Job Growth Rebounds Only Slightly, Suggests U.S. Economy More Stimulus.
米1用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比4.9万人増となり、市場予想の10.5万人増を下回った。前月は、新型コロナウイルス感染者数が過去最多を更新し、全米の大半の州で規制が再度強化され、年末商戦も終焉を迎えるなかで8ヵ月ぶりに減少(22.7万人減、速報値の14.0万人減から下方修正)したが、増加基調へ戻した。20年5月以降、約1,270万人の雇用を回復している。ただ、3~4月の記録的な減少(2,216万人)を回復するにはあと約990万人必要だ。なお今回、米労働統計局は、事業所調査においてベンチマーク変更および季節調整替えを行った。
チャート:コロナ禍で失った雇用を取り戻すには、あと約890万人増加する必要あり
20年11月分の7.2万人の下方修正(33.6万人増→26.4万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で15.9万人の下方修正となった。20年11~21年1月の3ヵ月平均は2.9万人増にとどまり、コロナ禍前の2019年平均である17.5万人増を大幅に下回った。
NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比0.6万人増と市場予想の16.3万人増を下回った。8ヵ月ぶりに減少した前月の20.4万人減(修正値)から、小幅な改善にとどまる。民間サービス業は1.0万人増となり、前月の28.0万人減(修正値)から辛うじてプラス圏を回復した。
チャート:NFPは8ヵ月ぶりに減少した前月から改善、失業率は低下
サービス部門のセクター別動向は、11業種中7種が増加し前月の3業種を上回った。今回最も雇用が増加した業種は専門サービスで、続いて政府、情報が入った。逆に年末商戦の終了を背景に、輸送・倉庫が2ヵ月連続で減少したほか、小売が減少に反転。娯楽・宿泊は全米の多くで対面サービス業が規制再導入の対象となるなかで、2ヵ月連続で落ち込んだ。教育・健康も2ヵ月連続で減少した。
(サービスの主な内訳)
―増加した業種
・専門サービス 9.7万人増、9ヵ月連続で増加<前月は15.6万人増、6ヵ月平均は15.5万人増(そのうち派遣は8.1万人増>前月は6.4万人増、6ヵ月平均は7.3万人増)
・政府 4.3万人増、5ヵ月ぶりに増加>前月は2.3万人減、6ヵ月平均は0.8万人減
・情報 1.6万人増、2ヵ月連続で増加>前月は0.6万人増、6ヵ月平均は1.3万人増
・卸売 1.4万人増、6ヵ月連続で増加>前月は1.6万人増、6ヵ月平均は1.6万人増
・金融 0.8万人増、9ヵ月連続で増加<前月は1.8万人増、6ヵ月平均は2.3万人増
・その他サービス 0.7万人増、3ヵ月ぶりに増加>前月は1.8万人減、6ヵ月平均は2.6万人増
・公益 0.1万人増、4ヵ月ぶりに増加>前月は0.1万人減、6ヵ月平均は横ばい
―減少した業種
・教育/健康 0.7万人減、2ヵ月連続で減少>前月は3.1万人減、6ヵ月平均は5.1万人増
・輸送/倉庫 2.8万人減、2ヵ月連続で減少<前月は2.4万人増、6ヵ月平均は4.6万人増
(そのうち、ヘルスケア・社会福祉は4.1万人減<前月は3.9万人増、6ヵ月平均は6.2万人増)
・小売 3.8万人減、再び減少に反転<前月は13.5万人増、6ヵ月平均は8.1万人増
・娯楽・宿泊 6.1万人減、2ヵ月連続で減少>前月は53.6万人減、6ヵ月平均は3.5万人増(そのうち食品サービスは1.9万人減、3ヵ月連続で減少>前月は40.2万人減、6ヵ月平均は9.8万人増)
財生産業は前月比0.4万人減と、前月の7.6万人増(修正値)から転じ9ヵ月ぶりに減少した。最も下押しした業種は製造業、続いて建設となる。一方で、鉱業のみ増加。追加経済対策期待から油価が50ドル台を回復し約1年ぶりの高値回復する過程で、回復基調をたどった。詳細は、以下の通り。
(財生産業の内訳)
・鉱業・伐採 0.9万人増、5ヵ月連続で増加(石油・ガス採掘は800人増)>前月は0.3万人増、6ヵ月平均は0.3万人増
・建設 0.3万人減、9ヵ月ぶりに減少<前月は4.2万人増、6ヵ月平均は3.3万人増
・製造業 1.0万人減、9ヵ月ぶりに減少<前月は3.1万人増、6ヵ月平均は3.0万人増
チャート:1月のセクター別増減
(作成:My Big Apple NY)
チャート:どの業種もコロナ前の回復に至らず
平均時給は前月比0.2%上昇の29.96ドル(約3,150円)と、市場予想の0.3%を下回った。低賃金職が減少した影響で統計上の理由で上振れした前月の1.0%(0.8%から上方修正)を含め、7ヵ月連続で上昇している。前年比は5.4%上昇し、市場予想の5.0%を超え8ヵ月ぶりの高い伸びとなった前月と一致した(5.1%から上方修正)。前年比の3%超えは13ヵ月連続となる。ただし、コロナ禍以降は低賃金職の減少を受けた統計上の伸びに過ぎない。
