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相互関税発表後の米4月雇用統計・NFPは堅調も、完全失業者の割合上昇

by • May 2, 2025 • Finance, Latest NewsComments Off632

April Jobs Report Shows Hiring Remains Solid But Permanent Job Losers Ticks Up.

米4月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、市場予想を上回りました。失業率は労働参加率が上昇しつつも前月と変わらず、不完全雇用率も2カ月連続で低下。4月2日の相互関税発表、5日の一律関税発動、9日の中国を除く個別の相互関税を90日間停止し関税率を10%へ引き下げるなかでも、堅調な結果と言えるでしょう。

米4月雇用統計の結果を受け、米景気後退懸念が低下しFF先物市場では6月利下げ織り込み度が後退し据え置きに反転。もっとも、年内は3回の予想の予想を維持しています。3月FOMCと同じく、年2回の利下げを予想するエコノミストよりも、トレーダーはややハト派的であることが分かります。

画像:FF先物市場、6月は据え置き予想が再び逆転

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(出所:Fedwatch)

ドル円は堅調な結果を受け買いで反応も長続きせず、一時は144円を割り込み前日の植田総裁会見後の上昇を打ち消しました。その後は買い戻されていますが、東京時間の午前1時45分時点で145円には届いていません。その他、米株高・米債安(利回りは上昇)で反応しています。

5分足チャート:ドル円は買いで反応後、植田総裁会見後の上昇を一時打ち消す動きに

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(出所:TradingView)

今回の雇用統計のポイントは以下の通りで、強弱まちまちの結果となりました。

(労働市場にポジティブ)

・NFPが市場予想を上回る
・労働参加率が改善
・不完全雇用率が2カ月連続で低下
・民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)、前年比の伸び再加速
・就業率は3カ月ぶりに60%を回復
・フルタイムが2カ月連続で増加

(労働市場にネガティブ/ニュートラル)

・NFP、過去2カ月分は下方修正
・平均時給の伸び、前年比で前月と変わらず(インフレ抑制の観点ではポジティブ、購買力の観点でネガティブ)
・週当たり労働時間は伸び悩み継続
・失業率は前月と変わらず
・失業者のうち失職者やレイオフが増加
・完全解雇者の労働力人口の割合が2021年11月以来の水準へ上昇
・長期失業者の割合が上

以下は、今回の雇用統計の詳細。

〇非農業部門就労者数

米4月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比17.7万人増となり、市場予想の13.0万人増を上回った。ただし、前月に22.8万人増→18.5万人増と4.3万人分が下方修正されており、概ね市場予想通りの鈍化を示したと言える。

NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比16.7万人増と市場予想の12.4万人増を上回った。前月の17.0万人増(20.9万人増から下方修正)には届かず。民間サービス業は15.6万人増と、前月の16.1万人増(19.7万人増から下方修正)を下回った。

チャート:NFPは堅調な伸びを維持、失業率は前月と変わらず

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(出所:Street Insights)

2月の1.5万人の下方修正(11.7万人増→10.2万人増)と合わせ、過去2カ月分で5.8万人の下方修正となったこれで、2023年以降では、27回のうち19回目の下方修正(8回は上方修正)となる。

チャート:NFPと修正幅(グレー枠は2023年以降の修正幅)

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(出所:Street Insights)

サービス部門のセクター別動向は11業種中で7業種で増加し、速報値ベースの9業種を下回った。今回最も雇用が増加した業種は18カ月連続で教育・健康で、続いて輸送・倉庫、娯楽・宿泊が並んだ。。一方で、情報が横ばいだったほか、公益とその他サービス、小売はは減少した。

(サービスの主な内訳)

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(出所:Street Insights)

チャート:政府は政府効率化省が連邦政府職員の削減を進めるも、州・地方政府が下支え

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(出所:Street Insights)

財生産業は前月比1.1万人増、前月の0.9万人増(修正値)に続き増加した。業種別をみると、建設が同1.1万人増と3カ月連続で増加、鉱業・伐採も0.1万人増と小幅ながら2カ月連続で増加した。しかし、製造業は0.2万人減と減少に転じた。

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(出所:Street Insights)

チャート:業種別、雇用の増減

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(出所:Street Insights)

〇平均時給

平均時給は前月比0.2%上昇の36.06ド ル(約5,190円)と市場予想と前月の0.3%を下回った2021年2月以降の上昇トレンドを維持した。前年同月比は3.8%と前月と一致し、市場予想の3.9%以下に終わった。生産部門・非管理職の前年同月比は4.1%、2021年5月以来の4%割れを迎えた前月から再加速した。

チャート:全米と生産労働者・非管理職の平均時給は、まちまち

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(出所:Street Insights)

〇週当たり労働時間

週当たりの平均労働時間は34.3時間と前月と変わらず、市場予想の34.2時間を超えた。財部門(製造業、鉱業、建設)は39.7時間と、9カ月ぶりの水準を回復した前月の40時間から短縮。前月の労働時間の伸びは、トランプ関税を控えた駆け込み需要が一因の可能性を残す。コロナ禍で最長となった2022年2月の40.3時間以下を保った。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは3カ月連続で33.2時間と、2020年3月以来の低水準だった1月の水準を上回った2006年以降で最長を記録した2021年5月の33.9時間以下のトレンドを保つ。

チャート:週当たり平均労働時間、4月は伸び悩み傾向続く

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(出所:Street Insights)

