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【備忘録】民主党のウォーレン候補選出、金融市場のブラック・スワンか

by • November 24, 2019 • Finance, Latest NewsComments Off1814

※こちらは10月初めに執筆した記事です。

10月2日、ダウは494ドル安で取引を終えた。ウォール街では、これを“ウォーレンの調整(Warren Correction)”と呼ぶ者が少なくない。格差是正を訴える急進左派の民主党大統領候補、ウォーレン上院議員(70歳)の台頭を警戒した急落と解釈されているためだ。同日、同じく急進左派で自ら社会民主主義者と呼ぶ2016年の同党大統領候補、バーニー・サンダース上院議員(78歳)が動脈血栓の手術を受けたとのニュースを手掛かりに、ウォーレン氏勝利への懸念が台頭した。

民主党大統領候補レースが幕を開いた当初、金融危機後にオバマ政権下で設立された消費金融保護局の特別顧問を務めたウォーレン氏は、本命視されていなかった。5月初めの支持率トップは41.4%ジョー・バイデン前副大統領(72歳)、2位はサンダース氏で14.6%に対し、ウォーレン氏は3位ながら8.0%と大きく水を開けられていたものである。しかし、10月8日時点でウォーレン氏の支持率は26.6%へ上昇、バイデン氏を抜き首位に躍り出た。バイデン氏が中道派でオバマ政策の継承者とする立場を貫く一方、国民皆保険や富裕税などに距離を置く姿勢がリベラル派から支持を得られず、次男が関与するウクライナ疑惑も問題視されたようだ。

さらに、サンダース氏の健康問題が浮上し、同氏の支持者が一部ウォーレン氏にまわった可能性もある。ウォーレン氏とサンダース氏が共に格差是正を柱とする急進左派寄りの政策を打ち出しており、乗り換えが起こってもおかしくない。例えば2人は富裕税、国民皆保険、2050年までの二酸化炭素排出ゼロ、薬価引き下げ、軍事費削減などを掲げ、詳細が異なる程度だ。両者を大きく分ける政策は、ウォーレン氏が主張する巨大IT企業の解体に過ぎない。

民主党候補の正式指名は7月13~16日開催の党大会だが、ウォール街が早くも“ウォーレンの調整”を懸念するには理由がある。今年は、カリフォルニア州など新たに加わった4州を含め、3月3日の“スーパー・チューズデー”に予備選を行うのは14州。これらの州は投票権を有する代議員数の36%を占めるだけに、大勢が判明するというわけだ。

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(作成:My Big Apple NY)

ウォーレン氏が過去に提出した法案に基づけば金融規制強化も見込まれ、一部の金融機関は、ウォーレン大統領誕生を「2020年のリスク・シナリオ」として警告し始めた。セクター別では金融、IT、ヘルスケアの下落余地を見込む一方、学生ローン免除などを一因に一般消費財を推奨する。ウォーレン氏は社会保障費引き上げやCO2排出ゼロを目指す上で、トランプ政権で成立した減税巻き戻しを進めるとも発言済み。共和党が上院を確保すれば民主党大統領の政策にブレーキが掛かる見通しとはいえ、少なくともウォール街はウォーレン候補勝利のブラック・スワンに備え始めた。

(カバー写真:Gage Skidmore/Flickr)

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