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米5月住宅着工件数は大幅増も、関税発動で建設コスト急伸

by • June 20, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2812

Midwest Lifted Housing Start To The Highest Since 2007, While Input Prices Surge.

米5月住宅着工件数は年率135.0万件と、市場予想の131.1万件を超えた。前月の128.6万件(128.7万件から下方修正)を5.0%上回り、2007年7月以来の高水準を遂げている。

内訳をみると、一戸建てが前月比3.9%増の93.6万件と過去6ヵ月間で3回目の増加を示した。複合住宅は7.5%増の41.4万件、過去6ヵ月間で4回目の増加となる。

前年比では、住宅着工件数が20.3%増と前月の10.4%増(修正値)を含め5ヵ月連続で増加した。一戸建てが18.3%増と、2016年9月から続く増加トレンドを維持。複合住宅は25.0%増と3ヵ月連続で増加した。

4大地域別では、4月に続き1地域のみ増加した。今回は、中西部のみ増加し前月比62.2%増(前月から増加に反転)の26.6万件となる。逆に北東部は15.0%減(前月の横ばいから反転)の10.2万件と大幅に減少したほか、南部は0.9%減(3ヵ月ぶりに減少)の66.3万件、西部も4.1%減(2ヵ月連続で減少)の32.9万件だった。

建設許可件数は130.1万件となり、市場予想の135.0万件に届かなかった。前月の136.4万件(135.2万件から上方修正)を4.6%下回る。内訳をみると、一戸建てが2.2%減の84.4万件と前月から減少に反転。複合住宅も8.8%減の45.7万件と、2ヵ月連続で減少した。

建設中件数は前月比0.2%増の112.5万件となり、2007年6月以来の高水準となる。一戸建てが0.2%増の51.5万件と増加トレンドを維持、複合住宅は0.2%増の61.2万件と前月から増加に転じた。

住宅着工と建設許可件数、2007年以来の高水準。

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(作成:My Big Apple NY)

――住宅着工件数の一戸建てのうち75%が住宅市場に流入すると試算されるため、70万件が販売向けとなる見通しです。足元の新築販売件数を上回るため在庫逼迫の解消が期待される半面、米6月NAHB住宅市場指数は過去最高の木材価格を嫌気し、楽観度が小幅ながら後退していました。

住宅市場は、カナダとの貿易摩擦が痛手となりかねません。トランプ政権は2017年4月、カナダから輸入する針葉樹の材木に平均20%の相殺関税の発動を表明しました。同年12月に、国際貿易委員会(ITC)は米国の木材関連業に損害を与えたとし、同措置を承認したものです。

さらに米国は今年3月23日に開始した鉄鋼・カナダ関税の対象を7月1日からカナダを含むNAFTA加盟国と欧州連合(EU)に拡大。中間選挙を控え、カナダ包囲網を狭めるばかりです。おかげで建築業者は木材だけでなく、鉄鋼やアルミのコスト負担に悩まされ始めています。5月ベージュブックでも、建設をはじめ輸送セクターにおける物価上昇圧力を確認していました。トランプ政権の通商政策が思わぬ物価上振れをもたらすリスクが燻ります。

生産者物価指数、項目別でみた建設資材と一次産品の物価動向。

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(作成:My Big Apple NY)

雇用への影響も、見逃せません。コンサルティング会社トレード・パートナーシップによれば、鉄鋼・アルミ関税賦課により建設業の職が2.8万人相当失われると試算しています。米国鉄鋼協会によれば、鉄鋼の43%が建設向けなだけに、木材と合わせれば相当なダブルパンチとなりかねません。

過去を振り返れば、ブッシュ政権は2002年3月に鉄鋼輸入制限に踏み切った後、WTOの協定違反認定や米大統領選を控えた負の経済効果をにらみ、2003年12月に撤廃しました。トランプ政権も貿易相手国からの報復関税への影響を踏まえ、近い将来、矛を収めないとも限りません。

余談ながら、トランプ大統領はカナダによる乳製品輸入品への関税270%を問題視し是正を要請中。しかしながら、カナダの乳製品関税は割当量制なんですよね。例えば牛乳の場合、通常の関税率は7.5%ですが、割当量を超えた段階で241%へ引き上げられます。割当量を上回った場合の関税率は、平均で218.5%。270%の関税は粉ミルクというわけで、色々誤解をされていらっしゃるようです。

(カバー写真:Richard Wasserman/Flickr)

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