米6月雇用統計、黒人の失業率は急伸し女性の労働参加率は低下

by • July 6, 2025 • Latest News, NY TipsComments Off on 米6月雇用統計、黒人の失業率は急伸し女性の労働参加率は低下4333

Unemployment Surges for Black Men, And Labor Force Participation Rates For Women Declines.

米6月雇用統計は、こちらで紹介しましたようにNFPや失業率、雇用形態別(フルタイムが増加)などを踏まえれば堅調な結果となりました。一方で、やはり労働市場の鈍化は隠しきれません。

ここでは、業種別や賃金動向の他、性別や人種、学歴などではどうなったのかを取り上げます。詳細は、以下の通り。

〇平均時給

平均時給は前月比0.2%上昇の36.30ド ル(約5,260円)と市場予想の0.3%と前月の0.4%を下回った。とはいえ、2021年2月以降の上昇トレンドを維持。前年同月比は3.7%と市場予想と前月の3.8%(3.9%から下方修正)を下回った。生産部門・非管理職の前年同月比も3.9%と前月(4.0%から下方修正)と変わらず、3月と同じく21年5月以来の4%割れを迎えていた。

業種別を前月比でみると、平均時給の伸びが0.2%以上だったのは13業種中で8業種で、前月の速報値ベースの4業種を上回った。就業者が減少した卸売が同0.8%上昇、鉱業・伐採も同0.7%上昇、その他サービスは同0.5%上昇、専門サービスも同0.4%上昇に。平均時給の計算式は「 総給与額 ÷ 総労働時間」であり、総給与額には①給与、②残業代、③ボーナスーーが含まれるが、これら4業種では週当たり労働時間も短縮していた。従って、雇用減はパートタイムや臨時雇用が占めたため、全体の平均が押し上げられたと考えられよう。

その他、金融、建設、情報、小売も平均時給の伸びを上回った。一方で、マイナスとなった業種は速報値ベースで3業種(製造業、教育・健康、公益)となり、前月の3業種(情報、小売、公益)と並んだ。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

チャート:前年比では引き続きインフレ目標値2%超えが目立つ半面、全米の3.7%以下が優勢

〇労働参加率

全米の労働参加率は前月の62.4%→62.3%と22年12月以来の水準に低下。この結果に反し、働き盛りの男性(25~54歳)をみると、全人種の25~34歳を除き、非白人と白人そろって全体的に上昇した。白人は季節調整前の数字となる。

・25~54歳 89.4%、前月は89.2%、24年7月は90.0%と2009年8月の90%乗せ
・25~54歳(白人) 90.3%と8カ月ぶりの水準を回復、前月は90.1%、24年7月は90.7%と2019年3月以来の高水準
・25~34歳 89.6%、前月と変わらず、24年7月は90.3%と2009年8月以来の高水準
・25~34歳(白人) 90.9%と24年7月以来の高水準、前月は90.8%、24年7月は91.3%と19年3月以来の水準に並ぶ

チャート:働き盛りの男性の労働参加

働き盛りの女性はまちまち、25-54歳は横ばい、25-34歳は上昇した。

・25~54歳 77.7%と3カ月連続で変わらず、24年8月は78.4%と1997年のデータ公表以来の最高記録更新、前月は78.1%
・25~34歳 77.3%と22年12月以来の低水準、前月は77.9%、2月は過去最高に並ぶ78.7%

65歳以上の高齢者の労働参加率は、男女ともに低下した。ただし、これらは季節調整前の数字となる。

・男性 22.8%と3カ月ぶりの低水準、前月は22.9%、24年10月は24.5%と20年2月(25.2%)以来の水準を回復
・女性 15.5%と23年6月以来の低水準、前月は15.6%、24年9月は16.8%と2020年2月以来の高水準

チャート:65歳以上の高齢者の労働参加率

労働参加率の若い世代と55歳以上で分けてみると、そろって低下した。

・16~19歳 35.1%と20年8月以来の低水準、前月は36.2%、24年3月は38.2%と2009年6月以来の高水準
・20~24歳 71.0%と9カ月ぶりの低水準、前月は71.3%、24年1月は72.7%と2020年2月以来の高水準
・55歳以上 38.0%と07年1月以来の低水準、前月は38.2%、2020年2月は39.7%

