Jobs Growth Slows To 4-Month Low, But Unemployment Rate Decline.
米7月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比15.7万人増となり、市場予想の19.0万人増を下回った。前月の24.8万人増(21.3万人増から上方修正)に届かず、4ヵ月ぶりの低水準。トランプ政権が3月23日から鉄鋼・アルミ関税を発動し、6月1日からは欧州連合(EU)、カナダ、メキシコも対象に含め、500億ドル相当の対中知財関税のうち340億ドルを実施するなか、NFPは鈍化した。5月分が1.6万人の上方修正(24.4万人増→26.8万人増)だったため、過去2ヵ月分は合計5.9万人の上方修正となった。5~7月の3ヵ月平均は22.4万人増で、2017年の平均値17.1万人増を上回ったままだ。
NFPの内訳をみると、民間就労者数が前月比17.0万人増と市場予想の19.0万人増を下回った。前月の23.4万人増(20.2万人増から下方修正)に及ばず、4ヵ月ぶりの低水準となる。民間サービス業は11.8万人増と、前月の18.2万人増(14.9万人増から上方修正)に届いていない。
サービス部門のセクター別動向では、専門サービスが3ヵ月ぶりにトップに立った。2位は娯楽・宿泊で前月の3位から上昇。5~6月に1位だった教育・健康は、3位にランクダウンした。その一方で、5業種で減少を示す。詳細は、以下の通り。
(サービスの主な内訳)
・専門サービス 5.1万人増>前月は4.3万人増、6ヵ月平均は5.1万人増
(そのうち、派遣は2.8万人増>前月は0.8万人減、6ヵ月平均は0.9万人増)
・娯楽・宿泊 4.0万人増>前月は3.4万人増、6ヵ月平均は2.4万人増
(そのうち食品サービスは2.6万人増<過去12ヵ月平均2.0万人増)
・教育・健康 2.2万人増<前月は6.9万人増、6ヵ月平均は3.9万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は3.4万人増<前月は3.7万人増、6ヵ月平均は3.6万人増)
・卸売 1.2万人増>前月は0.8万人増、6ヵ月平均は0.5万人増
・小売 0.7万人増>前月は2.0万人減、6ヵ月平均は1.2万人増
・情報 ±0万人<前月は0.1万人増、6ヵ月平均は0.2万人増
・輸送・倉庫 0.1万人減<前月は1.9万人増、6ヵ月平均は1.2万人増
・公益 0.3万人減<前月は±0万人、6ヵ月平均は±0万人
・金融 0.5万人減<前月は1.0万人増、6ヵ月平均は0.9万人増
・その他サービス 0.5万人減<前月は1.8万人増、6ヵ月平均は0.8万人増
・政府 1.3万人減<前月は1.4万人増、6ヵ月平均は0.3万人増
財生産業は前月比5.2万人増と、前月分(4.7万人増から上方修正)と変わらず。12ヵ月連続で増加した。製造業は12ヵ月連続で増加し、引き続き財部門を牽引している。建設は4ヵ月連続で増加、建設資材コストの上昇が影響するなかで前月を上回ったものの、6ヵ月平均を下回ったままだ。原油価格が2014年11月以来の75ドルを超えたとはいえ、パイプラインのボトルネック問題を抱える事情もあり、鉱業は9ヵ月ぶりに減少、石油・ガス採掘も2ヵ月連続で減少した。
(財生産業の内訳)
・製造業 3.7万人増>前月は3.3万人増、6ヵ月平均は2.9万人増
・建設 1.9万人増>前月は1.3万人増、6ヵ月平均は2.4万人増
・鉱業・伐採 0.4万人増(石油・ガス採掘は200人の減少に反転)<前月は0.6万人増、6ヵ月平均は0.5万人増
NFPは、4ヵ月ぶりの低水準。
平均時給は前月比0.3%上昇の27.05ドル(約2,980円)となり、市場予想と一致した。6月の0.2%を上回る。前年比では市場予想通りで、3ヵ月連続で2.7%上昇した。
週当たりの平均労働時間は34.5時間と市場予想と並んだ。前月の34.6時間から短縮している。逆に財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.6時間と、前月の40.5時間から延びた。なお財部門は、4月に2006年7月以降で最高となる40.7時間を記録していた。
失業率は3.9%と市場予想と一致し、前月の4.0%から低下した。ただ、2000年4月以来の水準となった5月の3.8%には届いていない。6月に公表した米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる2018年見通しも上回る。労働参加率は62.9%と、前月と一致した。なお労働参加率のボトムは2015年9〜10月の62.4%で、1977年9月以来の低水準だった。
