ブラインドから差し込む陽の光で起こされたある日の週末。昨日のパーティーの余韻が残りつつ、しわくちゃのシーツからリモコンへ手を伸ばします。映画チャンネルのボタンを適当に押したとき、ちょうどこの映画が始まったばかりでした。
日本未公開作The Invention of Lying -嘘の発明というタイトルどおり、誰もが正直者あるいは悪く言う言いたい放題で気遣いのカケラもない世界で、しがない映画脚本家が嘘をつくことを思いついたことで巻き起こるコメディを描いています。そこにジェニファー・ガーナー演じる「She’s way out of league=思いっきり高嶺の花」の女性が絡んで、ロマンス風味に仕上がってるんですよ。映画脚本家には、英国で大人気のコメディアンで本作では監督と脚本も務めたリッキー・ジャーベイスが登場します。
どれだけ正直者の世界かと言うと・・・
冒頭のシーン。リッキー演じる映画脚本家マークが、ジェニファー演じるアナの高級アパートへデートのお迎えに上がります。そこで迎えたアナ、マークに対し「You’re early」と言った後で「I was master●●ting」なんてぶっちゃけちゃうんですよ!!!マークもマークで「That… makes me think of your va●●na」。フツーの会話ならありえません!!!
初デート中でもアナが「You know I am goodlooking」とニッコリ微笑んで、マークに自分とどこが釣り合うのかガンガン聞いてきます。こんな会話ありえないんで、眠気マナコだったんですけど、どんどん引き込まれてしまいました。
もちろん初デートはマーク撃沈で終わるのですが、翌日に解雇されたことからアパートまで大家から立ち退き命令が出され、どん底に陥るマーク。失意のなかで銀行へ出かけ有り金を引き出そうとすると、窓口の女性がシステムがダウンしているため口座にある金額を確認できないと申し渡されます。そこで、マークにイナヅマが落ちたんですな。家賃相当額の800ドルが預金高だと伝えると、システムが復旧して預金高わずか300ドルを確認した窓口の女性、正直者の世界なだけに疑うことなくマークに800ドルを手渡すんです。
↓言われたままに現金を差し出す窓口・・・正直者の世界だから、監視カメラの必要がないのですね。
そこから、彼の嘘の世界が始まりました。でも、彼はお金を稼ぐためにカジノを荒らす程度で、基本的に社会に害を与えたりしません。ただ母親の死に立ち会った際にあの世へ導かれる恐怖におびえる母に対し「When people die, everyone has one’s own mansion, you live with everyone you love, you will be young again..」なんて、言ってしまったんです。誰も知らない、死後の幸せな世界を聞きつけた医者と看護婦を通じ、彼はイエス・キリストのごとく有名になった彼は「The Man in the Sky=神様」の存在をピッツァ・ハットの箱を使って説き伏せる羽目になってしまいました。
といっても宗教的な匂いはほとんど感じられず、個人的にはキリスト教を初めとするアンチテーゼが全面に押し出されと思いません。宗教そのもの対する皮肉は、隠し味として用いられるだけです。基本的には、目に見えるだけが真実ではない、と訴えかけてるようです。アナが徐々にマークを通じて外面ではなく心の内面が描く世界に引き込まれながら、「I don’t want to have children with fat, stubby nose」とハッキリ断り続けるシーンに、如実に現れてますね。
そういえば。リッキーと同じイギリス人の偉大な作家オスカー・ワイルドも、著書「嘘の衰退」で
「偉大なる芸術家は、決して物事をあるがままに見ない。もしそうしたなら、芸術家ではなくなってしまうから」
という名言を残しておりました。リッキー、もしかしたら彼の言葉に触発されたのかもしれません。
↓リッキー、若かりし頃は紅顔の美男子だっただけに特別な思い入れがありそう。
本作品はBGMも控えめで、インディーズ映画のごときあっさり映像でした。しかし出演者はキラ星のごとく、ですよ。マークの秘書がサタデーナイト・フィーバー出身のコメディ女優ティナ・フェイ、バーテンダーにオスカー俳優のフィリップ・シーモア・ホフマン、そして80年代の青春スターのロブ・ロウ、さらには酒帯び運転を取り締まる警官にオスカーに2度も候補されたエドワード・ノートンって・・・。贅沢ここに極まれり、です。
↓この顔にピンときたら、911!ならぬエドワードですよ!!!
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