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米12月貿易赤字は08年10月以来の高水準、年ベースでも金融危機以来で最大

by • February 7, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2904

U.S. Trade Deficit Rises To 10-Year High In 2017.

米12月貿易収支は531.18億ドルの赤字となり、市場予想の521億ドルを上回った。前月の504.35億ドル(504.97億ドルから上方修正)から5.3%増、4ヵ月連続で増加。2008年10月以来の水準へ膨らんだ。原油関連を除く貿易赤字は493.86億ドルと、前月の458.89億ドル(修正値)を超えた。景気拡大に加えハリケーン復興需要、ホリデー商戦も重なり輸入が増加したほか、外需の伸びも好調で輸出も拡大している。

内訳をみると、輸出が1.8%増の2,033.51億ドルと2ヵ月連続で増加すると共に過去最高を更新した。輸入も2.5%増の2,564.69億ドルと4ヵ月連続で増加、過去最大となり赤字の増加を促した。

輸出が増加したものの輸入の伸びが上回り、貿易赤字は2008年以来で最大。

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(作成:My Big Apple NY)

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、684.47億ドルだった。前月の664.62億ドル(修正値)を超え、2006年8月の高水準へ膨らんだ。

なお国際収支ベースで、2017年の貿易赤字はモノ・サービスを合わせて国際収支ベースで前年比12.1%増の5,660.31億ドルと、2008 年以来で最大となった。内訳をみると、輸出が5.5%増の2兆3,293.11億ドル、輸入が6.7%増の2兆8,953.42億ドル。このうちサービスの貿易収支は1.5%減の2,439.93億ドルと黒字が縮小し、貿易赤字の拡大につながった。一方で、モノの貿易赤字は前年比8.1%増の8,100.23億ドル。内訳では輸出が6.6%増の1兆5,514.34億ドル、輸入は6.9%増の2兆3,615.48億ドルとなった。2016年の貿易赤字はモノ・サービスを合わせて国際収支ベースで前年比0.9%増の5,047.93億ドル(輸出が2.5%減の2兆2,080.72億ドル、輸入が1.9%減の2兆7,643.52億ドル)だった。

12月の輸出の内訳をみると、ノは前月比1.8%増と過去5ヵ月間で3回目の増加となった。項目別では自動車と消費財以外が増加し、特に食品・飲料、産業財の伸びが顕著となっている。

(増加項目)
・食品・飲料 4.3%増>前月は1.4%増、過去5ヵ月間で3回目の増加
・産業財 3.7%増、過去5ヵ月間で4回目の増加>前月は0.6%増
・資本財 2.5%増、過去5ヵ月間で3回目の増加<前月は5.7%増
・サービス 0.2%増、過去5ヵ月間で5回目の増加=前月は0.2%増

(減少項目)
・自動車 0.6%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は7.7%増
・消費財 1.2%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は4.0%増

輸入の内訳をみると、モノは2.5%増と4ヵ月連続で増加した。原油価格が約3年ぶりの60ドル台を回復する過程ながら、量ベースでのエネルギー関連輸入が10.1%減と過去5ヵ月で2回目の減少を示す。金額ベースでも9.1%増と、4ヵ月ぶりに減少した。エネルギー製品を除いたモノの輸入は3.7%増と、前月の2.4%増を上回り過去5ヵ月間で4回目の増加を示す。項目別では全て増加し、特に消費財の伸びが著しい。詳細は、以下の通り。

(増加項目)
・消費財 6.1%増、過去5ヵ月間で5回目の増加>前月は4.8%増
・自動車 3.5%増、過去4回目の増加>前月は1.2%増
・食品・飲料 2.1%増、過去5ヵ月間で3回目の増加<前月は1.0%減
・資本財 1.5%増、過去5ヵ月間で3回目の増加<前月は2.9%増
・産業財 1.3%増、過去5ヵ月間で4回目の増加<前月は5.0%増

(減少項目)
ゼロ

国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比13.1%減の308.08ドルと3ヵ月ぶりに減少、2015年9月以来の高水準だった前月を下回った。日本への赤字は4.0%減の55.27億ドルと2ヵ月連続で減少欧州全体への赤字額は3.8%増の172.80億ドルと、3ヵ月連続で増加した。英国との貿易収支は1.59億ドルの黒字で、4ヵ月連続で黒字となる。

