Pink Elephant Filed For Bankruptcy.
ニューヨークのナイトライフから、ひとつの象徴がまた姿を消しました。
「ピンク・エレファント」といえば、かつては27丁目は西の外れ10アベニューと11アベニューの間に立つホットスポットでした。ポップスターのリアーナと俳優ジョシュ・ハートネットが熱い抱擁を交わした場所としても、知られていますね。「ホーム(Home)」、「マンション(Mansion、後のM2)」、「マーキー(Marquee)」など数多くのクラブが軒を連ねた27丁目から28丁目には平日、週末を問わず人々着飾ったニューヨーカーが競って足を運んでいたものです。しかしツワモノどもが夢の後、他店の運命を追うかのように「ピンク・エレファント」は7月に破産保護を申請しました。
リアーナとジョシュのツーショットも出回りましたっけ。
(出所 : Celebitchy)
モデルやビジネスマンを囲い込みボトル・サービスで利益を挙げて来た同店は、一般男性が集団で入店しようものなら屈強なドアマンの側で顧客を選別するホストに無情にも「テーブルを買うように」と通告される。1テーブルをお買い上げには、キャッシュで軽く1000ドル(10万2000円)はしましたっけ。余計な費用を抑えるべく、男性陣はクラブに向かう女性グループに声を掛け入店をお願いするケースが後を絶ちませんでした。
あの頃、羽振りが良かったグループに欧州系ビジネスマンも挙げられます。クラブのバーカウンターで働くバーメイドだった友人も、当時は「欧州系男性からコーポーレート・カードを差し出されたもの」だったと振り返っていました。ユーロ高の恩恵もあって、多少度を超した「接待」も甘受されていた証左です。日本ならキャバクラ遊びを社費で落としたというところでしょうか。
ところが、リーマン・ショック後に世界は未曾有の危機に陥り様相は一変します。イタリア製スーツを着こなす欧州系男性陣が姿を消し、ニューヨーカーの間で遊び場所はクラブからラウンジへシフト。ビール1本が10ドル(1020円)と敷居の高いナイトクラブから、ロウアー・イースト・サイド(LES)のようなビール1杯6ドル(612円)程度のカジュアルに飲める場所へ移動していきました。ヒップスターはもっぱらマンハッタンには近寄らずウィリアムズバーグでグラスを傾け、最近では20代を中心にお手頃価格の店を求めてハーレムやらクイーンズへ足を運ぶ有様です。
一時期はナイトクラブがひしめいた27丁目は夢の後・・。
(出所 : New York Magazine)
時代の流れに取り残されたと同時に、差別化に失敗した可能性もくすぶります。2010年頃からすでにゴーストタウン化が進行していたクラブ通りで生き残った店は「マーキー」のように顧客層の多様化を図るか、金融危機後に58丁目に誕生した「ラボ(LAVO)」のようにレストラン一体型のエンターテイメントを生み出すなど、新しい手段を講じていました。放っておいても店の前に行列が出来上がった頃とは異なりユニークな戦略で顧客をアピールできなければ、一晩で3万5000ドル(357万円)とも言われる売上を計上できず閉店を余儀なくされてしまう。マドンナ、ジョージ・クルーニーなどA級セレブを顧客リストに抱えながら2009年に27丁目から去った「バンガロー8」のように。
「ピンク・エレファント」の負債は、最大で50万ドル(5100万円)とも言われています。27丁目から2012年に8丁目に引っ越してからの家賃は4000平方フィート(約112坪)で9000ドル(91万8000円)だったそうですが、契約はあと7年残っているそうなので名前を変え別の店をオープンさせる予定だといいます。「ピンク・エレファント」自体もあらためてNY市内の新天地でやり直す予定だそうですが、エイミー・サッコ氏率いるバンガロー8が2012年にミート・パッキング・ディストリクトで「No.8」として生まれ変わったように復活を遂げることができるでしょうか。
(カバー写真 : Emily Raw)
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