Private Payrolls Increase Less Than Expected, But Job Cuts Plummet.
2月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定数をおさらいしていきます。
米2月ADP全国雇用者数は前月比11.7万人増となり、市場予想の20万人増を下回った。1月25日にカリフォルニア州が外出禁止令を解除するなど、一部の州で感染者減少を受け規制緩和に着手した半面、大寒波の到来やテキサス州の大停電を受け、雇用増加ペースが鈍化したとみられる。ただし、2ヵ月連続で増加した。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。
チャート:ADP全国雇用者数、2ヵ月連続で増加
セクター別では、サービス部門が13.1万人増と2ヵ月連続で増加したが、ヘッドライン通り前月の19.5万人増(修正値)には届かなかった。内訳は以下の通り。
・教育/健康→3.5万人増、10ヵ月連続で増加<前月は5.7万人増
・専門サービス→2.2万人増、10ヵ月連続で増加<前月は4.3万人増
・娯楽/宿泊→2.6万人増、2ヵ月連続で増加>前月は5.0万人増
・貿易/輸送→4.8人増、2ヵ月連続で増加>前月は1.4万人増
・その他→0.3万人増、2ヵ月連続で増加<前月は1.2万人増
・金融→横ばい、増加基調を6ヵ月で止める<前月は0.3万人増
・情報→0.3万人減、4ヵ月連続で減少<前月は0.2万人減
財部門(製造業、建設、鉱業)は1.4万人減と、過去3ヵ月間で2回目の減少となった。内訳は以下の通り。
・鉱業→0.3万人増、3ヵ月ぶりに増加>前月は横ばい
・建設→0.3万人減、7ヵ月ぶりに減少<前月は0.8万人増
・製造業→1.4万人減、減少に反転<前月は0.8万人増
ADPリサーチ・インスティチュートのニラ・リチャードソン首席エコノミストは、結果を受け「特に大企業でコロナ禍の影響を受けるほか、製造業は採用を中断した」と指摘。また「サービス部門の雇用は、コロナ以前を下回る」としつつ、経済活動の再開や消費者マインドで恩恵を受けるだろう」と楽観的な見方を寄せた。
▽米2月人員削減予定数は、採用予定数を上回り高止まり
米2月チャレンジャー人員削減予定数は、前年同月比で39.1%減の3万4,531人と12ヵ月ぶりに減少に転じた。同時に、単月で過去最多更新記録にブレーキを掛けた。前月比では56.6%減となり、3ヵ月ぶりに減少した。感染者数の減少に加え、ワクチン普及の加速を背景に、米企業は人員削減計画を見直しつつあるようだ。
年初来では、前年同期比8.3%減の12万4,395人だった。
チャート:人員削減予定数、コロナ前の2019年平均である約5万人超えを維持
発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアドリュー・チャレンジャー副社長は、今回の結果を受け「削減予定は一旦停止したようで、健全な雇用増加がこの後に続けば、完全な回復につながりうる」と明るい予想を展開した。また「小売や娯楽、ヘルスケアなどパンデミックで雇用削減が目立った業種で、大規模な採用計画が発表されている」という。ただし「雇用がコロナ以前の水準へ戻せなければ、経済停滞サイクルに突入し、潜在的な長期失業者を増やしかねない」と付け加えた。
人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。
1位 小売 9,257人
2位 エネルギー 3,736人
3位 保険 3,128人
4位 輸送 2,401人
5位 航空・防衛 1,726人
年初来では、以下の通り。
1位 航空・防衛 3万826人
2位 通信 1万9,002人
3位 小売 1万616人
4位 倉庫 7,929人
5位 娯楽・宿泊 7,522人
州別動向は、年初来で以下の通り。航空・防衛が最多だったことから、ボーイングが本社を置くワシントン州が引き続き前年の圏外から1位へ急伸した。
1位 ワシントン州 2万9,774人
2位 テキサス州 2万1,664人
3位 カリフォルニア州 1万4,927人
4位 ミズーリ州 6,721人
5位 テネシー州 6,589人
リストラ実施の理由別ランキングは、年初来で以下の通り。市場動向が前月の3位から2位へ浮上した半面、新型コロナウイルスは感染者数の減少とカリフォルニア州やNY州での規制緩和を背景に、4位から5位へ低下した。
1位 需要低下 3万7,121人
2位 市場動向 2万5,693人
3位 再編 1万9,826人
4位 閉鎖 1万2,470人
5位 新型コロナウイルス 5,817人
採用予定数は、前年同月比で66%増の14万6,403人だった。前月比では約2倍増と、大幅増に転じた。少なくとも、2014年以降で最大となる。
セクター別では、単月で以下の通り。
1位 小売 6万6,486人
2位 政府 3万12人
3位 娯楽・宿泊 1万4,564人
4位 資本財 8,338人
5位 ヘルスケア 3,806人
年初来では、以下の通り
1位 小売 6万8,975人
2位 政府 3万5,694人
3位 ヘルスケア 2万245人
4位 娯楽・宿泊 1万6,457人
5位 公益 1万4,218人
――2月の人員削減予定数は漸く単月ベースの記録更新に歯止めが掛かり、さらに採用予定数も大幅増を達成。感染者減少とワクチン普及を受け、雇用回復への希望が見えてきました。特に小売は、リフォーム関連のロウズが不動産市場の開幕を迎える春にかけ5万人の雇用計画を発表したように、経済活動の正常化期待もあって雇用の確保に臨みます。
米経済団体ビジネスラウンドテーブルが発表した最高経営責任者(CEO)の経済見通しのうち雇用も、2020年第4四半期に58.1へ上昇、雇用の回復に期待が掛かります。
チャート;CEOも雇用に前向きな姿勢へシフト
問題は、このまま雇用が順調に回復するか否か。金利上昇や資源価格の上昇、省人化などが労働市場の重石となれば、雇用回復の歩みを鈍くさせかねません。
(カバー写真:Mike Mozart/Flickr)
Comments
コロナ禍で人口が増えた州、減少した州 Next Post:
米2月雇用統計は予想上回る増加、飲食業とパートタイムが支え