主な産油国への貿易収支は、石油関連の輸入量と金額が減少したように、カナダ以外で赤字が減少、あるいは黒字に転換した。メキシコに対する赤字額は、9.5%減の53.73億ドルと2ヵ月連続で減少石油輸出国機構(OPEC)への貿易収支は2.11億ドルの黒字と、3ヵ月ぶりに黒字へ転換している。カナダへの貿易赤字は114.7%増の22.03億ドルと前月から大幅増加し、18ヵ月連続で赤字を計上している。カナダの対米輸出のうち15%近く占める自動車に加え、木材価格の上昇がカナダへの貿易赤字を拡大させた可能性がある。特に木材は、ITCが制裁関税を4-0で支持する採決を行っていた。

以下は、各国ごとの2017年の貿易収支動向は以下の通り。

 

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(作成:My Big Apple NY)

――アトランタ地区連銀は、6日までの経済指標を受けて米1~3月期実質GDP成長率予測値を従来の5.4%増から4.0%増へ下方修正しました。それでも、トランプ政権の成長目標である3%を遥かに超える水準を保ちます。

対米貿易赤字ランキングで、カナダの1位は変わらなかったものの、メキシコが3位から2位に浮上し北米自由貿易協定(NAFTA)の加盟国がツートップを飾りました。NAFTA再交渉で貿易赤字是正を目指す米国が再び強硬に出るのか、一般教書演説では槍玉に上げていなかっただけに、注目です。日本は2位から3位、ドイツも3位から4位とそれぞれランクダウンし、ホッと一息といったところでしょうか。少なくとも、為替報告書の操作国認定基準を調整して不均衡を迫るリスクは多少後退したと言えそうです。逆に中国への圧力は強まること必至で、一般教書演説で中国が地政学的リスクの面ながら指摘されたのも前哨戦でしょう。

<ご参考:一般教書演説、筆者作成のダイジェスト版>。

継続予算協議にらみ、トランプ初の一般教書演説は融和寄り
~移民改革が“米国第一”を実現へ、通商批判は封印~

トランプ大統領が1月31日に行った初の一般教書演説で、税制改革法案の成立や医療保険制度改革(オバマケア)の個人保険加入義務の撤廃を誇示しつつ、事前報道通り1.5兆ドルのインフラ整備予算を要求した。しかし、一般教書演説の約2割と最も分量を割いた項目は、移民改革である(こちらをご参照)。

移民改革の4つの柱として、①幼少期に親に連れられ米国へ不法入国した者(ドリーマー)、180万人に米国籍を付与する枠組みを採用、②メキシコ国境間の壁建設など警備強化、③永住権の抽選制度廃止、能力重視の選定基準へ移行、④永住権保持者の親族受け入れ撤廃――を掲げた。

①で不法移民の本国送還に猶予を与えるプログラム(DACA)の延長を求める民主党の意向を汲み取りつつ、②で選挙公約であるメキシコ国境間の壁建設を貫いた格好だ。継続予算案の期限切れが2月8日に迫るなか、上院での共和党議席数が51にとどまるため予算可決に必要な60票を確保すべく、民主党に譲歩したと言えよう。トランプ氏は、演説で「米国民は皆ドリーマーだ」と融和的に語り、4つの柱を含んだ法制度を「米国第一を実現する法案」とも強調、移民制度改革を通じた予算成立への意気込みを感じさせる。

トランプ氏は「悪しき貿易を修正する」と発言しつつ、中間選挙を控え通商政策で強硬姿勢を封印した。前回の議会演説では「北米自由貿易協定(NAFTA)を承認してから米国の製造業職の4分の1以上が奪われ、中国が世界貿易機関に加盟した2001年から6万件の工場を失った」と述べたがこれを削除、NAFTAにも一切言及していない

就任後の実績として「製造業職の20万人を含む240万人の雇用を創出した」と誇示した都合上、通商の枠組みから生じた経済的打撃を喧伝しづらかったのだろう。日本の対米貿易黒字が高止まりするなか、トヨタやマツダなど米国で雇用を創出する本邦企業を紹介する一幕もあった。1月26日の世界経済フォーラム(ダボス会議)で「米国第一は米国単独ではない」と発言したように、強硬路線から現実路線へシフトするか注目される。

一方で、外交面では強硬姿勢を打ち出した。中国については、国防予算の強制削減の廃止を訴える文脈でロシアと共に「我々の利益、経済、価値観に立ち向かう敵(rival)」と明言した。中露より時間を割いて言及したのが、北朝鮮である。脱北者を紹介しながら、北朝鮮の「無謀な核ミサイル開発は、まもなく米国本土に脅威をもたらす」と警戒を促した。同時に軍備と核兵器備蓄の増強、国防支出の強制削減撤廃を要求しており、トランプ氏のいう「安全で力強い」米国には軍事力が不可欠なようだ。

(カバー写真:Louis Vest/Flickr)

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