は59.0万件と、前月の65.0万件から9.8%落ち込んだ。

4大地域別では、1月とは反対に1地域を除き全て減少した。今回は住宅市場の規模が最大で、石油生産地で知られる南部が前月比1.3%増の234.0万件と2ヵ月連続で増加した。反対に北東部は13.8%減の69万件と前月から減少に反転、IT企業が集まる西部も3.1%減の125万件と、3ヵ月ぶりに減少に転じている。中西部は7.0%減の125万件と、3ヵ月連続で減少した。

在庫件数は前月比4.2%増の175万件と、2ヵ月連続で増加した。2016年12月は165万件と、1999年以来での最低を更新していた。中古住宅での需給ひっ迫の厳しさが緩和してきた可能性を示す。在庫が増え販売が減少した結果、在庫相当は前月の3.6ヵ月から3.8ヵ月へ延びた。中央価格は前年比で7.7%上昇の22.84万ドル。米2月雇用統計で示された平均時給の前年比2.8%の上昇を大幅に超えた水準を保つ。中央価格の前月比では0.5%上昇し、3ヵ月ぶりに反発した。売り出し平均期間は45日と、前月の50日を下回り3ヵ月ぶりの短さとなる。

買い手の内訳は、以下の通り。
・差し押さえ物件 6%>前月は5%、前年同月は7%
・ショートセール(担保残債価額よりも安い価額で販売する住宅) 1%<前月は2%、前年同月は3%
・差し押さえとショートセールを合わせた不良債権物件 7%=前月は7%、前年同月は10%
・新規購入者 32%<前月は33%、前年同月は30%
・現金購入者 27%、2015年11月以来の高水準>前月は23%と直近で最低、前年同月は25%
・住居用ではなく投資向け 17%>前月は15%、前年同期は18%
(このうち現金払いが71%、2015年4月以来の高水準)

中古住宅販売件数、一戸建てと複合ともに減少。
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(作成:My Big Apple NY)

発表元のNARのローレンス・ユン米エコノミストは、今回の結果を受け「不動産業者は前年比より強い客足を確認したものの、手頃な価格帯のレンジの供給が限られた」と振り返る。ただ住宅価格が着実に値上がりするなかでも「現金での支払いが可能な投資家が平均の住宅価格を押し上げ、新規購入者には困難な状況が続く」と結んだ。

――米2月中古住宅販売件数を因数分解すると、今回は新規購入者が低下した一方で現金購入者が2015年11月以来の高水準で、かつ投資家の間での現金払いも71%と2015年4月以来の水準へ上振れしていました。住宅価格は春を前に前月比で上昇に転じており、賃金が米2月雇用統計で現れたような3%近い伸び率を遂げなければ新規購入者の買い意欲を削ぎかねず。中古住宅販売件数は引き渡しの段階でカウントされる遅行指標であり、3月の中古住宅販売件数は金利上昇の影響が残ってもおかしくありません。

▽米1月住宅価格指数は上昇トレンドにブレーキ、前年比でも6%割れ

米住宅金融公社(FHFA)が発表した米1月宅価格指数は前月比±0%と、市場予想並びに前月の0.4%を下回った。上昇トレンドを23ヵ月で止めた格好だ。前年比は5.7%上昇、年初来の高い伸びとなる6%を割り込んでいる。国勢調査ベースの9地域別では、前月の7地域から6地域へ減少した。

FHFAが公表する住宅価格指数は、米連邦住宅貸付機関監督局(OFHEO)傘下のFHFAの場合はプライム層向けの住宅価格がメインで、融資額が政府保証機関(GSE)の買取基準額を超えるジャンボ・ローンや、低所得者層向けのサブプライムを含んでいない。従ってS&Pケース/シラー住宅価格指数とは対象が異なり、数字自体は現状より強めの数字が出ると言われている。こうした背景からFHFAは2011年6月分から、フレディマックやファニーメイなどGSE以外のローンを含んだ住宅価格指数を拡大版として、公表を開始した。

▽MBA住宅ローン申請件数指数、金利上昇の余波で4週ぶりに低下

全米抵当貸付銀行協会(MBA)住宅ローン申請件数指数は、3月17日週に前週比2.7%低下し406.8となった。4週ぶりに低下し、過去5週間で2回目のプラスを示す。借換が3.3%上昇の1366.1、新規も2.1%低下の235.3とそろって4週ぶりに低下に転じた。住宅ローン申請件数指数は前年比では11.6%低下、マイナス基調を維持している。

30年固定金利型の住宅ローン金利(平均)は前週の4.46%で変わらず。前年同期の3.93%を上回ったままだ。15年固定金利型(平均)は3.68%と、前週の3.66%から上昇。FHAのローン金利は4.33%と、こちらも4.29%を上回った。

MBA住宅ローン申請件数指数、前年比ではマイナスが続く状況。

mba

(作成:My Big Apple NY)

申請全体に占める借換の割合(件数ベース)は45.1%と、前週の45.6%から低下した。2009年6月以来の低水準である2015年7月3日週の48.0%から切り返した水準を維持。ただし2013年5月以来の高水準となった2015年1月16日週の73.9%からは、大きく遠ざかったままだ。

――MBA住宅ローン申請件数指数は金利上昇の局面でも比較的堅調で、景気の底堅さをみせつけます。とはいえ住宅購入には高い信用が必要で融資の承認には高い障害が立ちはだかる上、住宅の値上がりペースが加速する事情もあり、庶民にはなかなか手が届きにくい状況。健全な労働市場が住宅需要を下支えできるのか、引き続き注目です。

(カバー写真Violette79/Flickr)

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