US Job Growth Slows as Tariff Concerns Grow.
米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は、市場予想を上回りました。失業率は労働参加率が低下しつつも前月と変わらず、就業率も2022年1月以来の水準へ低下し、NFPより全体的に労働市場の鈍化を確認する内容になっています。
米5月雇用統計の結果を受け、FF先物市場で9月の利下げ織り込み度は前日の74.3%→62.4%へ低下。ただし、12月の追加利下げを含め、年内2回の利下げ予想に傾く状況は変わりません。
画像:9月利下げ開始の織り込み度は低下も、年内2回利下げ予想を維持
(出所:Fedwatch)
ドル円はNFPが市場予想を上回ったため買いで反応。さらに、ナバロ貿易・製造業担当上級顧問が米中間の閣僚協議が1週間以内に行われる見通しを示し、上値を切り上げました。ドル円は日本時間の午前2時24分時点で一時は145.09円と約1週間ぶりの水準を回復しました。その他、米株高・米債安(利回りは上昇)で反応しています。
1分足チャート:ドル円は買いで反応、米中閣僚協議への期待も後押し
今回の雇用統計のポイントは以下の通りで、強弱まちまちの結果となりました。
(労働市場にポジティブ)
・NFPが市場予想を上回る
・平均時給の伸び、市場予想を上回る(インフレ抑制の観点ではポジティブ、購買力の観点でネガティブ)
・民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)、前年比の伸びが堅調
・長期失業者の割合が低下
(労働市場にネガティブ/ニュートラル)
・NFP、過去2カ月分は下方修正
・週当たり労働時間は伸び悩み継続
・労働参加率が低下
・失業率は前月と変わらず
・失業者のうち失職者やレイオフが増加
・完全解雇者の労働力人口の割合が2021年11月以来の高水準を維持
・自発的離職者数が急減、企業の採用抑制を示唆
・就業率は60%割れ、2022年1月以来の低水準
・不完全雇用率が横ばい
・フルタイムと複数の職を持つ者が大幅減
以下は、今回の雇用統計の詳細。
〇非農業部門就労者数
米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比13.9万人増となり、市場予想の13.0万人増を小幅に上回った。ただし、前月が17.7万人増→14.7万人増と3万人分が下方修正されており、市場予想より弱かったと解釈できる。
NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比14.0万人増と市場予想の11万人増を上回った。前月の14.6万人増(16.7万人増から下方修正)にはわずかに届かず。民間サービス業は14.5万人増と、前月の13.2万人増(15.6万人増から下方修正)を上回った。
チャート:NFPは堅調な伸びを維持、失業率は3カ月連続で横ばい
3月の6.5万人の下方修正(18.5万人増→12.0万人増)と合わせ、過去2カ月分で9.5万人の下方修正となった。これで、2023年以降では、28回のうち20回目の下方修正(8回は上方修正)となり、CNBCの名物キャスター、ジム・クレイマー氏は数字への信頼性に疑問符を付けた。
チャート:NFPと修正幅(グレー枠は2023年以降の修正幅)
サービス部門のセクター別動向は11業種中で8業種で増加し、速報値ベースの7業種を上回った。今回最も雇用が増加した業種は19カ月連続で教育・健康で、続いて娯楽・宿泊、金融が並んだ。一方で、政府を始め、専門サービスが減少、小売は2カ月連続でマイナスだった。なお、政府のうち政府効率化省(DOGE)が連邦政府職員の削減を進めるなか、連邦政府は同2.2万人減と、20年11月以来の落ち込みとなった。
(サービスの主な内訳)
チャート:政府は政府効率化省が連邦政府職員の削減を進めた結果、州・地方政府の増加を打ち消し
財生産業は前月比0.5万人減、4カ月ぶりに減少した。業種別をみると、建設が同0.4万人増と4月連続で増加したが、鉱業・伐採が0.1万人減と減少に転じたほか、製造業は0.8万人減と4カ月ぶりに減少した。
チャート:業種別、雇用の増減
〇平均時給
平均時給は前月比0.4%上昇の36.24ド ル(約5,220円)と市場予想と前月の0.2%を上回った。2021年2月以降の上昇トレンドを維持。前年同月比は3.9%と前月(3.8%から上方修正)と一致し、市場予想の3.8%を上回った。生産部門・非管理職の前年同月比は4.0%と前月の4.1%から鈍化、3月は2021年5月以来の4%割れを迎えていた。
チャート:全米と生産労働者・非管理職の平均時給は、まちまち
〇週当たり労働時間
週当たりの平均労働時間は34.3時間と3カ月連続で横ばい、市場予想と一致した。財部門(製造業、鉱業、建設)は39.8時間と、前月(39.7時間から上方修正)と変わらず。コロナ禍で最長となった2022年2月の40.3時間以下を保った。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは前月の33.3時間(33.2時間から上方修正)から、33.2時間へ戻しつつ、2020年3月以来の低水準だった1月の水準を上回った。2006年以降で最長を記録した2021年5月の33.9時間以下のトレンドを保つ。
チャート:週当たり平均労働時間、伸び悩み傾向続く
〇総労働投入時間、民間の総賃金
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は就労者数の伸びが前月を下回ったため、前月比0.1%増と前月を下回るながら3カ月連続でプラスだった。
