Industrial Production Bounces Back, While Capacity Utilization Still Rooms To Rise.
米6月鉱工業生産、米7月NAHB住宅市場指数をおさらいしていきます。
米6月鉱工業生産指数は前月比0.6%上昇し、市場予想の0.5%の上昇を上回った。前月の0.5%の低下(0.1%から下方修正)を相殺し、過去5ヵ月間で4回目のプラスを示す。発表元の米連邦準備制度理事会(FRB)によれば、前月はトラック部品会社での火事が影響し自動車が押し下げたが、今回はその反動で持ち直している。前年比では3.8%の上昇となり、2月から続く3%超えの高い伸びを維持しただけでなく、2014年7月以来の高水準だった。年率では2期連続で6.0%上昇、プラスは3期連続となる。
稼働率は78.0%となり、前月の77.7%(77.9%から下方修正)を上回った。市場予想の78.3%を下回ったとはいえ、2015年3月以来の78%台を回復した4月の78.2%に次ぐ水準となる。今後、邦人税率引き下げや設備投資の全額控除などのインセンティブにより、稼働率がリセッション前の80%台を回復できるか注目だ。
鉱工業生産の前年比は、6月もしっかり。
内訳をみると、製造業(全体の74.6%)は上昇に反転、2014年1月以来で最大の落ち込みを示した前月分の低下をほぼ打ち消した。自動車を除く製造業(66.03%)も、前月分のおマイナス分をほぼ相殺している。油価が2014年11月以来の75ドル乗せへ向かう過程で、鉱業(全体の14.9%)は好調な伸びを維持。一方で、公益(全体の10.5%)は低下に転じた。
・製造業 0.8%の上昇>前月は1.0%の低下と2014年1以来の低水準、6ヵ月平均は0.2%の上昇
>自動車を除く製造業 0.3%の上昇>前月は0.4%の低下、6ヵ月平均は0.2%の上昇
>自動車 7.8%の上昇>前月は8.6%の低下、6ヵ月平均は0.2%の上昇
>機械 0.7%の上昇>前月は1.4%の低下、6ヵ月平均は0.2%の上昇
>コンピューター/電子部品 1.5%の上昇>前月は0.4%の低下、6ヵ月平均は0.7%の上昇
・公益 1.5%の低下<前月は0.7%の低下、6ヵ月平均は±0%
>電力 2.4%の低下<前月は3.3%の上昇、6ヵ月平均は0.2%の上昇
>天然ガス 4.8%の上昇>前月は20.5%の上昇、6ヵ月平均は0.3%の上昇
・鉱業 1.2%の上昇<前月は2.2%の上昇、6ヵ月平均は1.2%の上昇
――鉱工業生産は、製造業を中心に改善しました。耐久財では自動車が前月比7.8%の急反発を遂げた以外でも、木材、組み立て金属、航空関連がそれぞれ前月の弱さを打ち消しています。非耐久財も堅調で、特に繊維や石油・石炭、化学が底堅さをみせています。一連の回復をみせたものの、製造業の稼働率は76.0%(NAICS、製造業のみ)と、2015年8月以来の高水準に達した前月の76.3%を小幅に下回ったままである点は、気掛かり。トランプ政権の追加関税措置が鉱工業の活動を抑制するのか、他経済指標と共に見極めが必要です。
設備稼働率、鉱業が目立って上昇も製造業は上昇余地残す。
その一方で、原油先物が2014年11月末以来の高値を目指す過程で、鉱業の設備稼働率は92.7%と2008年7月以来の高水準を達成。トランプ政権の対中知財関税措置の報復措置として、中国は第2弾措置に原油などエネルギーを含む一方、LNGは除外されているとはいえ、報復措置が発動されれば、中国企業の投資を含め、この分野も影響は免れないでしょう。そういえば、2017年11月のトランプ大統領訪中時に中国国家能源投資集団と覚書をかわしたウエスト・バージニア州では、同社による837億ドル相当のプロジェクトの雲行きも、怪しくなっていますよね。
▽米7月NAHB住宅市場指数は年初来で最低に並ぶ、木材価格の高騰が重石
米7月NAHB住宅市場指数は68となり、市場予想の並びに前月値と一致した。4月と6月に続き、年初来で最低となる。とはいえ、過去の水準からみると高止まりを維持、1999年7月以来の高水準を達成した1月の74まで、あと6ポイントとなる。米経済は4~6月期に4%成長を達成する期待が募るほか、労働市場も勢いを保つものの、木材など建設資材の価格高騰が住宅建設業者のセンチメントを抑えているようだ。地域別では、南部のみ上昇。中西部は横ばいだったが、北東部と西部は低下し後者は少なくとも過去1年間で最低となった。
内訳をみると、一戸建て現況指数は74と前月と変わらず。一戸建て見通し指数も前月の76を1ポイント下回り75となる。客足の動向を表す見込み客指数は2017年11月以来の低水準となった前月の50から、52へ改善した。
NAHB住宅市場指数、4月、6月に並び年初来で最低が続く。
発表元である全米ホームビルダー協会(NAHB)のロバート・ディエス首席エコノミストは、結果に対し「住宅需要の高まりが建築業者の自信を強める一方で、建設資材のコスト上昇が引き続き負担となっている」と振り返った。しかし「初めての住宅を購入する顧客が市場に参入するなか、価格競争力を維持すべくコスト負担を管理する必要がある」と注意を促した。
――こちらでご紹介したように、建設資材コストは上昇の一途をたどります。米国建設請負業者協会(ABC)が発表した米6月建設資材コストは前年比で9.9%上昇し、過去10年間で少なくとも最高となりました。
米6月雇用統計では、建設部門の雇用者の伸びが鈍化していましたが、建設業者の利鞘縮小が一因となっている可能性は否定できません。
(カバー写真:Aaron Hawkins/Flickr)
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