NFP Beats Expectations, but Participation Lags.
米4月雇用統計では、非農業部門就労者数(NFP)が市場予想以上に増加しました。一方で、労働参加率が低下したにもかかわらず、失業率は横ばいに。平均時給は前年比で3月の伸びを上回りましたが、落ち着いた動向を示しています。
トランプ政権が4月7日にイランとの停戦合意を発表し、5月1日にイランへの敵対行為終了を議会に通知した結果、最高値を更新する株価が示すように楽観ムードが強まる状況。ただし、労働市場がこの流れに追随して上向くかは別問題です。人工知能(AI)投資拡大に伴うマイクロソフトやメタ、コインベースなどの人員削減が相次いでいるためです。米Q1実質GDP成長率に占めるAI関連の寄与度が約7割を占めたように、AI普及の過渡期においては、雇用が株価や成長率に素直に連動しないシナリオを念頭に置くべきでしょう。
米4月雇用統計の結果を受けて、ドル円は労働参加率の低下にもかかわらず失業率が横ばいだったため、ドル円は売りで反応し一時156.43円まで本日安値を更新。ただし、4月30日、5月1、4、6日の介入らしき動きもあって乱高下したこともあり、その後の売り買いは限られました。
チャート:ドル円、21時からのドル円の5分足

(出所:Street Insights)
今回の雇用統計のポイントは以下の通りで、NFPの好結果に対しまちまちとなった。
(労働市場にポジティブ)
・NFPは市場予想以上に増加
・平均時給の伸び、前月比と前年同月比で市場予想以下も前月超え
・民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)、前月比と前年比ともに加速
・週当たり平均労働時間は前月上回る
・パートタイム、複数の職を持つ者はそろって増加
・長期失業者の割合は低下
(労働市場にネガティブ/ニュートラル)
・NFP、過去2カ月分は合計で下方修正
・失業率は横ばい
・労働参加率は低下
・就業率は低下
・不完全雇用率は上昇
・家計調査の就業者数は4カ月連続で減少
・フルタイムは減少
・完全解雇者の労働力人口の割合、2021年10月以来の高水準から改善
以下は、今回の雇用統計の詳細。
〇非農業部門就労者数
米月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は前月比11.5万人増となり、市場予想の6.5万人増を上回った。前月は17.8万人増→18.5万人増に上方修正され、2024年12月以来の強い伸びとなった。
NFPの内訳をみると、民間就労者数は前月比12.3万人増と市場予想の7.5万人増を上回った。前月の19.0万人増(18.6万人増から上方修正)に届かずとも、2カ月連続で増加。民間サービス業は同11.3万人増と、前月の15.7万人増(14.3万人増より上方修正)以下ながら、堅調なペースを保った。

(出所:Street Insights)
チャート:民間就労者数の増加、4月も堅調なペースに

(出所:Street Insights)
過去2カ月分の修正幅は、1.6万人の下方修正となる。
・2月 13.3万人減→15.6万人減、2.3万人の下方修正
・3月 17.8万人増→18.5万人増、0.7万人の上方修正
チャート:NFPと修正幅(グレー枠は2023年以降の修正幅)

(出所:Street Insights)
サービス部門のセクター別動向は11業種中で8業種で増加、速報値ベースでの前月の6業種を上回った。今回最も雇用が増加した業種は前月に続き教育・健康で、輸送・倉庫、小売、娯楽・宿泊などが続いた。一方で、金融は2カ月連続、政府は連邦政府が押し下げ7カ月連続でマイナスに。情報にいたっては16カ月連続で減少した。
(サービスの主な内訳)

(出所:Street Insights)
チャート:政府は前月比0.8万人減。連邦政府が同0.9万人減と、2カ月連続で減少。州・地方政府は同0.1万人増と2カ月連続で増加も、連邦政府の押し下げを相殺できなかった。

財生産業は前月比1.0万人増と、2カ月連続で増加。業種別をみると、建設が同0.9万人増、鉱業・掘削が同0.3万人増と2カ月連続でプラスだった。しかし、製造業が同0.2万人減とマイナスに転じた。

