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米2月雇用統計、労働参加率低下も失業率上昇で労働市場に弱いサイン

by • March 9, 2025 • Finance, Latest NewsComments Off1182

The Unemployment Rate Rose While The Labor Force Participation Rate Declined, A Sign For Weaker Labor Market.

米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、市場予想を下回りましたが前月を上回る伸びで着地しました。ただし、労働参加率が低下するなかで失業率は上昇し、弱含みのサインが点灯。不完全雇用率の急伸や、フルタイムの減少なども労働市場の変曲点を示唆しているかのようです。

米2月雇用統計の結果を受け、FF先物市場では6月利下げ観測は前日の49.2%から一時54%超えを経て、パウエルFRB議長の利下げに急がない発言を行い47.5%へむしろ低下しました。引き続き年内3回の利下げ予想に傾きつつ、7月以降も小幅ながら概ね前日以下となっています。

画像:FF先物市場、6月は据え置き予想が逆転

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(出所:Fedwatch)

ドル円は堅調な結果を受け一時146.94円と24年10月上旬以来の水準まで下落しましたが、パウエルFRB議長発言を受けて148円台を回復して引け。米株もダウが一時400ドル安をつけながら買い戻され、米10年債利回りも低下を経て4.3%を回復してNY時間を終えました。

5分足チャート:ドル円は米2月雇用統計後、米10年債利回り(緑線、左軸)につれ下落も148円台へ怒涛の切り返し

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(出所:TradingView)

今回の雇用統計のポイントは以下の通りで、弱い材料が目立ちました。

(労働市場にポジティブ)

・NFPが市場予想を下回るも、前月を超える伸び
・長期失業者の割合が低下(ただし、失業期間の中央値は前月より延びる)

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)

・NFP、過去2カ月分は上方修正
・平均時給の伸び、前年比で生産労働者・非管理部門含め伸び鈍化(インフレ抑制の観点ではネガティブ、購買力の観点でポジティブ)
・民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)、前年比の伸び鈍化
・週当たり労働時間は低迷継続
・失業率が上昇
・労働参加率、4カ月ぶりの水準を回復
・就業率は3カ月ぶりに60%割れ
・不完全雇用率が急伸
・失業者のうち失職者と労働市場への再参入者が2カ月連続で増加
・完全解雇者の労働力人口の割合が小幅ながら上昇

以下は、今回の雇用統計の詳細。

〇非農業部門就労者数

米2月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比15.1万人増となり、市場予想の16万人増を下回った。前月の12.5万人増(14.3万人増から上方修正)からは増加した。

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比14.0万人増と市場予想と一致した。前月の8.1万人増(11.1万人増から下方修正)を超えた。民間サービス業は10.6万人増と、前月の8.8万人増(11.1万人増から上方修正)を下回った。

チャート:NFPは堅調な伸びを維持、失業率は3ヵ月ぶりに上昇

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(出所:Street Insights)

24年12月分の1.6万人の上方修正(30.7万人増→32.3万人増)と合わせ、過去2ヵ月分では合計で2,000人の下方修正となったこれで、2023年以降では、25回のうち17回目の下方修正(8回は下方修正)となる。

チャート:NFPと修正幅(グレー枠は2023年以降の修正幅)

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(出所:Street Insights)

サービス部門のセクター別動向は11業種中で8業種で増加し、速報値ベースでの前月と一致した。今回最も雇用が増加した業種は16カ月連続で教育・健康、金融、輸送・倉庫が並んだ。一方で、前月に続き専門サービス、娯楽・宿泊が減少したほか、小売も弱まった。

(サービスの主な内訳)

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(出所:Street Insights)

財生産業は前月比3.4万人増、前月の0.7万人減(修正値)からマイナス幅を打ち消した。業種別をみると、建設が同1.9万人増と増加トレンドを維持したほか、製造業と鉱業・伐採もそれぞれ同1.0万人増、同0.5万人増と3ヵ月連続で増加した。

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(出所:Street Insights)

チャート:業種別、雇用の増減

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(出所:Street Insights)

