Emmy Awards 2017 : Liberals And Conservatives Laugh For Different Reasons.
エミー賞と言えば、米国ドラマ界のアカデミー賞です。
今年は共和党支持者で知られるコメディアン、スティーブン・コルベアー氏が司会を務めました。歯に衣着せぬジョークが売りのスティーブン、トランプ米大統領にも容赦ありません。
「米大統領と違って、エミー賞では勝者が受賞するからね(Unlike the presidency, Emmys go to the winner of the popular vote.)」
「もしエミー賞を受賞していなら、(トランプ氏が)米大統領選に出馬することはなかっただろう(If he had won an Emmy I bet he wouldn’t have run for president.)」
ちなみに、トランプ氏のリアリティ・ショー”アプレンティス”はエミー賞に3度ノミネートされながらも受賞叶わず、「エミーは八百長だ!(Emmys are rigged)」と不満を漏らしていたことが思い出されます。
コルベアー氏のジョークが冴え渡ったのは、特別ゲストが登場した瞬間でした。どのような手段を使ったのかショーン・スパイサー前報道官が姿を現すと、「今年のエミー賞は、史上最多の視聴者数を記録するだろう!(This will be the largest audience to witness an Emmys, period!)」と米大統領就任式をめぐる言葉をもじって大喝采を浴びたのです。スパイサー氏のモノマネで芸域を広げたメリッサ・マッカーシーを含め、笑いの渦に巻き込みました。
スパイサー氏、エミー賞授賞式ではスマホカメラで撮影される側だったに違いありません。
(出所:USDA)
当意即妙なジョークを駆使したコルベアー氏やスパイサー氏をして、反トランプ派を大いに沸かせたに違いありません。リベラル派寄りメディアが同氏のパンチラインを称賛したのも、むべなるかな。
トランプ支持の右派メディアも、コルベアー氏のジョークに笑いました。もちろん、心からではありません。バノン前首席戦略官率いるブライトバートが格好の例で「的外れもいいところ、トランプ嫌いのエミーの視聴率は過去最低(Total Irrelevance: Trump-Hating Emmys Hit All-Time Ratings Low)」と嘲笑してきたのです。
悲しいかな、同報道はフェイク・ニュースではなくリベラル派も受け入れざるを得ません。ニールセンの調査によると、視聴者数は平均1,140万人でジミー・キンメルが司会を務めた2016年の過去最低である1,130万人とさほど変わらない結果だったのです。世帯視聴率では8.2%相当、昨年の8.4%を下回り過去最低を更新しています。特に18〜49歳のプライム世代が悲惨で、2016年の2.7%から2.5%へ落ち込み文句なしの史上最低を記録。世帯視聴率12.6%を叩き出す国民的スポーツを放映するNBCのサンデー・ナイト・フットボールを裏に抱えるとはいえ、これは痛い。
エミー賞の視聴率は2013〜14年で好調だったものの、2015年から暗黒時代に突入し過去最低の憂き目に遭う状況。日本だけでなく米国でもTV離れが進んでいる状況が伺えます。
ドラマというコンテンツが悪化したのかというと、映画界の不振をよそにドラマ自体は群雄割拠の時代を迎えています。今年のアカデミーで監督賞をはじめ6部門の栄誉に輝いた“ラ・ラ・ランド(La La Land)”のデイミアン・チャゼル氏は、ネットフリックス配信のミュージカル・ドラマ”The Eddy”のメガホンを取ることが決定しました。映画「ソーシャルネットワーク(The Social Network)」でオスカーを受賞したデビッド・フィンチャー監督も政治ドラマ “ハウス・オブ・カード”に続きオスカー女優のシャーリーズ・セロン氏を主役にドラマシリー“Mindhunter”を開始する予定。そのほかクライブ・オーウェンを主演に迎え19世紀を舞台にした病院ドラマ「ザ・ニック」の監督は、映画“トラフィック”でオスカーを獲得していましたよね。
そうはいっても、ドラマを視聴するシステムが劇的に変わったことも事実。シリーズ全作を好きなだけ、一気に視聴できるこの頃、わざわざ何時間も授賞式を眺める気にはなれないのかもしれません。
(カバー写真:PROWEBN-TV/Flickr)
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