Jobs Growth Slower Due To Retail Sector Decline In December.
米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比14.8万人増と、市場予想の19万人増を下回った。ハリケーン“ハービー”と“イルマ”を受けた急変動を経て、前月の25.2万人増(22.8万人増から上方修正)にも届かず、ホリデー商戦中の臨時雇用も一服し3ヵ月ぶりの低水準を示す。過去2ヵ月分は11月分が下方修正(24.4万人増→21.1万人増)されたため、0.9万人の下方修正となった。10~12月期平均は20.4万人増となり、2016年の平均18.7万人増を超えた。ただ年初来では、17.1万人増にとどまる。2017年のNFPは前年比8.3%減の205.5万人だった。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比14.6万人増と、市場予想の18.5万人増を下回った。前月の23.9万人増(22.1万人増から上方修正)に及ばず、3ヵ月ぶりの低水準となる。民間サービス業も9.1万人増と、前月の17.6万人増(15.9万人増から下方修正)を下回り、3ヵ月ぶりの低水準に終わった。
セクター別動向では、上位常連がトップ3を占めた。娯楽・宿泊は前月の圏外の4位から首位を奪取している。2位は教育・健康、3位は専門サービスが入った。小売は前月に3位だったが、今回は最下位で減少に転じた。小売の減少は、2017年で9回目となる。詳細は、以下の通り。
(サービスの主な内訳)
・娯楽・宿泊 2.9万人増>前月は1.7万人増、6ヵ月平均は1.6万人増
(そのうち食品サービスは2.5万人増>前月は1.9万人増)
・教育・健康 2.8万人増<前月は5.0万人増、6ヵ月平均は4.0万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は2.9万人増<前月は3.9万人増、6ヵ月平均は3.2万人増)
・専門サービス 1,9万人増<前月は4.9万人増、6ヵ月平均は4.3万人増
(そのうち、派遣は0.7万人増<前月は1.7万人増、6ヵ月平均は1.0万人増)
・その他サービス 1.2万人増>前月は0.9万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・卸売 1.0万人増>前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.6万人増
・情報 0.7万人増>前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.4万人減
・金融 0.6万人増<前月は0.7万人増、6ヵ月平均は1.2万人増
・政府 0.2万人増<前月は1.3万人増、6ヵ月平均は0.4万人増
・輸送・倉庫 0.2万人増<前月は1.1万人増、6ヵ月平均は1.0万人増
・公益 0.1万減<前月は±0人、6ヵ月平均は±0人
・小売 2.0万人減<前月は2.6万人増、6ヵ月平均は0.3万人減
財生産業は前月比5.5万人増と、前月の6.3万人増(6.2万人増から上方修正)を下回った。もっとも、5ヵ月連続で増加。ハリケーンの復興需要を一因に建設が5ヵ月連続で増加したほか、製造業も5ヵ月連続で増加した。原油価格が約3年ぶりに60ドル台に迫るなか、鉱業は横ばいにとどまり増加トレンドを4ヵ月で止めた。
(財生産業の内訳)
・建設 3.0万人増>前月は2.7万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・製造業 2.5万人増<前月は3.1万人増、6ヵ月平均は1.2万人増
・鉱業・伐採 ±0万人(石油・ガス採掘は100人の減少)>前月は0.5万人増、6ヵ月平均は0.5万人増
NFP、ホリデー商戦効果が早くも剥落し3ヵ月ぶり低水準。
平均時給は前月比0.3%上昇の26.63ドル(約3,000円)と、市場予想と一致した。前月の0.1%(0.2%から下方修正)から改善している。前年比では2.5%の上昇となり、市場予想通りだった。前月の2.4%(2.5%から下方修正)と並びつつ、2009年4月以来の力強さを遂げた9月の2.9%以下が続く。
週当たりの平均労働時間は34.5時間と、市場予想並びに前月と一致した。8~10月の34.4時間を経て、6~7月の水準へ戻している。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.5時間と、10~11月の40.4時間を超え7月の水準に並んだ。
