The Humble And Honorable Sushi Legend Jiro.
ラジオ日経「北野誠のFXやったるで!」に出演中、MCの北野さんが「今ごろオバマさん、すきやばし次郎で寿司食べ終わるってるで」とおっしゃっていましたが、まさかこんなニュースがブルームバーグのヘッドラインを飾ろうとは・・。
※オバマ米大統領、人生の中で一番おいしい寿司―共同
首脳会談を控え、安倍首相に「シンゾー!」と呼びかけたというオバマさん。大いに舌鼓を打ち、ご満悦で帰途につかれたことは、想像に難くありません。英語の記事では上記のようなコメントは確認できませんでしたが、こちらによるとオバマさんのご希望といいますから、まぁいいではありませんか。
ぎこちなかったお酌の手も、温まったことでしょう。
(出所 : Cabinet Public Relations Office)
雑居ビルのカウンターで肩を並べ、寿司をつまんだお2人・・大国の首脳間での異例な絵に、この方の想像力もとい創造力をインスパイアしたようで、ウィットに富んだフィクションが誕生していましたよ。「ビーフではなく、寿司でもてなした」という下りに、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉で牛肉の関税率が焦点とあってビーフ(不満)ではないというように解釈できて、思わず膝を打ってしまいました。2009年にはバーガー好きとあって神戸ビーフをご所望されたという逸話をもってしても、笑えます。
すし外交の舞台裏はジャーナリスト、専門家にお任せして。
日本に一時帰国した当時、食通であるハイチ系アメリカ人の夫がどうしても「すきやばし次郎」に行きたいとせがんだんです。残念ながら、懐事情やらスケジュールの事情から却下したんですよね。夫はそれでも食い下がらず、「ならば店の前だけでも拝ませてくれ」というワケで、足を振り向けましたよ。
銀座駅に通じる地下階段へ下りてすぐ、紺ののれんに木目の引き扉と見落としそうになるくらい簡素な店こそ、「すきやばし次郎」。憧れの寿司の聖地にたどりついた感動の余り、夫は無意識にソニーRX100-2をポケットから取り出し、夢中で写真を撮影し始めました。
そこで私、青くなってしまったんです。だって英語で「写真はご遠慮下さい」の注意書きが立ってあったんですもの。慌てて止めにかかったものの、店の中の女性も夫に気づき怪訝な顔を投げかけてきた刹那。
あの二郎さんが、店の奥から姿を現したのです。
引き戸のガラス越しにみるミシュラン三ツ星寿司職人は、大正14年生まれの87歳とは思えない溌剌としたお姿。扉越しでも、厳粛な姿勢がひしひし伝わってきましたよ。
小野二郎さんの拝見し写真の消去を求められても仕方がないと腹を括っていたところ、夫がカメラのシャッターから指をはずし小野さんに深々と頭を下げました。
そんな夫の様子をみて、小野さんはどうしたと思いますか?
夫に合わせて、頭を下げて下さったのです。
大正生まれの日本男児な上、半世紀以上も対面商売を続けてきたせいもあって、とっさの反応だったのかもしれません。でも夫と私にとって小野さんのちょっとした素顔を垣間見た瞬間は、映画「二郎は寿司の夢をみる(Jiro Dreams of Sushi)」を鑑賞したときと同じくらいの感慨を覚えました。
でも、写真撮影禁止のマナーは守らなくてはいけませんよね。大変申し訳ありませんでした。
(カバー写真 : Distrify)
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