January Jobs Report Shows Broad Labor Strength Amid Temporary Distortions.
米1月雇用統計は、非農業部門就労者数(NFP)が市場予想の2倍近い増加を遂げ、失業率も2カ月連続で低下しました。
結果を受け、ドル円は急伸も、米1月雇用統計発表から10分以内に上げ幅を一気に相殺する展開。1月23日にNY連銀のレートチェック観測もあり、再び当局が動いたのではないかとの観測が飛び交ったものです。
チャート:ドル円、2月11日の米雇用統計発表前の22時からのドル円の1分足

(出所:Street Insights)
今回の雇用統計のポイントは以下の通りで、強含みが優勢となりました。ただ、今回は後述するように、トランプ大統領の関税に絡む発言を始め、特殊要因が押し上げた印象もあります。
(労働市場にポジティブ)
・NFPは市場予想超え、13カ月ぶりの強い伸び
・平均時給の伸び、前月比と前年同月比そろって市場予想超え
・民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)、前月比と前年比ともに加速
・失業率が低下
・労働参加率は上昇
・就業率は改善
・不完全雇用率が低下
・フルタイム、パートタイムそろって増加
・長期失業者の割合は低下
(労働市場にネガティブ/ニュートラル)
・NFP、過去2カ月分は下方修正
・完全解雇者の労働力人口の割合が2021年10月以来の高水準近くを維持
以下は、今回の雇用統計の詳細。
〇非農業部門就労者数
米1月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比13.0万人増となり、市場予想の6.6万人増の約2倍の結果となった。13カ月ぶりの強い伸びとなる。前月は5.0万人増→4.8万人増に下方修正された。
NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比17.2万人増と市場予想の7.0万人増を上回った。前月の6.4万人増(3.7万人増から上方修正)も超え、2024年12月以来の高水準。民間サービス業は同13.6万人増と、前月の7.6 万人増(5.8万人増より上方修正)を超えた。

(出所:Street Insights)
チャート:民間就労者数、1月は24年12月以来の高水準

(出所:Street Insights)
過去2カ月分の修正幅は、1.7万人の下方修正となる。
・11月 5.6万人増→4.1万人減、1.5万人の下方修正
・12月 5.0万人増→4.8万人増、0.2万人の下方修正
チャート:NFPと修正幅(グレー枠は2023年以降の修正幅)

(出所:Street Insights)
今回は、年次基準の改定・確報値が発表された。2025年3月までの雇用者数の増加幅は1年間で86.2万人の下方修正(季節調整済み)。季節調整前では87.2万人の下方修正、速報値の91.1万人を下回る。2025年通年では従来の58.4万人増→18.1万人増へ大幅に下方修正された。
チャート:月当たり平均は従来の4.9万人増→1.5万人増に下方修正

(出所:Street Insights)
サービス部門のセクター別動向は11業種中で前月と変わらず、6業種で増加した。今回最も雇用が増加した業種は教育・健康で前月比13.7万人増と集中していた。その他、これまで減少が目立った専門サービスが2位にランクインした。減少した業種は政府のほか、金融、情報などが並んだ。
(サービスの主な内訳)

(出所:Street Insights)
政府は前月比4.2万人減。連邦政府が同3.4万人減と、12カ月連続で減少しただけでなく、州・地方政府も同1.8万人減と3カ月連続で減少した。

財生産業は前月比3.6万人増と、過去5カ月間で2回目の増加となった。業種別をみると、建設が同3.6万人増と2023年6月以来の高水準。この影響として、積雪があったとはいえ、平年を上回る気温で季節調整にゆがみが出たとの説もある。製造業は同0.5万人増と、2024年11月以来のプラスに反転。これも、トランプ大統領の関税引き上げ発言に絡み、在庫積み増しの前倒しとの指摘もある。鉱業・伐採は0.2万人減と、再び減少に転じた。