(出所:Street Insights)
チャート:業種別、雇用の増減

(出所:Street Insights)
〇平均時給
平均時給は前月比0.2%上昇の37.41ドル(約5,870円)と伸びは3月と変わらず、市場予想の0.3%を下回った。2021年2月以降の上昇トレンドは維持。前年同月比は3.6%、市場予想の3.8%を下回ったが、前月の3.4%(3.5%から下方修正)を超えた。生産労働者・非管理職も同3.7%と、全米と合わせて21年5月以来の低い伸びだった同3.5%を上回った。ただし、伸び自体は落ち着きを保つ。
チャート:平均時給の前年比は前月を上回る

(出所:Street Insights)
〇週当たり労働時間
週当たりの平均労働時間は34.3時間と、前月の34.2時間を上回った。財部門(製造業、鉱業、建設)が40.1時間と4カ月連続で変わらず。コロナ禍で最長となった2022年2月の40.3時間以下を保ったままだ。ただし、全体の労働者の約7割を占める民間サービスは33.2時間と、1年ぶりの低水準から改善し全米を支えた。2006年以降で最長を記録した2021年5月の33.9時間以下のトレンドを保つ。
チャート:週当たり平均労働時間

(出所:Street Insights)
〇総労働投入時間、民間の総賃金
総労働投入時間(民間雇用者数×週平均労働時間)は民間の就労者数が前月比で堅調な伸びを維持しつつ、週当たり労働時間が延びたため、前月比0.4%増と増加に転じた。
民間部門の総賃金(雇用者数×週平均労働時間×時給)は、前月比0.6%上昇とプラスに転じた。前年同月比は4.0%増と、3カ月ぶりに4%を割り込んだ前月の3.8%を上回った。3カ月平均は4.0%増と、前月の4.3%を上回った。
チャート:民間部門の総賃金、前年比で4%台を回復

(出所:Street Insights)
〇失業率、労働参加率、就業率、不完全就業率、長期失業者
失業率は4.3%と、市場予想と前月の4.3%と一致した。四捨五入前では4.337%。労働参加率が61.8%と前月の61.8%を下回り、職探しをする人々が減少した可能性が想定されるものの、四捨五入前では小幅に上昇した。失業者数は同0.1万人と微減だったが、就業者数が同22.6万人減と減少していた。
チャート:失業率の四捨五入前の推移

(出所:Street Insights)
自発的離職者数は前月比10.4万人減の79.4万人だった。前月比で減少に反転。自発的離職者数に占める失業者の割合は、前月の12.4%→11.3%へ低下した。
チャート:自発的離職者数の推移

(出所:Street Insights)
失業率が上昇するなか、失職者数(一時的な解雇ではなく再編やM&Aなど会社都合での解雇者、派遣など契約が終了した労働者)は、前月比6.9万人増の259.5万人と、2025年7月以来の低水準から小幅に増加した。失職者数の割合は前月の34.7%→34.9%へ上昇し、4カ月連続で1位を維持。失職者のうち、完全解雇者(会社都合や非自発的な事情で雇用が終了し、求職活動を開始した失業者)が労働人口に占める割合は1.12%と、2021年10月以来の高水準だった2月の1.19%以下を保った。
新規参入者は前月比9.1万人増の80.5万人だった結果、失業者に占める割合は前月の9.8%→10.8%へ上昇した。労働市場への再参入者は同2.8万人増の228.2万人と、増加に反転。ただし、増加幅が小幅だったため、再参入者が失業者に占める割合は前月の31.0%→30.7%へ低下した。
レイオフ(一時解雇)は前月比4.0万人増の91.7万人。失業者に占めるレイオフの割合は前月の12.1%→12.3%に上昇した。
チャート:失業者の割合は失職者トップを維持