チャート:平均時給は前年比で高水準を維持
週当たりの平均労働時間は35.0時間と、市場予想と前月の34.7時間を上回った。結果、統計が開始した2006年以来で最長となる。財部門(製造業、鉱業、建設)の平均労働時間は40.1時間と、新型コロナウイルス感染拡大直前の20年2月以来の高水準。全体の労働者の約7割を占める民間サービスも33.9時間と、2006年以降で最長を記録した。
失業率は6.3%と市場予想と前月の6.7%を下回り、20年3月以来の水準となった。過去最悪だった4月の14.7%でピークアウトを示す。ただ労働統計局によれば、引き続き「雇用されているが休職中」の人の扱い依然として正確に反映されず、これを除くと失業率は6.9%だったという。
失業率の低下は、労働参加率が61.4%と市場予想と前月の61.5%を下回り。40,6万人が労働市場から退出したことが響いた。労働参加率は、コロナ禍を受け1973年1月以来の低水準だった20年4月の60.2%上回る水準を維持したとはいえ、伸び悩みを示す。就業率は過去最低だった4月の51.3%から上昇を続け、今回は57.5%だった。
在宅勤務を行ったとする労働者の割合は23.2%と、前月の23.7を下回った。
フルタイムとパートタイム動向を季節調整済みでみると、フルタイムは前月比で0.2%減の1億2,469万人、前月から30.1万人増加した。しかし、パートタイムは年末商戦向け臨時雇用がコロナ禍で打撃を受けた結果、同1.2%減の2,463万人となり、前月から29.0万人減少した。
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間雇用者数が前月から増加に転じ、平均労働時間も延びたため、前月比0.9%増となった。平均時給は前月比で上昇が続いたため、労働所得(総労働投入時間×時間当たり賃金)は前月比1.1%増と、こちらも大幅な伸びを示した。
かつてイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長のダッシュボードに含まれ、「労働市場のたるみ」として挙げた1)不完全失業率(フルタイム勤務を望むもののパートタイムを余儀なくされている人々、縁辺労働者、職探しを諦めた者など)、2)賃金の伸び、3)失業者に占める高い長期失業者の割合、4)労働参加率――の項目別採点票は、以下の通り。
1)不完全失業率 採点-△
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者や働く意思を持つ者などを含む不完全失業率は11.1%と、前月の11.7%から低下し20年3月以来の低水準だった。ただし、経済的理由でパートタイムを余儀なくされている労働者は前月比2.3%減の595.4万人と減少したことが大きい。コロナ感染者の増加と年末商戦の終了が響いたとみられる。
チャート:不完全失業率、労働参加率、就業率はそろって改善傾向を維持
(作成:My Big Apple NY)
2)長期失業者 採点-×
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の平均は26.0週と、2017年9月以来の水準へ延びた。失業期間の中央値は逆に15.3週と、6ヵ月ぶりの水準へ短縮。27週以上にわたる失業者の割合は39.5%と、2012年11月以来の40%乗せが迫った。
3)賃金 採点-△
今回は前月比0.2%上昇し、7ヵ月連続でプラス。前年比は5.4%上昇し、8ヵ月ぶりの高い伸びとなった。生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で0.1%上昇の25.18ドル。前年比では5.4%上昇し、管理職を含めた全体と並んだ。
4)労働参加率 採点-×
労働参加率は61.4%と、前月の61.5%を下回り4ヵ月ぶりの水準へ低下した。1973年1月以来の低水準だった4月の60.2%を上回った水準を保つ。なお、金融危機以前の水準は66%オーバーだった。
――今回、8ヵ月ぶりの減少した20年12月からプラス基調を回復したとはいえ、手放しで喜べる数字とは言えません。雇用の増加を牽引した専門サービスのうち、8割は派遣でした。また、コロナ以前から雇用を支えた教育・健康も、振るわず。娯楽・宿泊や小売などは1月25日に夜間外出禁止措置を解除したカリフォルニア州など、規制緩和に伴い回復が期待されますが、足元で依然として人員削減予定数が高止まりしている点は、気掛かりです。
逆に言えば、追加経済対策が必要と捉えられる結果と言えるでしょう。過半数での成立が可能で共和党の協力を必要としない財政調整措置の活用を目指す民主党にとっては、世論を味方につけられます。ゼロ近辺金利政策はもちろん、量的緩和の規模を少なくとも21年末まで維持したいFRBにとっても朗報で、米株相場にとってもゴルディロックスを予感させる心地よいニュースだったことでしょう。
(カバー写真:Säf LeViktor/Flickr)
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