(出所:Street Insights)
チャート:業種別、雇用の増減

(出所:Street Insights)
〇平均時給
平均時給は前月比0.4%上昇の37.17ドル(約5,670円)で、市場予想0.3%を上回った。前月の0.1%(0.3%から下方修正)も超え、2021年2月以降の上昇トレンドは維持。前年同月比3.7%と前月と一致(3.8%から下方修正)。市場予想と前月の3.6%は上回った。逆に生産部門・非管理職は前年同月比3.8%と、下方修正された前月と一致し21年5月以来の低い伸びとなった。
チャート:全米と生産労働者・非管理職の平均時給、伸び悩み続く

(出所:Street Insights)
〇週当たり労働時間
週当たりの平均労働時間は34.3時間と前月の34.2時間を上回った。前月と反対に、財部門(製造業、鉱業、建設)が39.9時間と、前月の39.7時間を上回り全体を押し上げた。ただし、コロナ禍で最長となった2022年2月の40.3時間以下を保ったままだ。全体の労働者の約7割を占める民間サービスは33.2時間と、9カ月連続で変わらず。2006年以降で最長を記録した2021年5月の33.9時間以下のトレンドを保つ。
チャート:週当たり平均労働時間

(出所:Street Insights)
〇総労働投入時間、民間の総賃金
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間の就労者数の伸びが前月を下回り、週当たり労働時間が低下したため、前月比0.2%減だった。
民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)は、前月比0.8%と2024年2月以来の水準へ急伸。前年同月比は4.8%増、前月の3.7%増を大幅に上回った。3カ月平均も4.3%増と、8カ月ぶりの強い伸びとなる。一因に、トランプ大統領の関税に絡む発言を受けた製造業の影響がありそうだ。
チャート:民間部門の総賃金、前月から加速

(出所:Street Insights)
〇失業率、労働参加率、就業率、不完全就業率、長期失業者
失業率は4.3%と市場予想と前月の4.4%を下回り、2カ月連続で低下した。四捨五入前では4.283%。しかも、労働参加率が62.5%と前月の62.4%から上昇したように、職探しをする人々が増えたにもかかわらず、失業率は改善した。家計調査での就業者が同23.2万人増だった一方で、失業者数が同14.1万人減、就業者数が同52.8万人増だったことも、失業率の低下につながった。
チャート:失業率の四捨五入前の推移

(出所:Street Insights)
自発的離職者数は前月比0.1万人増の86.4万人だった。自発的離職者数に占める失業者の割合は、再参入者などが低下したため、前月の11.1%→13.7%へ小幅に上昇した。
チャート:自発的離職者数の推移

(出所:Street Insights)
失業率が上昇するなか、失職者数(一時的な解雇ではなく再編やM&Aなど会社都合での解雇者、派遣など契約が終了した労働者)は、前月比12.4万人増の266.8万人と、2021年10月以降で2番目の高水準となった。失職者数の割合は他が低下した分、前月の34.0%→35.6%へ上昇、前月に続き1位となった。失職者のうち、完全解雇者(会社都合や非自発的な事情で雇用が終了し、求職活動を開始した失業者)が労働人口に占める割合は1.17%と、2021年10月以来の高水準近くを保った。
一方で、労働市場への再参入者は前月比18.0万人減の215.7万人と、2カ月連続で減少した。結果、再参入者が失業者に占める割合は、前月の31.2%→31.0%へ低下した。新規参入者は同4.8万人減の79.2万人だった。前月比で増加した結果、失業者に占める割合は前月の11.2%→10.8%へ低下した。
レイオフ(一時解雇)は前月比8.3万人減の84.6万人。2024年7月以来の100万人乗せとなった25年11月から減少が続いた。失業者に占めるレイオフの割合は前月の12.4%→11.2%に低下した。
チャート:失業者の割合は失職者トップを維持

