Consumer Spending Shows Resilience, Economists Revised Up Q3 GDP Outlook
米8月個人消費支出・所得、米9月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値、各連銀の製造業景況指数をおさらいしていきます。
米8月個人消費支出は前月比0.1%増と、市場予想と一致した。前月の0.3%増に届かなかったとはいえ、17ヵ月連続で増加している。インフレを除く実質ベースでの個人消費は0.1%減と市場予想通りだったが、前月の0.2%増より弱く6ヵ月ぶりに減少した。ハリケーン“ハービー”の影響が及び、弱含んだとみられる。実質ベースでの個人消費は前年比で2.5%増となり、前月の2.6%増を下回り6ヵ月ぶりの低水準。年初来平均の2.8%増に近い水準だった。2015年以降の平均値3.1%増を下回ったままだ。
個人消費の内訳は、前月比で以下の通り。新車販売台数が8月も年率で1,700万台を割り込んだため耐久財が弱かった上、非耐久財はガソリン価格の下落が重石となっている。サービスは堅調な流れを保った。
・モノは0.206%減、前月の0.543%増から転じ過去5ヵ月間で3回目の減少
>耐久財 1.105%減、前月の1.131%増から転じ少なくとも6ヵ月ぶりに減少
>非耐久財 0.269%増、前月の0.234%増から転じ過去5ヵ月間で3回目の増加
・サービス 0.293%増、前月の0.227%増を含め少なくとも11ヵ月連続で増加
米8月個人所得は前月比0.2%増と、市場予想と一致した。前月の0.3%増(0.4%増から下方修正)を下回りつつ、増加トレンドを維持。前年比は2.8%増、実質ベースで1.3%増と、前月の1.2%増を上回り8ヵ月連続で増加した。ただし、2015年からの平均値2.5%増を大きく下回る。可処分所得は0.1%増と、前月の0.2%増を含め2ヵ月連続で増加した。可処分所得の実質、前年同月比では7月に続き1.2%増と、8ヵ月連続で増加。こちらも、2015年からの平均値2.5%以下にとどまる。
貯蓄率は前月に続き3.6%となり、年初来で最低を保つ。なお、2016年12月には3.2%と2007年12月以来の水準まで低下していた。
個人所得、前年比の実質ベースで伸び鈍化は明白。
所得の内訳は、前月比で以下の通り。
・賃金/所得 ±0%増、前月の0.5%増から鈍化(民間が±0%増と前月の0.6%増から減速、サービス部門が0.1%増と前月の0.5%増を下回ったほか、財部門(製造業、鉱業、建設)は0.1%減と直近久々にマイナスに反転)
・不動産収入 0.3%増、前月の0.2%減から改善(農場が2.1%増と2ヵ月連続で増加、非農場は0.2%増と前月の0.2%減から回復)
・家賃収入 0.7%増、前月を含め16ヵ月連続で増加
・資産収入 0.2%増と前月の0.3%増を含め2ヵ月連続で増加(配当が0.2%増、金利収入も0.2%増とそれぞれ2ヵ月連続で増加)
・社会補助 0.1%増、前月の0.3%増を含め増加トレンドを維持
・社会福祉 0.3%増、前月の0.2%増を含め3ヵ月連続で増加(メディケイド=低所得者層向け医療保険が0.3%増と前月の0.4%増を4ヵ月連続で増加、メディケア=高所得者向け医療保険は0.3%増と増加基調を維持、失業保険は1.0%減と3ヵ月ぶりに減少)
個人消費支出(PCE)デフレーターは原油価格が50ドル割れで推移するなか、前月比0.2%上昇し市場予想の0.3%以下にとどまった。前月の0.1%は上回り、5~6月の同±0%から改善した。前年比は1.4%上昇し7月と変わらず、市場予想の1.5%には届かなかった。2012年4月以来の2%乗せを達成した2月の2.1%から減速を続け、2016年9月以来の低水準を保つ。コアPCEデフレーターは前月比0.1%上昇し7月と変わらず、市場予想の0.2%は下回った。コアPCEデフレーターの前年比は1.3%上昇し市場予想並び前月の1.4%に及ばず。2015年11月以来の低水準となった。PCEとコアは米連邦公開市場委員会(FOMC)の目標値「2%」を2012年5月以来下回り続けている。
PCE、コアPCEそろって減速続きに。
――貯蓄率が低い上に所得も伸び悩み、個人消費はインフレ調整済みで鈍化しました。しかし、ハリケーン“ハービー”の影響が色濃くエコノミストからは「当初予想ほど落ち込まなかった」との指摘が聞かれる。バークレイズのマイケル・ゲイピン米主席エコノミストはPCE価格指数が実質での改善を見込んだ上で、米7~9月期GDP予想を従来の2.2%増から「2.3%増」へ上方修正した。
アトランタ地区連銀も、結果を受けて従来の2.1%増から2.3%増へ引き上げた。NY地区連銀は逆に従来の1.6%増から1.5%増へ下方修正。前者がGDPを網羅する経済指標をフォローする一方、後者はあらゆる経済指標からモデルを作って算出するだけに、乖離が生じているものの、今回はどちらに軍配が上がるのでしょうか?