チャート:16~19歳、20~24歳、55歳以上の労働参加率

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率が62.3%へ低下するなか、前月比0.7%増の603.0万人と21年7月以来の600万人に乗せた。男性が働き盛り世代の労働参加率の改善と整合的で同1.3%減の310.6万人と減少した一方、女性は同2.8%増の292.4万人と3カ月ぶりに増加した。ただし、縁辺労働者は2カ月ぶりに男性が女性を上回った。男性の間で職探しが困難な状況を示唆する。

チャート:職を望む非労働力人口

〇男女別の労働参加率と失業率

男女別の労働参加率は、まちまち。男性は前月の67.8%と3月以来の低水準を維持した一方、女性は57.0%と22年12月以来の57%割れが迫った。

チャート:男女別の労働参加率

男女の失業率は労働参加率につれ、まちまち男性は労働参加率が前月と横ばいだったため、失業率は4.3%で変わらず女性は労働参加率が低下した結果、失業率は前月の4.2%→3.9%と24年9月以来の4%割れを迎えた。なお、女性は2023年1月に3.3%と1952年9月以来の低水準を記録していた。

チャート:男女別の失業率

〇人種・男女別の就業者、20年2月比

人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、男女で明暗が分かれた。男性は黒人とヒスパニック系ので伸びが拡大し、白人は下げ幅を縮小。しかし、女性は黒人とヒスパニック系の伸びが縮小、白人女性は下げ幅を拡大した。なお、全て季節調整前の数字である点に留意しておきたい。

チャート:男女別の就業者数の20年2月との比較

人種別の週当たり賃金は2023年5月時点で以下の通りで、ヒスパニック系が762.8ドルと最低、次いで黒人が791.02ドル、白人は1,046.52ドルとなる。アジア系が最も高く1,169ドル。

チャート:実質ベースのフルタイム従業員の週当たり賃金、ヒスパニック系が最も低い

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。なお、正確にヒスパニック系は中米・中南米系出身者を指し、民族であって人種にカテゴリーにあてはまらないが、便宜上、人種別とする。

人種別の労働参加率は、2カ月連続で全て低下。特にヒスパニック系が前月比0.4ポイント低下し、最も顕著となった。また、白人の労働参加率は22年11月以来、黒人の労働参加率も22年1月以来の62%割れを迎えた。なお、データはアジア系を除き全て季節調整済みとなる。

・白人 61.9%と22年11月以来の62%割れ、前月は62.3%、なお2023年8月は62.5%と2020年3月(62.6%)以来の高水準、2020年2月は63.2%
・黒人 61.9%と22年1月以来の62%割れ、前月は62.0%、なお2023年3月は64.0%と2008年8月の高水準に並ぶ
・ヒスパニック系 66.8%と5カ月ぶりの低水準、前月は67.2%、24年8月は67.8%と2020年2月の水準に並ぶ
・アジア系 655%と4カ月ぶりの低水準、前月は65.9%、2020年2月は64.5%
・全米 62.3%と22年12月以来の水準に低下、前月は62.4%、なお2023年11月は62.8%と2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ

チャート:人種別の労働参加率

人種・男性別の労働参加率は、まちまち。黒人は上昇、ヒスパニック系は低下、白人は横ばいだった。

・白人 69.6%、前月は69.6%、2020年2月は71.7%
・黒人 68.8%、前月は68.5%と3カ月ぶりの低水準、なお23年3月は70.3%と2010年3月(70.4%)以来の高水準
・ヒスパニック系 79.2%と3カ月ぶりの低水準、前月は79.3%、24年6月は80.5%と2020年2月(80.9%)以来の高水準

チャート:人種別、男性の労働参加率

人種・女性別の労働参加率はまちまち。白人は横ばい、黒人とヒスパニック系は低下した。

・白人 57.6%と前月と変わらず年初来で最低を維持、前月は57.6%、24年8月は58.0%と2020年2月以来の高水準(58.3%)
・黒人 60.9%と3カ月ぶりの低水準、前月は61.7%、2023年4月は63.9%と2009年7月(64.0%)以来の高水準
・ヒスパニック系 61.3%と24年6月以来の低水準、前月は62.2%、24年8月は62.6%と1976年6月からのデータ公表以来で最高

