Foreign Buyers’ Extravaganza On U.S. Housing Market.
マンハッタンを中心に、ニューヨーク市は不動産業界のディフェンシブたる地位を確立しました。1975年にデフォルトに陥りかけた都市とは、到底考えられません。金融危機後に不動産価格は舞い上がり、ソブリン・ファンドから個人まで海外マネーを惹き付けています。その証拠として全米リアルター協会(NAR)は目覚ましい増加を遂げた米5月中古住宅販売件数の他に、こんなデータを発表。外国人の存在感を見せつけました。
2014年度(2014年4月から2015年3月)において、海外の買い手による住宅購入件数は20万9000件と2013年度の23万2600件から減少しました。しかし、金額ベースになると話は別。1040億ドル(約12兆9000億円)に達し、2009年の390億ドルから約3倍に膨れ上がっています。アメリカ人購入者を含めた中古住宅市場の総額のうち8%を占め、2013年度の7%からジワリ上昇していました。
ローレンス・ユン主席エコノミストは、結果を受けて「外国人の住宅購入件数は恐らくドル高が災いし、約10%減少した」といいます。もっとも「支出額は増加しており、高額な物件に手を伸ばしている」と説明。量より質というわけで、購入件数自体が減少した一因を担いました。
ご想像の通り、1位は中国(台湾、香港を含む)で286億ドル(約3兆5500億円)と断トツ。2位はカナダで112億ドルですから、破竹の勢いで中国マネーが流入していることが分かります。3位はインドで79億ドル、4位はメキシコで49億ドル、5位はイギリスで38億ドルでした。
国別では以下の通り、上位5ヵ国が全体の51%を占める。
(出所:NAR)
ユン氏の指摘どおり、海外の買い手の平均購入価格は49万9600ドル(約6200万円)で、米国平均の25万5600万ドルの約2倍に相当します。中国人の平均額は83万1800ドルといいますから、ここでも他の追随を許さず余裕のトップを飾りました。海外顧客全体のうち現金でのお買い上げは55%に達し、アメリカ人全体の25%の2倍に及びます。
不動産エージェントに対する調査では、海外顧客を持つとの回答が35%に達し前年の28%を上回りました。そのうち46%が居住向けの物件で、20%がレンタル向け、26%が投資物件となっています。州別ではフロリダ州が1位を維持し、取引全体の21%を占めました。2位はカリフォルニア州で16%、3位はテキサス州で8%、4位はアリゾナ州で5%と続きます。中国人顧客が西海岸をご所望する傾向が高いのは、地理的な条件が効いているのでしょう。第3外国語マップとは相反する結果となりました。
ちなみに英国王室は2015年度に入り、国連本部から数ブロック先に建設された超高級ラグジュアリー・コンドミニアム 50 United Nation の一室をお買い上げしました。エリザベス女王の仮住まいであると同時に、未来の王室を担うウィリアム王子ご一家に配慮されたのかもしれません。お眼鏡に適ったのは、著名な建築家でサー(ナイト)の称号を持つノーマン・フォスター氏が手掛けたコンド。女王が選んだ物件の間取りは寝室が3部屋、トイレ・バス付きが3つ、トイレのみを1つ備えています。43階建てのところ英国王室がお買い上げした部屋は18階ですから、恐れ多くも真上に一般人(とはいえ大富豪)が住まうことになるわけですね。
国連本部のほか、イーストリバーからは女王の眼前にクィーンズが広がる。
(出所:Curbed)
お値段は、800万ドル(約9億9200万円)也。同じ間取りならセントラル・パークまで5分の距離にある310 West 52nd Street #PHAで499万5000ドル、トライベッカのご近所で大人気スポットのグリニッジにほど近い443 Greenwich Street #3Gでようやく875万ドルですから、女王にふさわしい価格帯と言えるでしょう。その他、ウィリアム王子ご家族がニューヨークの静養地ハンプトンで夏に滞在用の別荘を物色中との報道も。ドル高一服もあり、英国王室にちょっとしたアメリカ・ブームが起こっているかのようですね。
(カバー写真:NAR)
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