〇総労働投入時間、民間の総賃金

総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は就労者数の伸びが前月を上回ったため、前月比0.2%増と2カ月連続でプラスだった。

民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)は前月比0.2%増、前月の0.7%増を下回った。前月比では鈍化を示すも、前年同月比は5.3%増と2024年3月以来の強い伸びとなった。3カ月平均は4.9%増と、前月の4.7%増を上回った。前年同月比の伸びは、週当たり労働時間が上回ったことが影響したと考えられる。

チャート:民間部門の総賃金、前年比は伸び鈍化

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(出所:Street Insights)

〇失業率、労働参加率、就業率、不完全就業率、長期失業者

失業率は4.2%と市場予想と前月と一致し、2024年12月の水準を保った労働参加率が62.6%と3カ月ぶりの水準へ回復するなかでも、失業率は前月と変わらなかった。

自発的離職者数は85.5万人と、5カ月ぶりの低水準。自発的離職者数に占める失業者の割合は前月の12.3%→11.8%と6カ月ぶりに12%を割り込んだ。労働市場の減速を受けて、転職希望者が減少した可能性を示す。

チャート:自発的離職者数、2カ月連続で減少

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(出所:Street Insights)

失職者数(一時的な解雇ではなく再編やM&Aなど会社都合での解雇者、派遣など契約が終了した労働者)は、前月比3.4%増の258.7万人だった。失職者数の割合は前月の35.3%→35.7%と5カ月ぶりの水準へ上昇、失業者のシェアで1位を維持した。失職者のうち、完全解雇者が労働人口に占める割合は前月の1.06%→1.12%と2021年11月以来の高水準となった。レイオフ(一時解雇)は86.5万人と4カ月ぶりに増加した。失業者に占めるレイオフの割合は前月の11.4%→11.9%へ上昇した。再参入者は前月比6.0万人増の223.6万人と、4カ月間で3回目の増加に。新規参入者は、同3.8万人減の70.1万人だった。結果、それぞれのシェアは再参入者が前月の30.7%→30.9%へ上昇した一方で、新規参入者が前月の10.4%→9.3%へ低下した。

チャート:失業者の割合は失職者が引き続きトップ、4月はレイオフも上昇

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(出所:Street Insights)

チャート:失職者は2022年以降で2番目の高水準

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(出所:Street Insights)

チャート:労働人口に占める完全解雇者の割合、2021年11月以来の高水準

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(出所:Street Insights)

チャート:レイオフは前月比で4カ月ぶりに増加

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(出所:Street Insights)

労働参加率は前述したようにと前月の62.5%→62.6%と3カ月ぶりの水準を回復。もっとも、20年2月(63.4%)以来の高水準を回復した2023年11月の62.8%以下が続く。

就業率は前月と変わらず60.0%。過去2カ月は24年11月以来の60%を経て、大台へ戻した。

チャート:労働参加率と就業率、共に上昇

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(出所:Street Insights)

経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全雇用率は、2021年10月以来の高水準だった前月の8.0%から7.9%へ小幅改善した

チャート:不完全雇用率、前月から小幅改善も高止まり

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(出所:Street Insights)

失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は前週の9.8週から10.4週へ延びた。また、27週以上にわたる失業者の割合は9カ月ぶりの低水準だった前月の23.5%と2022年2月以来の水準へ上昇した

チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は上昇

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(出所:Street Insights)

〇病気が理由で働けないとする人々

「病気が理由で働けない」とする人々は、前月比7.6万人減の96.4万人とコロナ前平均の2015‐19年の平均値の93万人に接近した。

チャート:「病気が理由で働けない」とする人々は2015-19年の平均値に接近

(出所:Street Insights)

〇家計調査の就労者内訳

今回、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就業者数の数字を比較すると、今回はNFPの増加と同じく家計調査の就業者数は前月比43.6万人増と増加、前月の20.1万人増に続き2カ月連続で増加した。

チャート:NFPと家計調査の就業者数、今回は増加で一致

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(出所:Street Insights)

家計調査の就業者数を雇用形態別でみると、フルタイムとパートタイムが増加したが、複数の職を持つ者は4カ月ぶりに減少した

チャート:フルタイムと複数の職を持つ者は増加、パートタイムは減少

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(出所:Street Insights)

チャート:複数の職を持つ者は3ヵ月連続で過去最多

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(出所:Street Insights)

NFPと家計調査の就業者数の動向の、どちらを信用すべきか悩むところだろう。米労働統計局によれば、NFPを含むCES(他に平均時給、週当たり労働時間が含まれる)は、他指標とコロナ禍を経て同様に回答率が低下してきた。直近のデータをみると、CESは2024年3月に43.5%、雇用動態調査(JOLTS、求人件数などを含む)は33.2%と、それぞれ低水準を保った。失業率や労働参加率などを管轄するCPSは対面と電話での聞き取り調査となるなか、2024年4月に69.7%と、他と比較して高い。こうした違いを踏まえれば、CESの結果よりCPSの方が信頼性が高いように見える、しかし、CESの調査対象は12万2,000以上の会社や政府機関である一方で、CPSは6万世帯に過ぎない。従って、通常は雇用の伸びについてはNFPを扱うCESを重視する傾向が強い。

チャート:雇用関連の調査回答率は低迷

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(出所:Street Insights)

(カバー写真:WOCinTech Chat/Flickr)

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