Retail Sales Seems Solid, But Discretionary Spending Doesn’t.
米4月小売売上高、米5月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値、米5月NAHB住宅市場指数をおさらいしていきます。
米4月小売売上高は前月比0.3%増と、市場予想と一致した。前月の0.8%増(0.6%増から上方修正)を含め、2ヵ月連続で増加。自動車を除いた場合は0.3%増と、市場予想の0.5%増と前月の0.4%増(0.2%増から上方修正)に届かなかったが、4ヵ月連続で増加している。国内総生産(GDP)の個人消費のうち約4分の1を占めるコントロール小売売上高(自動車、燃料、建築材、外食などを除く)は前月比0.4%増と、2ヵ月連続で増加した。
小売売上高のコントロール、前年比は3ヵ月ぶり低水準も2016~17年の3.8%超えを維持。
内訳をみると、主要13カテゴリー中で10項目がプラスとなり前月の9項目を上回った。春の到来を受け、服飾が全体を押し上げたほか、電気製品が力強い。その他、家具や建築・庭園など、住宅関連も好調。ガソリン価格の値上がりを受け、ガソリン・スタンドも支えた。また、非店舗も伸びを縮小させながら引き続きプラスをたどる。一方で営業日数が前年比で2日短縮した新車販売台数は振るわなかったが、自動車・部品自体は僅かに増加。逆にヘルスケアやスポーツ用品、外食は減少を示す。項目別の詳細は、以下の通り。
(プラス項目)
・服飾→1.4%増>前月は0.2%減、6ヵ月平均は0.4%増
・電気製品→1.4%増>前月0.5%増、6ヵ月平均は0.2%増
・雑貨→0.9%増>前月は1.1%減、6ヵ月平均は0.5%増
・家具→0.8%増<前月は1.4%増、6ヵ月平均は0.3%増
・ガソリン・スタンド→0.8%増>前月は0.3%増、6ヵ月平均は1.2%増
・非店舗(オンライン含む)→0.6%増<前月は0.9%増、6ヵ月平均は1.0%増
・建築材/園芸→0.4%増>前月は1.0%減、6ヵ月平均は±0%
・食品/飲料→0.4%増>前月は0.2%増、6ヵ月平均は0.2%増
・一般小売→0.3%増>前月は0.4%増、6ヵ月平均は0.1%増
(*百貨店は0.3%増<前月は0.4%増、6ヵ月平均は0.2%減)
・自動車/部品→0.1%増<前月は2.1%増、6ヵ月平均は0.2%減
(マイナス項目)
・スポーツ用品/書籍/趣味→0.1%減=前月は0.1%減、6ヵ月平均は0.2%減
・電気製品→0.1%減、4ヵ月ぶりに減少<前月は0.7%増、6ヵ月平均は0.2%増
・外食→0.3%減、2017年2月以来の減少<前月は1.2%増、6ヵ月平均は0.4%増
・ヘルスケア→0.4%減<前月は1.1%増、6ヵ月平均は0.3%減
――3月は北東部での積雪や平年を下回る気温により服飾をはじめ建築・庭園、一般小売(百貨店含む)まで弱かったものの、4月は一連の分野が回復を果たし全体を支えました。以下は前月比、前年比での分野別寄与度を示す。
一方で、非店舗の伸びが縮小しただけでなく、スポーツ用品/書籍/趣味が2ヵ月連続で減少、同分野は2017年11月以降の過去7ヵ月間で、6回マイナスに沈んでいます。また身だしなみを含むヘルスケアも過去7ヵ月間で6回減少。何より、外食が2017年2月以来の減少に落ち込んだ点は驚きです。個人的には、裁量消費に相当する一連の分野での落ち込みが気掛かり。税制改革法案での所得税減税といった好材料を、ガソリン価格の値上がりや金利上昇(クレジットカード金利の上昇など)といった悪材料が相殺しつつあるのか、注視していきたいところです。あくまで筆者の意見ですが、米10年債利回りを3%から一段と押し上げるような力強い内容とは思えないような・・。
▽米4月ミシガン大信頼感・速報値は前月と変わらず、インフレ見通し上方修正
米4月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は98.8と、市場予想の98.3を上回った。前月と変わらず。ただし、約14年ぶりのレベルに上振れした3月の101.4以下が続く。内訳をみると、現況指数が113.3と前月の114.9を下回り、4ヵ月ぶりの低水準。逆に見通し指数は89.5と前月の88.4を超え、2004年7月以降で2番目の高水準となった2月の90.0に接近した。
原油先物が2014年11月以来の71ドルに乗せる過程で、1年先インフレ見通しは前月の2.7%から2.8%へ上昇、2016年4月以来の高水準だった3月の水準に並んだ。5~10年先インフレ見通しは、5ヵ月連続で2.5%となる。
ミシガン大学消費者信頼感は高止まりを維持、インフレ見通しは1年先のみ小幅上昇。
ミシガン大学の主席エコノミスト、リチャード・カーティン氏は、結果を受け「短期的インフレ見通しの上昇、所得見通しの低下、失業率の低位安定に対する見方が強まった」と振り返る。その上で「消費者の8割は年内の利上げを見込む」と指摘。ただし失業率が引き続き低水準で推移すると見込まれるように成長を阻害すると想定していないようで、カーティン氏は2018年の個人消費見通しを「2.7%増」で据え置いた。なお、年初は2.9%増だった。
▽米5月NAHB住宅市場指数、中西部が支え前月分の低下を打ち消し
米5月NAHB住宅市場指数は70となり、市場予想の69並びに6ヵ月ぶりの低水準だった前月の68(69から下方修正)を超えた。年初来で初めて前月を上回ったが、1999年7月以来の高水準を達成した1月の74から低下をたどる。税制改革法案が成立し所得税減税が実現するほか、労働市場も力強く拡大するなか、住宅建設業者のセンチメントは住宅価格の上昇、原材料や人材不足といった問題を乗り越えようとしているようだ。地域別では、中西部が4ヵ月ぶりの高水準と全体を押し上げた程度で、北東部と西部は前月と変わらず。これまでハリケーン買い替え需要に支えられてきた南部は、年初来の上昇を打ち消した。
内訳をみると、一戸建て現況指数は76と、7ヵ月ぶりの低水準だった前月の74から改善した。一戸建て見通し指数は前月と変わらず77と、5ヵ月ぶりの低いレベルを維持。客足の動向を表す見込み客指数も3ヵ月連続で51と、2017年11月以来の低水準となった。
NAHB住宅市場指数、5ヵ月ぶりの低水準から改善。
(作成:My Big Apple NYが作成)
発表元である全米ホームビルダー協会(NAHB)のロバート・ディエス主席エコノミストは、結果に対し「一戸建て住宅で高まる需要を表した」と評価した。その上で、今後は「低水準にある住宅在庫、雇用拡大、人口増加などを追い風となる」とし、新築住宅市場のゆるやかな拡大を予想。しかし「過去高値をつけている木材価格が建築業者の利益を押し下げ、価格競争力を低下させかねない」との懸念も付け加えた。
(カバー写真:Eva Rinaldi/Flickr)
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