〇平均時給

平均時給は前月比0.3%上昇の35.93ド ル(約5,280円)と市場予想と一致前月の0.4%(0.5%から下方修正)を下回った。2021年2月以降の上昇トレンドを維持した。前年同月比は4.0%と市場予想の4.1%を下回ったが、前月の3.9%(4.1%から下方修正)は超えた生産部門・非管理職の前年同月比は4.1%と、3カ月ぶりの強い伸びだった。

チャート:平均時給、全米と生産部門・非管理職部門は前月を上回る

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(出所:Street Insights)

〇週当たり労働時間

週当たりの平均労働時間は前月と一致し34.1時間だったが、市場予想の34.2時間を下回ったパートタイムや複数の職を持つ者が増加するなか(後述)、2006年以来の最長を記録した2021年1月の35時間を下回り続けたままだ。財部門(製造業、鉱業、建設)は39.7時間と、5カ月転属で2024年1月以来の低水準。コロナ禍で最長となった2022年2月の40.3時間以下が続く。全体の労働者の約7割を占める民間サービスで33.1時間と、2020年3月以来の低水準だった2006年以降で最長を記録した2021年5月の33.9時間以下のトレンドを保つ。

チャート:週当たり平均労働時間、低迷継続

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(出所:Street Insights)

〇総労働投入時間、民間の総賃金

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は就労者数の伸びが前月を上回ったため、前月比0.1%増とプラスに転じた。

民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)は前月比0.4%増と、雇用の伸びの増加を追い風に前月の0.2%増を上回った。しかし、前年同月比は4.6%増と2021年3月以来の低水準近くに押し返された。3カ月平均は4.7%増と、5カ月ぶりの低い伸びだった。

チャート:民間部門の総賃金、前年比は伸び鈍化

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(出所:Street Insights)

〇失業率、労働参加率、就業率、不完全就業率、長期失業者

失業率は4.1%と市場予想と前月の4.0%を上回った労働参加率が62.4%と2023年1月以来の水準へ低下したにもかかわらず、失業率が上昇した格好だ。

自発的離職者数は91.2万人と、わずかながら増加に反転。ただ、小幅だったため自発的離職者数に占める失業者の割合は前月の13.2%→12.9%へ低下した。足元の自発的離職者数の増加は、アマゾンなど一部企業が週5日の出勤を義務化した影響がありそうだ。

チャート:自発的離職者数、わずかに増加

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(出所:Street Insights)

失職者数(一時的な解雇ではなく再編やM&Aなど会社都合での解雇者、派遣など契約が終了した労働者)は、前月比9.9万人増の250万人と2カ月連続で増加した。失職者数の割合は前月の34.6%→35.2%へ上昇、失業者のシェアで1位を維持した。失職者のうち、完全解雇者が労働人口に占める割合は1.03%と前月の1.00%からわずかに上昇、ただし2021年11月以来の高水準だった2024年11月の1.11%以下が続く。レイオフ(一時解雇)は81.7万人と2カ月連続で減少したが、これは完全解雇者の増加が背景と考えられ、好材料とは言い難い。失業者に占めるレイオフの割合は前月の12.0%→11.5%へ低下した。失業者を押し上げたのは失職者に加え労働市場への再参入者で、前月比8.4万人増の221万人と21年9月以来の高水準だった。新規参入者は同0.3万人増の66,2万人。結果、それぞれのシェアは再参入者が30.7%→31.1%と23年9月以来の高水準となり、新規参入者は前月の9.5%→9.3%へ低下した。

チャート:失業者の割合は失職者が引き続きトップだが、自発的離職者数がレイオフを2カ月連続で上回る

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(出所:Street Insights)

チャート:失職者は前月比で小幅増

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(出所:Street Insights)

チャート:労働人口に占める完全解雇者の割合は前月から小幅低下

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(出所:Street Insights)

チャート:レイオフは前月比で2カ月連続で減少

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(出所:Street Insights)

労働参加率は前述したように前月の62.6%を下回り、62.4%と2023年1月以来の低水準20年2月(63.4%)以来の高水準を回復した2023年11月の62.8%から一段と遠ざかった。