失業率は4.1%と、市場予想及び前月と一致した。10月に続き金融危機後以来で最低だっただけでなく、2000年12月以来の4%割れを視野に入れた。12月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2017年見通しに並ぶ。マーケットが注目する労働参加率は10~11月に続き62.7%と、2014年3月の高水準に並んだ9月の63.1%以下に終わった。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。
失業者数は前月比4万人減少した。雇用者数は10.4万人増と、2ヵ月連続で増加している。失業者が減少し就業者数が増加したものの、就業率は11月に続き60.1%となり、2009年1月以来の高水準を遂げた9月の60.4%が遠のいた。
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で微減の1億2,672万人と、11月から減少に転じた。パートタイムは0.4%増の2,726万人と、3ヵ月ぶりに増加。増減数では前月に続きフルタイムが3.5万人減、パートタイムは11.9万人増だった。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が増加を続けたため、へ平均労働時間が変わらなかったものの、0.4%上昇し2ヵ月連続でプラスだった。平均時給が前月の伸びを上回ったため、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比で0.8%上昇、4ヵ月連続でプラスだった。
かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-×
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全失業率は8.1%と、11月の8.0%は勿論、2006年12月の低水準に並んだ10月の7.9%から上昇した。不完全失業者は491.5万人と、前月の485.1万人から増加している。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率も年初来で最低だった10~11月の5.0%を経て、5.1%へ上昇した。
2)長期失業者 採点-○
失業期間の中央値は9.1週と前月の9.6週から短縮し、2008年6月以来の低水準となった。平均失業期間は23.6週と前月の25.2週から短縮、2009年5月以来で最短となる。27週以上にわたる失業者の割合は22.9%と、2009年1月以来の低水準を示した。
3)賃金 採点-△
今回は前月比0.3%の上昇、前月の0.1%から小幅改善した。前年比は2.5%上昇と、前月の2.4%を上回ったが、2009年4月以来で最高の伸びだった2.9%以下が続く。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.3%上昇の22.30ドルと全従業員と変わらず。前年比は2.3%の上昇となり、全従業員の2.5%以下にとどまった。非管理職・生産労働者の賃金は管理職を合わせた全体に追いつかない状況だったが、今回は前年比で伸びが一致しなかった格好だ。なお、民間における生産・非管理職の割合は82.4%を占める。
平均時給、前年比では引き続き生産・非管理職の労働者が管理職を含めた全体に及ばず。
4)労働参加率 採点-△
労働参加率は62.7%と、10~11月に続き2014年3月に遂げた高水準となる9月の63.1%を下回った。金融危機以前の水準である66%台は未だ遠い。軍人を除く労働人口は0.1%増の1億6,060万人と、若干の増加にとどまる。非労働人口も0.1%増の9,551万人と3ヵ月連続で増加に転じた。
BNPパリバは、今回の結果を受け「Fedが注目する平均時給の伸びは限定的にとどまった」と振り返る。その上で、Fedの利上げはゆるやかなペースにとどまると予想し年内の利上げ回数を「3回」で維持した。
――米12月雇用統計・NFPはサービス部門が軟調に傾き、財部門の支えを失えばさらに鈍化する可能性を残します。特に小売は2017年に9回減少し、米国人がオンライン・ショッピングへ傾倒しつつある煽りを受ける状況。小売の雇用がオンラインにシフトするなか、輸送・倉庫が増加中とはいえ、小売の減少を完全に相殺しているとも言い難い。小売のリストラが一巡しない限り、サービス業の雇用を押し下げかねません。
今回最も力強い雇用の伸びを遂げた娯楽・宿泊のうち、9割近くを占めたのは食品サービスつまり外食産業でした。通年でも24.9万人増(平均2.1万人増)と、2016年の27.6万人増(平均2.3万人増)に近い雇用増を達成。2017年の月平均就労者数17.1万人増の12%を占めたことになります。さて、食品サービスですが小売売上高でみると足元で伸び悩み中。
このセクターが今後も雇用を支えていけるのか、注目です。
(カバー写真:Massachusetts Office of Travel & Tourism/Flickr)
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