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米12月求人数は2ヵ月連続で大幅減、労働市場は頭打ちか

by • February 12, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off1586

Run Out Of Steam? Job Openings Decline 2-Month In A Row.

米労働省が発表した米12月雇用動態調査(JOLTS)で求人数は642.3万人と、前月の678.7万人(修正値)を5.4%下回った。過去6ヵ月間で4回目の減少となり、2018年末から14.1%減少したことになる。求人数は2018年2月以降から続く失業者を上回るトレンドを維持したが、その差は約2年間で2番目に小さい

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(作成:My Big Apple NY)

採用数は前月比1.4%増の590.7万人となった。2ヵ月連続で増加し、過去最高を更新した2019年4月(599.1万人)を視野に入れた。なお、米12月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は14.7万人増と、労働市場の拡大を吸収する水準を保った。

離職者数は573.0万人と、前月の570.9万人(修正値)を0.4%上回り2ヵ月連続で増加した。定年や自己都合による自発的離職者が2.2%減の348.8万人と3ヵ月ぶりに減少した半面。解雇者数は11月に10.5%減だった反動を一因に7.2%増の189.5万人となった。ただし、2010年7月以来の高水準だった2019年9月の197.5万人を下回った。

求人率は前月の4.5%を下回り4.0%と、税制改革法案が施行する直前の2017年12月以来の水準まで低下した。2019年1月は過去最高に並び4.8%だった。民間が前月の4.5%から4.2%へ低下。原油安が響き鉱業が前月から1%ポイントも低下した上、米中貿易摩擦や世界経済の減速を背景に製造業、さらにサービス部門では輸送・倉庫や小売など年末商戦の本格化を受けながら低下した。また、専門サービスや教育・健康などこれまで雇用を牽引したセクターも軟調だった。政府も、前月の3.1%から2.9%へ低下した。

採用率は前月まで2ヵ月連続で3.8%を経て、3.9%へ上昇した。民間は前月の4.2%から4.3%へ上昇している。セクター別では求人数を反対に鉱業が上向いたほか、年末商戦を前に娯楽・宿泊も前月を超えた。建設、製造業のほか、専門サービス、教育・健康が上昇。一方で、金融や情報が低下し、その他サービスに至って1.0%も急低下した。政府は国勢調査の臨時雇用が一服したのか、前月の1.6%から1.5%へ低下した。

求人数は減少、採用数は小幅増も、解雇者数がけん引し離職者数が増加。

jolts_19dec
(作成:My Big Apple NY)

自発的および引退、解雇などを含めた離職率は前月まで2ヵ月連続で3.7%だったが、今回は3.8%へ上昇した。民間が過去2ヵ月の4.1%を上回り4.2%。セクター別では建設をはじめ輸送・倉庫、情報、教育・健康、娯楽・宿泊など幅広く上昇した。政府は前月に続き、1.5%だった。自発的離職率は4ヵ月連続で2.3%となり、労働市場への楽観度が後退しつつあるようだ。解雇率は3ヵ月連続で1.3%となり、統計開始以来で最低をつけた2018年3月の1.0%が遠のきつつある。

自発的離職者数は減少し解雇者数は増加、離職者数を押し上げ。

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(作成:My Big Apple NY)

――以上の結果を踏まえ、今となっては懐かしいイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。達成項目は9項目中3項目。未達項目は労働市場のひっ迫を一因にNFPが入ったほか、長期失業者の割合、労働参加率でした。以下は詳細で、()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字となります。

1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 4.0%

2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.3%

3)自発的離職率 ○
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.3%
現時点 2.3%

4)採用率—○
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.9%

5)非農業部門就労者数—×
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 22.4万人増
現時点の3ヵ月平均 21.1万人増

6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 3.6%

7)不完全失業率—○
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 6.9%

8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 19.9%

9)労働参加率—×
2015年9月(最悪時点) 62.3%
2004-07年平均 66.1%
現時点 63.4%

有効求人倍率は求人数の減少が響き、低下。

jolts_19dec_wage
(作成:My Big Apple NY)

米12月雇用動態調査は採用数が小幅増だったとはいえ、求人数が減少し解雇者数が押し上げ離職者数も増加していました。米中貿易協議・第1段階の合意をトランプ大統領が承認し、貿易摩擦悪化懸念が後退したものの、中国を始め世界景気の減速が響いたもよう。1月は暖冬を受け再びNFPは20万人台の増加を遂げましたが、雇用動態調査が明るさを取り戻すのでしょうか。筆者は、自発的離職者数の伸び悩みが気掛かり。1月ベージュブックでは引き続き明るい材料が並び労働市場は好調を維持しそうだったものの、新型コロナウイルスというかく乱要因も重なり、労働市場に不透明性が高まってきました。

(カバー写真:torbakhopper/Flickr)

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