シーフード・レストランでPier 9で食事よりもオリジナル・マティーニと悪魔のトライアングルに酔いしれた後は、週末を満喫するため、BARへ移動です。しかし9アベニュー、これでもかと飲食店が並ぶ割には、レストランが軒を連ねるばかりで、BARは意外に少ないんですね。もちろんレストランに付随するBARが存在しますが、スツールは細身で、席の間も肩が触れ合うほどが多い。もともとひしめく店の数々は小ぶりなサイズが多いので、ゆっくりお酒を飲んでまったりするムードでもなく。私とハイチ系のお友達は、9アベニューから離れることとなりました。
昔32丁目に住んでいた修正でミッドタウンにいると、ついつい南下する癖のある私。この夜も53丁目からテクテク下がっていきます。たまたま曲がった角は、49丁目。タイムズ・スクエアの方向に足を向けますと、金色のあでやかな光が暗い街角を照らしているではありませんか。私、光に吸い寄せられる虫そのままに、まんまと扉を開けてしまいました。
ドアマンにいざなわれて中に入りますと、荘厳華麗なビクトリア朝へタイム・トリップしてしまったかのような錯覚に陥ります。19世紀の英国の雰囲気さながら、貴族が愛した社交場の熱気があなたを包む。ここはLillie’s Victorian Bar & Restaurant でございます。
↓見上げていると首が痛くなること間違いなしの、この高さ!
英国が生んだ歌姫であり女優のリリー・ラングトリーに由来して名づけられたとおり、19世紀の英国の贅を尽くしたこのお店、Bar & Restaurantと打ち捨てるには、あまりに惜しい。古典的な荘重さをそっくり残しながら、百花繚乱の華が咲き乱れた文化を映し出したかのような店内は、見ているだけで飽きません。
↓リリーのうるわしき姿は、メニューの表紙でお確かめ下さい。
それもそのはず。ウェイトレスの方いわく、天井を覆う絵画は、人の手で丹念に描かれたといいます。真偽のほどはいざ知らず、控えめながら誇らしげに語る彼女の顔が代々仕える侍女のように見えてくるから不思議。従業員の背筋が伸びた姿を見るのは、清々しいです。
個人的には化粧室にも手を抜いていなかったことが実にお見事。こんなことを申し上げるのは非常に恐縮ですが、ニューヨーカーの女性のマナー水準が低いのか個人主義の昇華したかたちなのか、オフィスからBARまで、お手洗いは世にも恐ろしい場所なんです。
↓トイレの水の流し方の図解がドアに貼られるほど、痛ましい使い方に私は恐怖症になりそうです。
しかし、こちらは新しくかつトイレでも気品溢れるインテリアなせいか、使う人々の心も引き締めるのですね。もしかして素面で出かけるとけばけばしく大仰に見えるお店かもしれませんが、ヘルズキッチンやタイムズスクエア周辺でBARホッピングする際には、ひと息つく場所に最適でしょう。
↓手を洗うシンクですら、ビクトリア形式にのっとる徹底ぶりに脱帽。
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