(出所:Street Insights)
チャート:失職者数は小幅増加

(出所:Street Insights)
チャート:労働人口に占める完全解雇者の割合、2021年10月以来の高水準だった2月以下が続く

(出所:Street Insights)
チャート:レイオフは小幅増加

(出所:Street Insights)
労働参加率は前述したように61.8%と、前月の61.9%を下回り、2021年10月以来の水準に低下した。20年2月(63.4%)以来の高水準を回復した23年11月の62.8%以下が続く。
就業率は59.1%と、前月の59.2%を下回り2021年10月以来の低水準だった。
チャート:労働参加率、就業率はそろって2021年以来の低水準

(出所:Street Insights)
経済的要因でパートタイム労働を余儀なくされている者などを含む不完全雇用率は8.2%、前月の8.0%を上回った。パートタイムの雇用の増加と整合的だ(後述)。
チャート:不完全雇用率、2カ月連続で上昇

(出所:Street Insights)
失業者とは、①失職中、②過去4週間に職探しを行なった、③現在、勤務が可能――の3条件を満たす必要がある。失業期間の中央値は2021年12月の水準に並んだ前週の11.5週から11.1週へ短縮した。27週以上にわたる失業者の割合も前月の25.4%→25.3%へ小幅低下。2025年12月は26.0%と、2022年2月以来の水準へ上昇していた。これらの数字を踏まえれば、労働参加率の低下は失業者が職探しを断念し、労働市場から退出している可能性を示す。
チャート:長期失業者が全失業者に占める割合は、22年2月以来の高水準近くを保つ

(出所:Street Insights)
〇病気が理由で働けないとする人々
「病気が理由で働けない」とする人々は、前月比5.6万人減の102.6万人。コロナ前平均の2015‐19年の平均値の93万人に接近しつつある。
チャート:「病気が理由で働けない」とする人々は2015-19年の平均値に接近

(出所:Street Insights)
〇家計調査の就労者内訳
今回、事業所調査(給与台帳ベース、NFPや平均時給、週当たり労働時間など、CES)と家計調査(聞き取り調査ベース、失業率や労働参加率など、CPS)の就業者数の数字を比較すると、家計調査の就業者数は前月比22.6万人減と、NFPの11.5万人増に反し減少した。NFPは2カ月連続で増加も、家計調査の就業者数は4カ月連続で減少し、乖離が続く。
チャート:NFPと家計調査の就業者数の推移

(出所:Street Insights)
家計調査の就業者数を雇用形態別でみると、フルタイムが前月比42.4万人減と過去4カ月間で3回目の減少となった。パートタイムは同12.3万人増と、3カ月ぶりに増加。複数の職を持つ者も同7.7万人増と、2025年9月以来の増加なった。
チャート:フルタイムは減少、パートタイムは増加

(出所:Street Insights)
チャート:複数の職を持つ者、5カ月ぶりに増加

(出所:Street Insights)
なお、NFPで下方修正が続く理由は、回答率の低迷が一因と考えられる。また、回答率の低迷に伴い、業績が堅調で、回答する余裕のある企業の偏りが出るリスクも見込まれ、WSJ紙もその点を問題視していた。米労働統計局によれば、NFPを含むCES(他に平均時給、週当たり労働時間が含まれる)は、コロナ禍を経て他指標と同様に回答率は芳しくない。
今年とコロナ禍直前の結果を比較すると、以下の通り。
・CES(事業所調査、NFPや平均時給など)→25年3月に42.6%、20年2月は59%
・CPS(家計調査、失業率や労働参加率など)→25年4月に68.1%、20年2月は82.3%
・雇用動態調査(JOLTS、求人件数など)→25年3月に35.2%と、20年2月は56.4%
CPSは対面と電話での聞き取り調査により実施され、他と比較して高いとはいえ、それぞれ低迷したままだ。こうした違いを踏まえれば、CESの結果よりCPSの方が信頼性が高いように見える、しかし、CESの調査対象は12万2,000以上の会社や政府機関である一方で、CPSは2025年1月から6万世帯→5.5万世帯へ削減した。従って、通常は雇用の伸びについてはNFPを扱うCESを重視する傾向が強い。なお、連邦政府職員削減の影響か、直近では更新が滞っている。
チャート:雇用関連の調査回答率は低迷

(出所:Street Insights)
(カバー写真:amtec_photos/Flickr)
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