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米5月中古住宅販売件数は失望的、新築住宅販売件数は持ち直し

by • June 25, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off3124

Existing Home Sales Hit Lowest Since 2010 While New Home Sales Improve.

全米リアルター協会(NAR)が発表した米5月中古住宅販売件数は年率391万件と、市場予想の409万件を下回った。前月の433万件を9.7%下回り、3ヵ月連続で減少した結果、2010年10月以来の低水準となる。前年比では26.6%減と、3ヵ月連続で2桁減となり、過去5ヵ月間で3回目の減少となった。

内訳は以下の通り。
・一戸建て 前月比9.4%減の357万件と2010年10月以来の低水準、前年比24.8%減
・複合住宅 前月比12.8%減の34万件と3ヵ月連続で2桁減、少なくとも金融危機以降での最低を更新、前年比は41.4%減

チャート:中古住宅販売件数、金融危機後まもない2010年の水準まで押し返される展開

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(作成:MyBigAppleNY)

4大地域別では、3ヵ月連続で全ての地域で減少した。
・北東部 13.0%減(4ヵ月連続で減少)の47万件
・中西部 10.0%減(3ヵ月連続で減少)の99万件
・南部 8.0%減(3ヵ月連続で減少)の173万件
・西部 11.1%減(3ヵ月連続で減少)の72万件

在庫件数は、経済活動の再開とコロナ禍で増加
・在庫件数 前月比6.2%増の155万件と過去5ヵ月間で4回目の増加、前年比では18.8%減と12ヵ月連続でマイナス(なお2019年12月に139万件と1999年以来での最低を更新)
・在庫相当 4.8ヵ月、前月の4.0ヵ月から延び2015年7月以来の水準
・販売日数 26日、前月の27日を下回りコロナ前の40日台から大幅短縮の40日(NARは、販売件数の39%が1ヵ月以内に買い手がついたと説明)

住宅価格は高止まり
・中央価格 前月比0.7%下落の28.46万ドルと4ヵ月ぶりに下落、前年比では2.3%上昇し2012年3月以降続くプラス基調を維持

買い手の内訳、投資家の需要が下支え
・新規購入者 34%<前月は36%、前年同月は31%
・現金購入者 17%>前月は15%、前年同月は20%
・住居用ではなく投資向け 14%>前月は10%、前年同期は17%

チャート:新規購入者の比率は直近で最高水準

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(作成:My Big Apple NY)

発表元のNARのローレンス・ユン米エコノミストは、結果を受け米経済は概してV字型回復を望めないと指摘しつつ「住宅セクターのみに着目すると、V字型回復の公算が大きい」と振り返った。また、コロナ禍で三密を回避する狙いから「郊外と一戸建てを選好する動きがみられ、これは永続的な変化の可能性がある」と述べた。米6月NAHB住宅市場指数の結果を振り返ったコメントと一致し、コロナ後の住宅需要の変化に言及した格好だ。

▽米5月新築住宅販売件数、予想外に4ヵ月ぶりに増加

米5月新築住宅販売件数は年率67.6万件と、市場予想の64.0万件を上回った。2018年12月以来で最低だった前月の58.0万件(62.3万件から下方修正)を16.6%上回り、4ヵ月ぶりに増加した。前年比では12.7%増と、3ヵ月ぶりに増加に転じた。

チャート:新築住宅販売件数、4ヵ月ぶりに増加

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(作成:My Big Apple NY)

4大地域別では、3地域で増加した。
・北東部 前月比45.5%増(3ヵ月ぶりに増加)の3.2万件
・中西部 前月比6.4%減(過去4ヵ月間で3回目の減少)の7.3万件
・南部 前月比15.2%増(4ヵ月ぶりに増加)の40.2万件
・西部 前月比29.0%増(4ヵ月ぶりに増加)の16.9万件

在庫総数は減少
・在庫総数 前月比2.2%減の31.8万件、2018年7月以来の低水準
・在庫相当 5.6ヵ月、前月の6.7ヵ月から短期化し4ヵ月ぶりの低水準

チャート:在庫件数、5月に中古は改善も新築は減少

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(作成:My Big Apple NY)

住宅価格は高止まり
・中央価格 前月比4.9%上昇の31.79万ドル、前年比も1.7%上昇、いずれも過去4ヵ月間で3回目の上昇
・今回、販売件数のうち価格帯別で20万~29万ドルが31%、30万~39万ドルが28%、合わせて59%が中央レンジ付近

――中古住宅販売件数は失望を誘った一方で、新築住宅販売件数は予想外に好調でした。その理由は、契約段階でどの時点の数字をベースにしているかの違いで、中古住宅販売が引き渡しを示す一方で、新築は契約にサインした段階を表します。従って、中古住宅販売件数は経済活動の段階的な再開の影響を受けたため、大幅減となったと考えられます。

定義の違いはさておき、住宅市場の需要に変化の兆しが現れた点には注意が必要です。MBA住宅ローン申請件数指数のうち、新規購入指数は10週ぶりに低下に転じました。前年比では力強さを維持し、申請件数ベースの比率も上昇をたどりますが、第2波次第では郊外や一戸建ての需要を冷やしかねません。

チャート:MBA住宅ローン申請件数指数、新規購入に弱含みのサイン

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(作成:My Big Apple NY)

米5月新築住宅販売件数で指摘させて頂いた通り、米国の景気回復には不確実性がつきまといます。

(カバー写真:MMR Dad/Flickr)

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