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インフレ加速が懸念される米国でも横行する、「ステルス値上げ」

by • August 12, 2021 • Latest News, NY TipsComments Off2722

The New Normal That Is Arising Post COVID-19 Is, “Shrinkflation”.

米7月消費者物価指数(CPI)は、コアの前月比が0.3%の上昇と4ヵ月ぶりの伸びにとどまりました。背景は、こちらでご説明した通りです。

とはいえ、依然としてインフレ圧力を示す品目もございます。

夏休み効果もあって宿泊(6月:7.0%上昇→7月:6.0%上昇)や娯楽(6月:0.5%上昇、7月:0.5%上昇)などは引き続き高い伸びを示し、新車も半導体不足に伴う減産を受けて高止まり(6月:2.0%上昇→7月1.7%上昇)していました。

さらに今回は、肉類が落ち着いたかと思ったら、炭水化物関連、なかでも小麦・シリアル・パン類(7月:0.5%上昇、6月:横ばい)、米・パスタ(7月:0.9%上昇、6月:0.6%低下)などの品目でインフレが加速したものです。外食に至っては前月比0.8%上昇、1981年2月以来の高い伸びを記録しましたが、米7月雇用統計で外食が含まれる娯楽・宿泊の平均時給の伸びが示すように、賃上げ分が上乗せされたのでしょう。

結果、実質平均時給は前年同月比1.2%下落し、前月の1.6%の下落に続き4ヵ月連続でマイナスでした。CPIの上振れが続き実質賃金を押し下げれば、せっかく子育て支援の税控除が実施されても、消費を押し上げる余力は限られてしまいます。

チャート:実質平均時給の伸び、CPIの上昇率が加速につれ4月以降はマイナス続く

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(作成:My Big Apple NY)

しかし、企業に押し寄せる物価上昇圧力はCPIよりも厳しい。米7月生産者物価指数は前年同月比7.8%上昇し、記録的な伸びが続きます。

それでもS&P500構成企業の純利益率は2020年のQ1とQ2を除き、コロナ後も10%以上のトレンドを維持21年Q1は12.8%と少なくとも2016年で最高に、Q2も12.4%と高止まりが予想されています。

チャート:S&P500構成企業の純利益率、10%超えが続く(21年Q2は7月末時点の予測値)

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(作成:My Big Apple NY)

なぜ純利益率がコロナ前の水準を早々に回復しているかといいますと、Shrinkflation―日本語でいうステルス値上げが進行中であることが一因です。袋のサイズは変わらないのに、内容量が少なくなっているという、日本ではお馴染みの手法ですね。

例えば、7月のCPIでインフレ加速が顕著だったシリアルをみると、食品大手ゼネラル・ミルズのシリアル・ボックスの“ファミリー・サイズ”は19.3オンスから18.1オンスへ減量しておりました。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙によれば、“チリオーズ”を始めとした商品全般で値上げを決定していたのですよ。同社は、原材料価格や運搬コスト、労働コストの上昇を受け、2022年にかけコストが前年比7%上昇すると予想、コスト負担により価格に転嫁せざるを得ないと説明していました。実質の値上げだけでなく、ステルス値上げとの合わせ技でコスト負担に対抗した格好です。

そのほか、スナック菓子大手フリトレーが販売する“ドリトス”も今では9.75オンスから9.25オンスへサイズダウンしたにも関わらず。値段は変わらず3.99ドルなんですって。ウォルマートの自社ブランドである“グレート・バリュー・ペーパー・タオルズ”は168シートから120シートへ短くなったにも関わらず、お値段据え置き8.42ドル(6個入り)だといいます。

他にもこうした例は、枚挙に暇がないほど。金融危機以降、顕著となった日本化=Japanizationの波は、太平洋を越えて静かに全米を浸食し続けているようです。ステルス値上げ自体、今に始まったことではなく金融危機にひっそり行われてましたからね。

(カバー写真:Listener42/Flickr)

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