チャート:人種別、女性の労働参加率

人種別の失業率は、労働参加率につれ黒人以外は低下した。ただし、黒人のみ22年1月以来の水準へ急伸した。

・白人 3.6%と5カ月ぶりの低水準、前月は3.8%と21年10月以来の高水準に並ぶ、24年11月は3.8%と2021年10月以来の高水準、なお2022年12月は3.0%と2020年2月(3.0%)に並ぶ
・黒人 6.8%と22年1月以来の高水準、前月は6.0%、24年11月は6.4%と2022年8月以来の高水準、23年4月は4.8%と過去最低
・ヒスパニック系 4.8%と5カ月ぶりの低水準、前月は5.1%、なお2022年9月は3.9%とデータが公表された1973年以来の低水準
・アジア系 3.5%、前月は3.6%と4カ月ぶりの水準へ上昇、お2023年7月は2.3%と2019年6月(2.0%)以来の低水準
・全米 4.1%と4カ月ぶりの水準へ低下、前月まで3カ月連続で4.2%、24年7月は4.3%と2021年10月以来の高水準、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準

チャート:人種別の失業率

人種・男女別の失業率は、労働参加率が横ばいあるいは低下に合わせ、黒人男性を除き前月を下回った。ただし、労働参加率が上昇した黒人男性のみ、前月比1.7ポイントも急伸した。

・白人男性 3.4%と3カ月ぶりの低水準、前月は3.6%、なお2022年12月は2.8%と20年2月以来の低水準
・白人女性 3.1%と24年9月以来の低水準、前月まで3カ月連続で3.3%、なお23年6月は2.6%で過去最低
・黒人男性 6.9%と5カ月ぶりの高水準、前月は5.2%と8カ月ぶりの低水準、なお23年12月は4.6%と2023年4月につけた過去最低に並ぶ
・黒人女性 5.8%、前月は6.2%と22年2月以来の高水準、なお23年2月は3.4%と20年2月以来の低水準
・ヒスパニック系男性 4.1%と5カ月ぶりの低水準、前月は4.5%、なお22年9月は3.0%と2019年11月以来の低水準
・ヒスパニック系女性 4.5%と5カ月ぶりの低水準、前月は5.0%、なお23年5月は3.5%と過去最低

チャート:人種・男女別の失業率

白人と黒人の失業率格差は拡大。白人の失業率が低下した一方で、黒人の失業率が上昇したため、失業率格差は前月の2.2ポイント→2.8ポイントへ拡大し、2019年平均に並んだ。

チャート:白人と黒人の失業率格差

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、高卒と短大卒で上昇し、中卒と大卒以上で低下した。

・中卒 46.2%と24年5月以来の低水準、前月は46.6%、24年7月は48.9%と1992年にデータが公表されて以来で最高
・高卒 57.1%と5カ月ぶりの水準を回復、前月は56.6%、なお2023年11月は57.3%と2020年2月(58.3%)以来の高水準
・短大卒 62.9%と5カ月ぶりの水準を回復、前月は62.8%、24年8月は63.5%と2023年3月以来の高水準、2020年2月は64.8%
・大卒以上 72.0%と3カ月ぶりの低水準、前月は72.3%、24年8月は73%と2023年9月以来の高水準を維持、なお2023年8-9月は73.5%と2020年1月(73.7%)以来の高水準に並ぶ
・全米 62.3%と22年12月以来の低水準、前月は62.6%、なお2023年11月は62.8%と2020年2月(63.3%)以来の高水準に並ぶ

学歴別の失業率は中卒と大学院卒を除き低下した。

・中卒以下 5.8%、前月は5.5%、24年8月は7.1%と2021年以来の高水準に並ぶ、なお22年10月は4.4%と1992年のデータ公表開始以来で最低
・高卒 4.0%、前月は4.5%と4カ月ぶりの水準へ戻す、24年7月は4.6%と2022年1月以来の高水準に並ぶ、なお23年7月は3.3%と2000年4月以来の低水準に並ぶ
・短大卒 3.2%と24年5月以来の低水準、前月は3.3%、23年11月は2.8%と19年12月以来の低水準
・大卒 2.5%、前月は2.6%と21年10月以来の高水準、なお22年9月は1.8%と07年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒 2.7%と3カ月ぶりの水準へ上昇、前月は2.4%、なお21年12月は1.2%と2000年4月の低水準に並ぶ
・全米 4.1%と4カ月ぶりの低水準、前月まで3カ月連続で4.2%、24年7月は4.3%と2021年10月以来の高水準、なお2023年1月と4月は3.4%と1969年5月以来の低水準