▽米9月ミシガン大信頼感・確報値、見通し指数が足を引っ張り小幅低下
米9月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値は95.1と、市場予想並びに速報値の95.3を下回った。前月の96.8にも届かなかったが、2016年10月以来の低水準だった7月の93.4を超えたレベルを保つ。ハリケーン“ハービー”や“イルマ”の影響を受けながら、米大統領選以降の水準を維持した。内訳をみると、現況指数が2000年11月以来のレベルに達した速報値の113.9から11.7へ下方修正。一方で、見通し指数はわずかながら復興需要が期待されたためか、速報値の83.4から74.4へ上方修正された。
原油先物が50ドル乗せを回復する過程で、1年先インフレ見通しは速報値の2.7%で変わらず、7ヵ月ぶりの高水準に並んだ。5~10年先インフレ見通しは逆に速報値の2.6%から2.5%へ下方修正され、前月値に並ぶ。
ミシガン大学の主席エコノミスト、リチャード・カーティン氏は、今回の結果を受け「ハリケーン“ハービー”や“イルマ”の被災地であるテキサス州やフロリダ州で幅広く回答者を有しているため、多少低下してもおかしくない」と振り返る。全般的には「ハリケーンをはじめ北朝鮮、シャーロッツビル事件などがあった割に消費者信頼感指数は良好」と指摘。年初9ヵ月間の消費者信頼感指数の平均値は「96.2と、2000年以来で最高」だったという。カーティン氏は所得の伸び悩みが支出意欲を抑える可能性を意識しつつ、個人消費の見通しを8月速報値の「2.4%増」から「2.6%増」へ上方修正した。1月時点の2.7%増へ切り返しつつある。
ミシガン大学消費者信頼感、今回は見通し指数が小幅に上方修正。
――米9月ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値はハリケーンにもめげず、高水準を維持しました。税制改革が発表されるとの報道や米株高が支えになったとみられます。米連邦公開市場委員会(FOMC)の資産圧縮決定や金利上昇を経験するなかでのこの数字をみると、消費者は財布の紐をゆるめそうに見えます。ミシガン大学もそれを見込むせいか、カーティン氏は個人消費の見通しを上方修正しました。これで税制改革が進めば、可処分所得が増えて個人消費が刺激されるのか、生温かく見守りたいところです。
▽各連銀の製造業景況指数、9月の動向
5地区連銀が発表する製造業景況指数、9月分が出そろいました。結果は以下の通り。NY連銀が2014年9月以来の水準へ上振れした8月から小幅低下した程度で、ハリケーン“ハービー”が直撃したテキサス州ヒューストンを含むダラス連銀を含め、全て上昇しています。
(作成:My Big Apple NY)
それだけではありません、米8月シカゴ購買部協会景気指数が65.2と、市場予想の58.7を上回りました。2011年以来の高水準だった6月に次ぐ良好な結果となっています。内訳をみると、新規受注と出荷がそれぞれ6.3ポイント上昇、雇用に至っては8.5ポイントも跳ね上がっています。ハリケーンの復興需要を見越しているのか、堅調な米景気のなさる技なのか分かりませんが、少なくともISM製造業景況指数は9月も前月の58.8付近から下振れするリスクは低そうです。
(カバー写真:Michel G/Flickr)
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