May Jobs Report Did Show Signs Of Recovery, But Black Unemployment Edged Up.
米5月雇用統計は、劇的に好転しV字回復を示唆しました。では結果の詳細をみていきましょう。
〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給
生産労働者・非管理職部門(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比0.6%下落の25.00ドル。前月の4.3%上昇に届かず、17年11月から続く上昇トレンドにピリオドを打った。業種別を前月比でみると、NFPの雇用増の約半分を占めた娯楽・宿泊が1.4%下落したほか、その他サービスも2.2%の下落と弱い。その他、情報や輸送・倉庫、公益、専門サービス、鉱業・伐採などが下落した。
チャート:業種別、前年比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額
〇労働参加率
働き盛りの男性(25~54歳)の労働参加率は、ヘッドライン同様に全般的に上昇した。全米の男性は季節調整済み、白人は季節調整前の数字で以下の通り。そろって急低下し、統計データ取得可能期間で最低を更新した。
・25~54歳 87.2%>前月は86.4%と1948年以降で最低、6ヵ月平均は88.4%
・25~54歳(白人) 88.8%>前月は87.9%と1954年以降で最低、6ヵ月平均は89.7%
・25~34歳 86.4%>前月は85.4%と1948年以降で最低、6ヵ月平均は88.1%
・25~34歳(白人) 88.0%>前月は87.3%と1954年以降で最低、6ヵ月平均は89.6%
チャート:働き盛りの男性、労働参加率
〇非労働力人口
非労働力人口に属し現在職を探していないものの「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は前月比で9.6%減の896.2万人(男性は453.5万人、女性は442.7万人)。過去最多から改善したが、4ヵ月ぶりに男性が女性を上回った。新型コロナウイルス感染拡大を背景に職探しを断念した潜在労働者が、男性を中心に引き続き高水準にあることが分かる。
チャート:就職を望む非労働力人口
〇人種別の失業率、労働参加率
人種別の失業率は、白人とヒスパニック系が牽引し全体の失業率を押し下げた。しかし、黒人とアジア系はデータ集計開始以来の最悪を更新。人種別では、まちまちな結果となっている。
・白人 12.4%<前月は14.2%と過去最悪、6ヵ月平均は6.2%
・黒人 16.8%、過去最悪>前月は16.7%、6ヵ月平均は9.1%
・ヒスパニック 17.6%<前月は18.6%と過去最悪、6ヵ月平均は8.5%
・アジア系 15.0%、過去最悪>前月は14.5%、6ヵ月平均は6.3%
・全米 13.3%<前月は14.7%と過去最悪、6ヵ月平均は6.6%
チャート:人種別の失業率
人種別の労働参加率は全て上昇。記録的な低水準だった前月を上回った。
・白人 61.0%>前月は60.3%と1973年10月以来の低水準、6ヵ月平均は62.4%
・黒人 59.6%>前月は58.6%と1976年以来の10月以来の低水準、6ヵ月平均は61.6%
・ヒスパニック 64.1%>前月は63.3%と1983年4月以来の低水準、6ヵ月平均は66.4%
・アジア系 60.8%>前月は60.7%と過去最低、6ヵ月平均は63.1%
・全米 60.8%>前月は60.2%と1973年1月以来の低水準、6ヵ月平均は62.4%
〇学歴別の失業率、労働参加率
学歴別の失業率は軒並み低下。そろって1992年のデータ取得範囲内での最悪から改善した
・中卒以下 19.9%<前月は21.2%と過去最悪、6ヵ月平均は10.7%
・高卒 15.3%<前月は17.3%と過去最悪、6ヵ月平均は8.0%
・大卒以上 7.4%<前月は8.4%と過去最悪、6ヵ月平均は4.0%
・大学院卒以上 5.6%<前月は6.7%と過去最悪、6ヵ月平均は3.4%
・全米 13.3%<前月は14.7%と過去最悪、6ヵ月平均は7.2%
チャート:学齢別の失業率
学歴別の労働参加率は、中卒以外で上昇した。
・中卒以下 41.9%、1997年2月以来の低水準<前月は42.8%、6ヵ月平均は45.1%
・高卒 55.0%>前月は54.6%と1992年以降で最低、6ヵ月平均は57.1%
・大卒以上 71.9%>前月は71.6%と1992年以降で最低、6ヵ月平均は72.8%
・全米 60.8%>前月は60.2%、1973年以来の低水準、6ヵ月平均は62.3%
――今回、NFPの増加のうち約半分が娯楽・宿泊だったものの、失業率は学歴別でそろって低下しました。働き盛りの男性の労働参加率も改善。問題は人種別で、失業率は黒人とアジア系で過去最悪を更新しています。労働参加率の上昇が一因とされますが、人種差別をめぐる抗議デモが全米で波及するなか、再選を目指すトランプ大統領にとってツイートほど手放しで喜べる内容ではなかったと言えるでしょう。
(カバー写真:Phil Roeder/Flickr)
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