7月の米国青年失業率、統計開始以来で最悪‏

by • September 5, 2010 • NY TipsComments (0)1005

私のお仕事アーカイブ


※仕事向け原稿を時間差で更新したものです。通常の書き込みとは全く異なりますので、あしからず。


~バイアス・アタック増加の裏に、青年の失業率悪化~


バイアス・アタックと呼ばれる人種差別的な攻撃がヒスパニック移民を襲う事件が頻発するように、米国では反移民感情が高まりつつある。回復の足どりがおぼつかない景気動向への不満が、その一因だろう。特に若年層は、移民に対する直接的な攻撃が目立つようになってきた。1624歳代における失業率は7月に19.1%と統計が開始した1948年以来で最悪を記録。将来への不安がくすぶるその裏側で、増加しつつあるのがバイアス・アタックだ。NYではグラウンド・ゼロ近くのモスク建設に反対する市民の声が火を吹き、アフガニスタン滞在経験のある学生がタクシー運転手を襲撃する事件が発生するにいたっている。



1624歳代の就業率も、月間ベースで最低を更新


819日、NY市場に衝撃が走った。米新規失業保険申請件数は814日週、50.0万件(速報値ベース)と20091114日週以来の悪化水準を示現。4週平均でも482500件(速報値ベース)と、130日週以来の48万件乗せを記録した。同時に失業保険の給付期間(26週)を超えた失業者が受ける緊急失業保険プログラム(EUI)継続受給者数も、731日週で475.3万人と前週から26.0万人増となり、オバマ米大統領が722日に署名してから3週連続で大幅な増加となった。新規の失業者および継続失業者の増加というショッキングな内容を反映し、当時ダウ平均は1.4%安も大幅反落した。


失業者のなかでも、特に青年層における失業率は目を見はるものがある。米労働統計局(BLS)によると、7月の1624歳代における失業率は19.1%となり統計が開始した1948年以来で最悪を記録した。7月は卒業したばかりの学生が労働市場にどっと押し寄せる季節的要因から、失業率も上昇する傾向が高い。今年も、同年齢層での労働人口が前月比で240万人も増加し2290万人へ膨らんでいた。とはいえ7月の就業率も48.9%となり、月間ベースでは過去最低を記録。同年代層の就業率が過去最高を遂げた1989年時点から、実に約20%も下回る有様だ。


↓日本でニート問題が深刻化してますが、米国でも若者の失業問題は暗い影を落とします。
My Big Apple




あるドキュメンタリー番組では、ゼネラル・モーターズの工場から解雇通告を受けたミシガン州の40代後半の男性が、10代で母親となった娘を支えるため懸命に職探しを続ける姿を追っていた。この男性、知り合いという知り合いを片っ端からあたり「時給5ドルでいいから、何とか仕事をくれないか」と懇願するほど。切羽詰まった表情は、見ている者の胸にも苦難がひしひしと伝わってきた。家庭を背負う中年層の失業率の悪化も、青年層の雇用のしわ寄せとなっていることだろう。



バイアス・アタックの確信犯は、アフガニスタン在住経験者



若年層の失業率の上昇は、少しずつ米国特有の移民受け入れ文化をもむしばみつつある。比較的、低所得者層が多く住むニューヨークはスタッテン・アイランドを中心に「バイアス・アタック」=差別的攻撃が頻発しつつあることは、既報の通り。しかしバイアス・アタックは最近、NY市内へ舞台を移しつつある。
グラウンド・ゼロでのモスク建設が論争を巻き起こすなか、事件は起こった。日曜から降り続く雨が陰気な影を落とす824日の火曜日の夜。21歳の白人青年マイケル・エンライトは、乗り込んだタクシーの運転手席に掲げられるネーム・プレートをみとめた後、「イスラム教徒なのか?」と確認を取った上でドライバーのアフマド・シャリフ氏の首や腕にナイフで切りつけたのである。


幸いシャリフ氏は命に別状はなく、エンライト容疑者はまもなく逮捕された。しかし、この事件は米国の闇に光を当てることになる。容疑者の年齢もさることながら、彼の経歴がショッキングそのものだったからだ。エンライト容疑者は、「インターセクション・インターナショナル」という異宗教間での対話を促進する団体で約1年にわたって活動を続けてきた。当然ながら同団体は、グラウンド・ゼロ近くのモスク建設にも賛成を表明済み。エンライト容疑者は異文化・異宗教のはざまに立ちながら、米兵の実態に迫るドキュメンタリー・プログラム製作のため、アフガニスタンを訪れていた経歴を持ち合わせていた。バイアス・アタックから最もかけ離れていたはずだったために、今回の事件はリベラルなニューヨーカーの間を中心に衝撃が走った。


↓被害者シャリフ氏の傷、生々しいです・・・。


My Big Apple


ただ事件をきっかけに前週末から行われた募金活動では、被害者に対し3万ドルに及ぶ寄付金が集まった。ニューヨークは今でも、異文化と信仰に寛容であることを証明したかたちだ。全米で広がる保守派の勢力がNYに拡大しつつあるとはいえ、偏見にとらわれないニューヨーク・スタイルを貫くことを切に願うばかりだ。(了)




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