チャート:学歴別の失業率

チャート:大卒以上の労働参加率、労働参加率は2カ月連続で低下したが大学院卒の失業率は2カ月連続で上昇

2024年の米大統領選でトランプ氏が勝利した理由は、不法入国者を含めた移民の急増だった。米議会予算局やサンフランシスコ連銀など、多くが移民の急増をめぐる影響を分析するように、足元の米労働市場にも大きな変化をもたらしている。そこで、海外生まれ(不法移民を含む)と米国生まれの雇用動向を確認してみた。

労働力人口(以下、全て季節調整前の数字)にうち、米国生まれは121.6万人増(前月は13.6万人減)と大幅増に転じたが、海外生まれは13.4万人減(前月は29.8万人減)と3カ月連続で減少した。一因に、トランプ政権下での不法移民取り締まりの強化が挙げられ、カリフォルニア州ロサンゼルスを起点に抗議活動が広がったことが思い出される。

チャート:米労働力人口(季節調整前)、米国生まれと海外生まれの比較

労働参加率は、そろって上昇米国生まれは労働力人口の増加に合わせ前月の61.4%→61.8%と24年12月以来の高水準となった。海外生まれも24年1月以来の66%割れへ低下した前月の65.9%→66.3%へ改善。全米の労働参加率は62.3%と22年12月以来の低水準だったが、これらは季節調整前の数字である点に留意していただきたい。なお、海外生まれは就労ビザを取得して入国した者が多いほか、家族に頼れない事情もあり、労働参加率で米国生まれを上回る傾向が強い。

チャート:労働参加率、米国生まれと海外生まれの違い

就業率は、米国生まれが5カ月ぶりの水準を回復した前月の58.9%→59.1%海外生まれも63.7%→63.6%へ上昇した。こちらも季節調整前の数字のため、22年1月以来の低水準を維持した全米の59.7%に反し改善した格好だ。

チャート:米国生まれと海外生まれの就業率

全米の失業率は4.1%と4カ月ぶりの水準へ低下した。労働参加率はそろって上昇したものの、米国生まれの失業率は前月の4.1%→3.9%と4月の水準へ戻した。海外生まれも業率は前月の3.4%→3.1%と23年4月以来の低水準となった。

チャート:米国生まれと海外生まれ、失業率の比較

--今回の雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。

①平均時給は前月比で市場予想超えが優勢、13業種のうち3業種が前月比マイナスと5月と変わらず。賃上げ圧力が緩やかに進む。

②働き盛り世代の男性の労働参加率は、全米の24~35歳以外で改善。景気減速が背景なのか、職探しする男性の増加を示唆。

③男女別では、女性の職探しが困難な状況を示唆し労働参加率は57.0%と22年12月以来の57%割れが迫った。労働市場に縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は21年7月以来の600万人を突破したが、女性で増加し大台乗せに。ただ男性も高止まりし、求職者と求人の間のミスマッチを示唆する。

人種・男女別では労働参加率が上向いた黒人男性で前月比1.7ポイントも急伸。それ以外は労働参加率の横ばいあるいは低下に合わせ、失業率は低下した。黒人男性の失業率の大幅上昇は、パートタイムの雇用が減少したように、企業が採用を絞っている様子を示唆する。

画像:労働参加率と失業率、人種別の動向、グレー枠は労働参加率と失業率が上昇したケース、黄色枠は労働参加率が低下したものの失業率が上昇したケース、薄緑枠は労働参加率と失業率が低下したケース、白枠はいずれにも当てはまらなかったケースを表す。

⑤学歴別では、大卒以上の労働参加率が低下も大学院卒以上の失業率が上昇。ホワイトカラーを始め高賃金職の需要の低下を示唆

⑥季節調整前の数字ながら、労働力人口は米国生まれが増加した一方で、移民が減少。労働力人口の減少は、失業率を押し上げも押し下げもしない中立的水準が移民によって押し上げられた16万人増~20万人増から、従来の6~10万人程度に縮小する可能性を示唆する。

ーー特に⑥の結果を踏まえれば、失業率が上昇するハードルは下がったと言えるでしょう。ただし、大学院卒や黒人男性の失業率の上昇に加え、女性で職探しが困難になっている状況を踏まえれば、必ずしも労働市場は堅調とは言えません。FF先物市場が年内2回の利下げを予想しているのは、このためでしょう。

(カバー写真:WOCinTech Chat/Flickr)

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