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8月のADP全国雇用者数、採用予定数は雇用統計にグッドニュース

by • September 6, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off1896

Private Job Growth And Hires Suggest Strong Labor Market Despite Trade Tensions.

米8月ADP全国雇用者数、米8月チャレンジャー人員削減予定数をおさらいしていきます。

米8月ADP全国雇用者数は前月比19.5万人増となり、市場予想の14.8万人増を上回った。前月の14.2万人増(15.6万人増から下方修正)を超え、4ヵ月ぶりの高水準となる。トランプ大統領が8月1日に対中追加関税第4弾の発動を表明し8月23日には中国の報復措置決定を手掛かりに税率を引き上げたが、労働市場は力強さを維持。サービス部門と財部門は、共に4ヵ月ぶりの水準を回復している。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。

ADP全国雇用者数、予想外に堅調な水準に。

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(作成:My Big Apple NY)

セクター別では、サービス部門が18.4万人増と前月の14.1万人増(修正値)を上回り4ヵ月ぶりの高水準だった。内訳をみると、教育・健康(前月は5.2万人増→5.8万人増)、専門サービス(前月は3.3万人増→3.5万人増)と支えた。さらに、今回は娯楽・宿泊(前月は2.1万人増→2.1万人増)と輸送・倉庫(前月は2.0万人増→3.9万人増)の伸びが強まった。逆に、金融(前月は1.4万人増→0.5万人増)と鈍化した。

財部門(製造業、建設、鉱業)は1.1万人増と、前月の0.1万人増を上回り2ヵ月連続で増加した。内訳をみると、製造業(前月は0.4万人減→0.8万人増)と3ヵ月ぶりに減少した前月からプラスへ戻した。建設(前月は1.2万人増→0.6万人増)と鈍化。ただし、原油価格が伸び悩むなかで、鉱業(前月は0.7万人減→0.1万人減)は5ヵ月連続で減少した。

ADPとともに統計を担当するムーディーズ・アナリティクスのマーク・ザンディ主席エコノミストは、結果を受け「企業は経済鈍化局面にも関わらず、雇用増の面で持ちこたえている」と振り返った。また「雇用の増加ペースは勢いを失いつつあるが、解雇者数も低水準にあり、景気後退入りは回避されよう」と楽観的なコメントを寄せた。

――ADP全国雇用者数と雇用統計・民間就労者数の誤差は3.3万人でADPが過剰に見積もっている場合が多い状況です。逆に、足元3ヵ月間では、雇用統計・民間就労者数を平均で2.1万人下回りますが、今回はどちらに振れるのでしょうか?

▽米8月チャレンジャー人員削減予定数、採用予定数と共に増加

米8月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比39.0%増の53,480人だった。前月比では37.7%減となり、3ヵ月ぶりに5万人台に乗せた。今回で、前年比超えは8ヵ月連続となる。年初来では同36.2%増の42万312人と2015年以来で最大を記録した。

発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのヴァイス・プレジデント、アンドリュー・チャレンジャー氏は、結果を受け「企業は徐々に米中貿易戦争の影響を受け始め、実際に”貿易上の問題”が8月だけで1万人相当の人員削減につながった」と指摘した。さらに「投資家の市場信頼感が揺らいでおり、雇用主は製品やサービスへの需要鈍化に人員削減で対応しつつある」とコメントし、悲観的な姿勢を示す。なお8月は月初にIBMが今後数年間で最大10万人の解雇に踏み切る方針を表明したほか、シスコが480人、USスチールも一時解雇として200人行なったとされる。

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(作成:My Big Apple NY)

人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。チャレンジャー・グレイ・クリスマスの指摘通り、通信が全体を押し上げた。

1位 テクノロジー 13,851人(全体の25.9%)
2位 政府 5,775人(全体の10.8%)
3位 ヘルスケア 3,421人(全体の6.4%)
4位 食品 1,376人(全体の2.6%)
5位 サービス 1,008人(全体の1.9%)

州別動向は、年初来で以下の通り。前月は1位がカリフォルニア州、2位がニューヨーク州、3位がマサチューセッツ州、4位がテキサス州、5位がイリノイ州だった。自動車関連の人員削減がミシガン州を押し上げたとみられる。

1位 カリフォルニア州 65,409人(全体の15.6%)
2位 ニューヨーク州 48,445人(全体の11.6%)
3位 マサチューセッツ州 34,451人(全体の8.2%)
4位 テキサス州 26,998人(全体の6.4%)
5位 ミシガン州 24,731人(全体の5.9%)

リストラ実施の理由、年初来のランキングは以下の通り。今回、「貿易上の問題」を理由に約1万人相当が人員削減されたと伝わっていますが、年初来でみて上位に食い込まず10 位。ただし、年初来では8月の10,488人のみが反映されており、今回から加わった可能性がある。なお、「関税」は年初来で15位で2,076人だった。

1位 再編 95,921人(全体の22.8%)
2位 閉鎖 90,120人(全体の21.4%)
3位 コスト削減 50,674人(全体の12.1%)
4位 破産 44,084人(全体の10.5%)
5位 契約切れ 43,337人(全体の10.3%)

採用予定数は、前年同月比40.7%増の24,937人だった。前月比では11.7増となる。年初来では前年同期比2倍増の511,851人だった。セクター別では、以下の通り。

1位 小売 9,150人(全体の36.7%)
2位 建設 5,500人(全体の22.1%)
3位 サービス 2,900人(全体の11.6%)
4位 娯楽 1,840人(全体の7.4%)
5位 ヘルスケア 1,500人(全体の6.1%)

――人員削減予定数が増加する陰で、技術革新や消費者の嗜好変化などを受けた人材不足を補填するため、採用予定数も増加しています。米8月ADP全国雇用者数でも、企業の採用意欲の高さを確認しました。追加関税措置などの影響を受けながら、企業は競争力確保を狙い縮小する方向にはないようです。

(カバー写真:Franck Michel/Flickr)

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