(出所:Street Insights)
チャート:失職者数は高止まり

(出所:Street Insights)
チャート:労働人口に占める完全解雇者の割合、2021年10月以来の近くで高止まり

(出所:Street Insights)
チャート:レイオフは2カ月連続で減少

(出所:Street Insights)
労働参加率は前述したように62.5%と、前月の62.4%を上回った。20年2月(63.4%)以来の高水準を回復した2023年11月の62.8%以下が続く。
就業率は59.8%と、前月の59.7%を上回り9カ月ぶりの高水準だった。
チャート:労働参加率、就業率はそろって上昇

(出所:Street Insights)
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全雇用率は8.0%、2021年8月以来の水準へ急伸した2025年11月の8.7%から2カ月連続で低下した。
チャート:不完全雇用率、2カ月連続で低下

(出所:Street Insights)
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は2021年12月の水準に並んだ前週の11.4週から11.2週へ短縮。27週以上にわたる失業者の割合も25%と、2022年2月以来の水準へ上昇した前月の26.0%から低下した。
チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、22年2月以来の高水準

(出所:Street Insights)
〇病気が理由で働けないとする人々
「病気が理由で働けない」とする人々は、前月比16.8万人増の119.7万人へ増加。2025年2月以来の高水準だった。インフルエンザなどが感染拡大を受け、教育・健康のうちヘルスケアの雇用が増加した結果と、整合的だ。これで、3カ月連続でコロナ前平均の2015‐19年の平均値の93万人を上回った。
チャート:「病気が理由で働けない」とする人々は2015-19年の平均値超え

(出所:Street Insights)
〇天候が理由で就業できなかった者
「悪天候が理由で働けない」とする人々は、前月比2.1万人増の23.6万人へ増加。積雪の影響が及んだ一方で、気温は平年を上回り建設など雇用への影響は限定的だった。

(出所:Street Insights)
〇家計調査の就労者内訳
今回、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就業者数の数字を比較すると、家計調査の就業者数は前月比52.8万人増と、NFPの13.0万人増を上回る結果となった。
チャート:NFPと家計調査の就業者数の推移

(出所:Street Insights)
家計調査の就業者数を雇用形態別でみると、フルタイムが前月比58.2万人増となり2025年9月、12月に続き増加。パートタイムも同3.1万人増と、増加に転じた。一方で、複数の職を持つ者は同7.9万人減、年末商戦終了の反動が続いた。
チャート:フルタイム、パートタイムで増加

(出所:Street Insights)
チャート:複数の職を持つ者、1月は2カ月連続で減少

(出所:Street Insights)
なお、NFPで下方修正が続く理由は、回答率の低迷が一因と考えられる。また、回答率の低迷に伴い、業績が堅調で、回答する余裕のある企業の偏りが出るリスクも見込まれ、WSJ紙もその点を問題視していた。米労働統計局によれば、NFPを含むCES(他に平均時給、週当たり労働時間が含まれる)は、コロナ禍を経て他指標と同様に回答率は芳しくない。
今年とコロナ禍直前の結果を比較すると、以下の通り。
・CES(事業所調査、NFPや平均時給など)→25年3月に42.6%、20年2月は59%
・CPS(家計調査、失業率や労働参加率など)→15年4月に68.1%、20年2月は82.3%
・雇用動態調査(JOLTS、求人件数など)→25年3月に35.2%と、20年2月は56.4%
CPSは対面と電話での聞き取り調査により実施され、他と比較して高いとはいえ、それぞれ低迷したままだ。こうした違いを踏まえれば、CESの結果よりCPSの方が信頼性が高いように見える、しかし、CESの調査対象は12万2,000以上の会社や政府機関である一方で、CPSは2025年1月から6万世帯→5.5万世帯へ削減した。従って、通常は雇用の伸びについてはNFPを扱うCESを重視する傾向が強い。
チャート:雇用関連の調査回答率は低迷

(出所:Street Insights)
(カバー写真:Alex Barth/Flickr)
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