Household Wealth Hits The Record As Risk Assets Bounce Back.
米連邦準備制度理事会(FRB)が6月6 日に公表した1~3月期家計資産報告(旧・資金循環報告)によると、家計・非営利団体の純資産は前期比4.8%増の108兆6,431億ドルだった。前期で統計開始以来での過去最高記録は12期で止まったが、あらためて記録を更新している。株式相場をはじめとしたリスク資産などの下落が響いた前期は同3.7%減と金融危機以降で最大だったが、今回は増加トレンドを回復した。
家計・非営利機関の資産のうち、金融資産(貯蓄、株式、投資信託、債券、年金、保険などを含む)は前期比5.0%増の88兆8,945億ドルとなり、増加記録を12期で止めた前期(4.7%減)から増加に転じ過去最高も更新した。1〜3月期の金融市場は、パウエルFRB議長が利上げと保有資産圧縮の停止を表明したため、リスク資産が前期分の下落を巻き戻した。S&P500は13.1%高と上昇に反転し、原油価格も前期の50ドル割れから60ドル台へ回復に向かった。米10年債利回りは、逆に2.4%割れから2.8%台へ戻した。
家計資産に占める金融資産、71.3%と過去最高近くへ戻す。
株式資産は市場価値ベースで前期比12.4%増の29兆1,491億ドル(直接、間接保有含む)と、増加に反転した。金融資産における株式の割合は32.8%、総資産での割合も23.4%とそれぞれ2016年4~6月期の低水準から切り返した。
株式資産の比率は、前期から改善。
債券は同1.9%増の10兆3,965億ドルと5期連続で増加した。債券に占める金融資産の割合は8.3%、総資産での割合は11.7%となる。
家計・非営利機関の純資産の可処分所得比は684.3%と、2016年4〜6月期以来の低水準だった前期の659.01%から持ち直した。なお2018年7~9月期は株式資産などを支えに過去最高を更新、692.08%だった。純資産の可処分所得比が上昇するなか、貯蓄率は2019年1~3月期に6.7%と前期の6.5%から上昇し1年ぶりの水準を回復した。家計・非営利機関の預金残高は前期比1.1%増の13兆2,500億ドルと7期連続で増加し、2期連続で過去最高を更新した。
家計部門の不動産資産は、一部で値上げペースが鈍化しつつも前期比1.3%増の29兆5,506億ドルとなった。2011年7~9月期からの増加トレンドをたど、過去2半期の1%割れから伸びを回復した。住宅ローンは0.2%増の10兆3,557億ドルと、小幅ながら2015年4~6月期からの増加トレンドを小幅ながら増加基調をたどった。ホーム・エクイティ(住宅の評価額から住宅ローンの残債を差し引いた価値)は少なくとも19兆ドル付近と弾き出せる。住宅価格の上昇ペースは鈍化したとはいえ伸びを続けるなか、持ち家が占める家計資産の割合は60.4%と2002年1~3月期以来の高水準を遂げた。
株式資産は2017年4~6月期以降、不動産資産と遜色ない水準に。
持ち家が占める家計資産の比率、住宅価格が伸び悩みつつITバブル直後の水準を回復。
国内債務は、前期比年率2.7%増の52兆5,785億ドルだった。4期連続で、州・地方政府以外の全てで債務が増加した。詳細は以下の通り、伸びは全て前期比年率。
>家計の債務は5.6%増の15兆6,992億ドル、2011年10~12月期からの増加基調を維持
>消費者信用は4.3%増の4兆524億ドル、2011年7~9月期からの増加基調を維持
>住宅ローンは2.4%増の10兆3,312億ドル、2014年4~6月期からの増加基調を維持
>非金融セクターの企業は6.6%増の15兆5,792億ドル、2011年1~3月期からの増加基調を維持
>連邦政府は8.6%増の18兆2,478億ドル、2002年以降続く増加基調を維持
>州・地方政府は0.8%減の3兆526億ドル、5期連続で減少
家計・非営利団体の債務は可処分所得に対し98.9%と、2001年7~9月期以来の低水準だった。2007年10~12月期と2018年1~3月期につけたピーク時にあたる133.6%から大幅改善を保つ。
可処分所得に占める家計債務は低水準、景気減速期でバッファーとなる期待。
――家計債務の可処分所得比率は低下をたどり、ITバブル後の景気回復期以来の水準まで改善しました。貯蓄率もヒストリカルで堅調なレベルを維持。米株高など金融市場の回復を背景に家計純資産の可処分所得比の家計純資産も過去最高近くへ切り返し、家計のバランスシートは健全と言えるでしょう。とはいえ、米国人の株式保有率は2016年時点で51.9%と高水準ながら、株式保有資産を所得階層別でみると、歴然とした違いが。上位10%では36.3万ドルと、上位61~80%の1万ドルを大きく突き放します。
(作成:My Big Apple NY)
2020年の米大統領選を控え再び格差問題に焦点があたれば、株式資産に関わる不均衡是正が求められてもおかしくありません。少なくとも民主党の大統領候補は、自社株買い規制強化の姿勢を強めてくるのでしょう。
(カバー写真:MarineCorps NewYork/Flickr)
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