民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)は、賃金の伸びが加速したため前月比0.5%増と、前月の0.3%増を上回った。前年同月比は5.0%増と、2024年3月以来の強い伸びとなった前月から鈍化。3カ月平均は5.0%増と、前月の4.9%増を上回った。
チャート:民間部門の総賃金、前年比は伸び鈍化
〇失業率、労働参加率、就業率、不完全就業率、長期失業者
失業率は3カ月連続で4.2%と市場予想と前月と一致し、2024年12月の水準を保った。労働参加率が62.4%と3カ月ぶりの水準へ低下したため、失業率は前月比横ばいでも軟調な結果と言えよう。しかし、失業率は5月に四捨五入前で4.244%と4.3%に接近。足元で4カ月連続で上昇しており、夏休み要因で教員がリストラされやすくなる夏を迎え、今年も失業率が上向く公算が大きい。
チャート:失業率
(出所:Street Insights)
自発的離職者数は前月比15.1万人減の70.4万人と、2021年1月以来の低水準。米労働市場の減速を受け企業が採用活動を抑制するなか、転職者が急減していることを示す。自発的離職者数に占める失業者の割合は前月の11.8%→9.8%と2021年5月以来の10%割れを迎えた。
チャート:自発的離職者数、2カ月連続で減少
失職者数(一時的な解雇ではなく再編やM&Aなど会社都合での解雇者、派遣など契約が終了した労働者)は、前月比0.2%減の258.3万人だった。失職者数の割合は前月の35.7%→36.0%と6カ月ぶりの水準へ上昇、失業者のシェアで1位を維持した。失職者のうち、完全解雇者が労働人口に占める割合は前月の1.12%で変わらず。2021年11月以来の高水準を維持した。レイオフ(一時解雇)は87.4万人と2カ月連続で増加した。失業者に占めるレイオフの割合は前月の12.0%→12.2%へ上昇した。再参入者は前月比5.3万人増の228.8万人と、2021年8月以来の高水準。新規参入者は、同3.4万人減の72.5万人と2017年4月以来の水準へ増加した。結果、それぞれのシェアは再参入者が前月の30.8%→31.9%へ上昇した一方で、新規参入者が前月の9.7%→10.1%へ上昇した。
チャート:失業者の割合は失職者が引き続きトップ
チャート:失職者は2022年以降で3番目の高水準
チャート:労働人口に占める完全解雇者の割合、2021年11月以来の高水準を維持
チャート:レイオフは前月比で2カ月連続で増加
労働参加率は前述したようにと前月の62.6%→62.4%と3カ月ぶりの水準に低下した。20年2月(63.4%)以来の高水準を回復した2023年11月の62.8%以下が続く。
就業率は前月まで2カ月連続で60.0%を経て、59.7%と2022年1月以来の水準に低下した。60%乗せは、24年11月以来だった。
チャート:労働参加率と就業率、共に低下
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全雇用率は、前月と同じ気宇7.8%。2月は2021年10月以来の高水準となる8.0%をつけていた。
チャート:不完全雇用率、2カ月連続で変わらず
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は前週の10.4週から9.5週へ短縮した。また、27週以上にわたる失業者の割合は9カ月ぶりの低水準だった2022年2月以来の水準へ上昇した前月の23.5%から20.4%へ低下した。
チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は急低下
〇病気が理由で働けないとする人々
「病気が理由で働けない」とする人々は、前月比ほぼ横ばいの96.1万人とコロナ前平均の2015‐19年の平均値の93万人に接近した。
チャート:「病気が理由で働けない」とする人々は2015-19年の平均値に接近
〇家計調査の就労者内訳
今回、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就業者数の数字を比較すると、家計調査の就業者数は前月比69.6万人減と減少、3カ月ぶりに減少しNFPの13,9万人増の結果と乖離した。
チャート:NFPと家計調査の就業者数、3カ月ぶりに減少しNFPと乖離
家計調査の就業者数を雇用形態別でみると、フルタイムが前月比62.3万人減と3カ月ぶりに減少、複数の職を持つ者も同28.3万人減と2カ月連続で減少した。パートタイムは同3.3万人増と小幅増にとどまった。
チャート:フルタイムと複数の職を持つ者は増加、パートタイムは減少
チャート:複数の職を持つ者は2カ月連続で減少
NFPと家計調査の就業者数の動向の、どちらを信用すべきか悩むところだろう。米労働統計局によれば、NFPを含むCES(他に平均時給、週当たり労働時間が含まれる)は、他指標とコロナ禍を経て同様に回答率が低下してきた。直近のデータをみると、CESは2024年3月に43.5%、雇用動態調査(JOLTS、求人件数などを含む)は33.2%と、それぞれ低水準を保った。失業率や労働参加率などを管轄するCPSは対面と電話での聞き取り調査となるなか、2024年4月に69.7%と、他と比較して高い。こうした違いを踏まえれば、CESの結果よりCPSの方が信頼性が高いように見える、しかし、CESの調査対象は12万2,000以上の会社や政府機関である一方で、CPSは6万世帯に過ぎない。従って、通常は雇用の伸びについてはNFPを扱うCESを重視する傾向が強い。
チャート:雇用関連の調査回答率は低迷
(カバー写真:World Relief Spokane/Flickr)
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