失業者数は前月比28.4万人減少した。就労者数の増加幅である38.9万人を下回り、労働参加率が横ばいだったものの、失業率の低下を促した。就業率は60.5%と前月の60.4%を超え、2009年1月の低水準に並んだ。
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比0.4%増の1億2,866万人と、過去5ヵ月間で4回目の増加を示した。パートタイムは0.1%減の2,699万人と、過去5ヵ月間で4回目の減少となった。増減数ではフルタイムが45.3万人増、パートタイムは3.6万人減だった。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は、民間雇用者数が前月を下回っただけでなく平均労働時間も短縮したため、前月比で0.1%低下し6ヵ月ぶりにマイナスに振れた。平均時給が上昇を保った結果、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)も前月比で0.1%上昇、こちらは6ヵ月連続でプラスだった。
かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-○
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は7.6%と、2001年5月以来の低水準に戻した。経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は456.7万人と、前月の474.3万人から減少した。ムニューシン米財務長官候補が指名公聴会後に書簡で重視すると明らかにしたU-5すなわち縁辺労働者を含む失業率は、4.8%と前月の4.9%から低下。なお5月は4.6%と、金融危機前の水準をつけた。
2)長期失業者 採点-×
失業期間の中央値は9.5週と、2008年5月以来の低水準だった前月の8.9週から延びた。平均失業期間も23.2週と、2009年3月以来で最短を記録した前月の21.3週を超えた。しかし27週以上にわたる失業者の割合は22.7%と前月の23.0%を下回ったが、2008年8月以来の20%割れを遂げた5月の19.4%から離れた水準を維持した。
3)賃金 採点-△
今回は前月比0.3%の上昇と、5月に続き年初来で最も強い伸びとなった。前年比は3ヵ月連続で2.7%の上昇にとどまる。生産労働者・非管理職の平均時給は前月比0.1%上昇の22.65ドルと全従業員の伸び以下に。前年比は2.7%上昇し、こちらは全従業員の水準に並んだ。5月に達成した2009年以来の高水準となる2.8%以下にとどまる。なお、民間における生産・非管理職の割合は82.4%を占める。
平均時給、生産・非管理職の労働者が前年比で2009年7月以来の高水準をつけた5月は幻か。
4)労働参加率 採点-△
労働参加率は62.9%と、前月と変わらず。2014年3月以降で2番目の高水準だった2月の63.0%に接近した。とはいえ、金融危機以前の水準である66%台は未だ遠い。軍人を除く労働人口は0.1%増の1億6,225万人と、わずかながら3ヵ月連続で増加。非労働人口も0.1%増の9,552万人と、小幅とはいえ前月から増加に転じた。
――米7月雇用統計・NFPは4ヵ月ぶりの低水準でした。トランプ政権の追加関税発動の影響が現れたのでしょうか?財部門では、追加関税が押し下げたとはっきり言い切れません。資材価格の上昇に直面する建設は6ヵ月平均を下回る伸びにとどまる半面、製造業が前月を上回り好景気が追加関税の影響を打ち消したように見えます。また、経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は2001年以来の低水準。フルタイムも増加しており、労働市場は明らかに逼迫しつつあります。
その割に、25~34歳のミレニアル世代での労働参加率は上昇にブレーキが掛かるなかで、失業率は金融危機以前の水準より一段と低下していました。
働き盛りのミレニアル世代で労働参加率の回復にブレーキが掛かるならば、平均時給が多少は上振れてもいいものの、今回も平均時給は伸び悩みを確認しています。追加関税発動の影響で一部の原料価格が上昇する状況下、企業は7月ベージュブックで報告したように利鞘縮小を懸念し、賃上げをためらっているのか。次の雇用統計で、こうした疑問が多少でも解消されればよいのですが。
(カバー写真:Alex Proimos/Flickr)
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