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米2月貿易収支、輸出が過去最大も赤字は約10年ぶりの高水準

by • April 9, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off1934

U.S. Trade Deficit Widens To 10-Year High Despite Record Export.

2月貿易収支は575.91億ドルの赤字となり、市場予想の568億ドルを上回った。前月の566.65億ドル(566.95億ドルから修正)から1.6%増加し、6ヵ月連続で増加。2008年10月以来の高水準へ膨らんだ。原油関連を除く貿易赤字も502.41億ドルと、前月の494.94億ドル(修正値)を超えた。今回の赤字拡大の一因として、コムキャスト傘下のNBCによる平昌冬季五輪放映権支払いが挙げられる。また一部では難航する北米自由貿易協定(NAFTA)交渉、1月の太陽光パネル・洗濯機へのセーフガード発動、商務省による鉄鋼・アルミ関税賦課発動勧告を受けた貿易摩擦懸念に伴う輸入増加との見方も聞かれたが、資本財など前月に減少した反動で増加した余地を残す。

内訳をみると、輸出が1.7%増の2,044.45億ドルと過去4ヵ月間で3回目の増加となり、過去最高を更新した。輸入は1.7%増の2,620.37億ドルと再び増加トレンドへ回復、過去最大記録を塗り替えた。

輸出と輸入が同率で増加したものの輸入額が上回るため、貿易赤字は2008年10年以降で最大。

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(作成:My Big Apple NY)

国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は691.05億ドルと、2006年8月以来の高水準へ膨らんだ前月の699.58億ドル(修正値)を下回った

なお国際収支ベースで、2017年の貿易赤字はモノ・サービスを合わせ前年比12.1%増の5,660.31億ドルと、2008 年以来で最大となった。内訳をみると、輸出が5.5%増の2兆3,293.11億ドル、輸入が6.7%増の2兆8,953.42億ドル。このうちサービスの貿易収支は1.5%減の2,439.93億ドルと黒字が縮小し、貿易赤字の拡大につながった。一方で、モノの貿易赤字は前年比8.1%増の8,100.23億ドル。内訳では輸出が6.6%増の1兆5,514.34億ドル、輸入は6.9%増の2兆3,615.48億ドルとなった。

2月の輸出の内訳をみると、モノは前月比2.3%増と過去5ヵ月間で3回目の増加となった。項目別では自動車、産業財、資本財などそろって増加しつつ、消費財は減少した。

(増加項目)
・自動車 6.7%増、過去5ヵ月間で2回目の増加>前月は0.6%減
・産業財 4.9%増、過去5ヵ月間で4回目の増加>前月は3.2%減
・資本財 1.5%増、過去5ヵ月間で3回目の増加<前月は5.4%減
・サービス 0.7%増、7ヵ月連続で増加>前月は0.6%増
・食品・飲料 0.1%増>前月は0.7%減、過去5ヵ月間で3回目の増加

(減少項目)
・消費財 4.7%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は7.0%増

輸入の内訳をみると、モノは1.6%増と前月の横ばいから増加トレンドを回復した。原油価格が約3年ぶりの60ドル台を回復したものの、量ベースでのエネルギー関連輸入が17.1%減と過去5ヵ月で2回目の減少を示した。ただ前年比で12.9%減と、4ヵ月連続でマイナスをたどる。金額ベースでは前月比で18.0%下落、値下がりと輸入量減少で大幅減となった。エネルギー製品を除いたモノの輸入は1.7%増と、前月の1.8%増をほぼ打ち消す動きとなった。項目別では資本財、食品・飲料、産業財、消費財、消費財とそろって増加した。詳細は、以下の通り。

(増加項目)
・食品・飲料 6.5%増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は0.1%減
・資本財 3.3%増、過去5ヵ月間で3回目の増加<前月は2.3%減
・自動車 0.5%増、5ヵ月連続で増加>前月は0.1%増
・産業財 1.7%増、6ヵ月連続で増加<前月は4.4%増
・消費財 0.9%増、過去5ヵ月間で4回目の増加>前月は1.6%減

(減少項目)
・なし

国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比18.6%減の292.62億ドルと、2015年9月以来の高水準だった前月から減少に転じた。日本への赤字は2.6%減の55.03億ドルと前月から減少に反転欧州全体への赤字額は15.1%減の135.81億ドルと、2ヵ月連続で減少した。英国との貿易収支は184.0%増の6.56億ドルの黒字で、6ヵ月連続で黒字となる。

主な産油国への貿易収支は、石油関連の輸入量と金額が減少したように、メキシコ以外で赤字が縮小した。カナダへの貿易赤字は89.6%減の3.86億ドルと3ヵ月ぶりに急減、ただし20ヵ月連続で赤字となる。石油輸出国機構(OPEC)への貿易収支は前月の52.3%減の13.67億ドルの赤字と、5ヵ月連続で赤字を計上。メキシコに対する赤字額は、46.6%増の60.63億ドルと4ヵ月ぶりに拡大した。メキシコのみ赤字が拡大した背景は、輸入量の違いにある。カナダとOPECはそれぞれ季節調整前の通関ベースで輸入量が前月比で20%減、20.8%減だったが、メキシコは32.4%増だった。

以下は、各国ごとの単月の貿易収支動向は以下の通り。

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(作成:My Big Apple NY)

――対米貿易赤字ランキングで1位の中国が前年比18.6%減だったことを筆頭に、対日、対欧州の赤字も縮小していましたが、年初来での貿易赤字は、カナダ以外で拡大中です。米国の好調な景気動向もあって、国別の貿易額が全て増加している点も一因でしょう。商務省が鉄鋼・アルミ関税賦課発動を勧告したのは2月半ばだったため、各企業が発動を警戒して輸入増に動いたかはまだ不透明ですが、年初来版の貿易赤字ランキングでは興味深い点が浮かび上がります。

原油輸入の減少を受けカナダが1月の5位から低下した一方で、アイルランドやベトナムがそれぞれ1ランク上げ5位、6位に入ったほか、韓国が圏外に転落を受けマレーシアがトップ10に浮上していました。そこでマレーシアの米国向け輸入産品トップ10をみると、中国と韓国で被る品目が少なくないのですよ。こちらをご覧下さい(それぞれ2017年ベースで、オレンジ入りの棒グラフが中国の米国向け輸入品と被る品目)。

中国
china

韓国
korea

マレーシア

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(作成:My Big Apple NY)

もちろん、企業がトランプ政権の保護主義寄りな政策を警戒したとは言い切れません。ただ1月23日には、太陽光パネル・洗濯機に対するセーフガードを発動、米韓自由貿易協定(KORUS)の再交渉中だった事情もあります。その後、2月には鉄鋼・アルミ関税賦課を米商務省が勧告しました。取引先の受注を急に変更するなどビジネスでは想定し難いものの、米中報復関税合戦が貿易統計に変化をもたらすのか、今後の数字が待たれます。

(カバー写真:Tristan Taussac/Flickr)

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