就業率は60.1%→59.9%と3ヵ月ぶりに60%割れを迎えた。

チャート:労働参加率と就業率は改善

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(出所:Street Insights)

経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全雇用率は、前月まで2カ月連続で7.5%を経て8.0%へ急伸し2021年10月以来の高水準だった。

チャート:不完全雇用率、2019年平均を上回る水準を維持

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(出所:Street Insights)

失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は前週に続き10.0週で、2021年12月以来の水準近くを保つ。一方で、27週以上にわたる失業者の割合は20.9%と、9カ月ぶりの低水準改善したものの、失業期間の中央値が高水準を維持するため、長期失業者の割合は職探しを断念した影響で低下した可能性を残す。

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合

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(出所:Street Insights)

〇病気が理由で働けないとする人々

「病気が理由で働けない」とする人々は、前月比14.3万人増の143.4万人と2カ月連続で増加。コロナ前平均の2015‐19年の平均値の93万人だけでなく、コロナ後の平均151,8万人に接近した。一因に、米国で流行するはしかの影響が考えられよう。ブルームバーグが3月7日に報じたところ、米疾病対策センターは米国でのはしか感染は過去1週間で約3割増加したと発表。今回の流行ではすでに2人が死亡したという。

チャート:「病気が理由で働けない」とする人々は2015-19年の平均値を上回る

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(出所:Street Insights)

「悪天候が理由で働けない」とする人々は、前月比14.2万人減の44.9万人と3カ月ぶりに減少した

チャート:「悪天候が理由で働けない」とする人々は3カ月ぶりに減少

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(出所:Street Insights)

〇家計調査の就労者内訳

今回、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就業者数の数字を比較すると、今回はNFPの増加に対し家計調査の就業者数は前月比58.8万人減と、前月の223万人(注:人口推計値の変更を受けたもの)から減少した。

チャート:NFPと家計調査の就業者数、今回は乖離

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(出所:Street Insights)

家計調査の就業者数を雇用形態別でみると、フルタイムが減少したが、パートタイムと複数の職を持つ者が増加した

チャート:フルタイムと複数の職を持つ者は増加、パートタイムは減少

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(出所:Street Insights)

チャート:複数の職を持つ者は2ヵ月連続で過去最多

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(出所:Street Insights)

NFPと家計調査の就業者数の動向の、どちらを信用すべきか悩むところだろう。米労働統計局によれば、NFPを含むCES(他に平均時給、週当たり労働時間が含まれる)は、他指標とコロナ禍を経て同様に回答率が低下してきた。直近のデータをみると、CESは2024年3月に43.5%、雇用動態調査(JOLTS、求人件数などを含む)は33.2%と、それぞれ低水準を保った。失業率や労働参加率などを管轄するCPSは対面と電話での聞き取り調査となるなか、2024年4月に69.7%と、他と比較して高い。こうした違いを踏まえれば、CESの結果よりCPSの方が信頼性が高いように見える、しかし、CESの調査対象は12万2,000以上の会社や政府機関である一方で、CPSは6万世帯に過ぎない。従って、通常は雇用の伸びについてはNFPを扱うCESを重視する傾向が強い。

チャート:雇用関連の調査回答率は低迷

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(出所:Street Insights)

〇起業・閉鎖モデル

NFPを算出する上で、複数の職を持つ者の押し上げのほか、起業・廃業モデルに注目すべきだろう。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙も、2023年7月に同様の記事を配信し、起業・廃業モデルなどを理由に「NFPは労働市場を過大評価している可能性」を取り上げ、筆者以外に疑問視する声の存在を感じさせていた。ただ、足元は労働市場は冷え込みつつある。

今回を振り返ると、起業・閉鎖調整ベース(季節調整前)の雇用増加をみると前月比10.5万人減と、2カ月連続で減少した。今回でいえば、NFPにはマイナスに影響したと言えよう。

チャート:起業・閉鎖調整ベースの雇用増減(季調前)の推移

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(出所:Street Insights)

(カバー写真:Carlton Theatre Group/Flickr)

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