U.S. Trade Deficit Narrows To Smallest Since 2016 As Soybean Exports Surge.
米5月貿易収支は430.53億ドルの赤字となり、市場予想の436億ドルを下回った。前月の460.81億ドル(489.56億ドルから修正)から6.6%減少。3ヵ月連続で減少した結果、赤字幅は2016年10月以来の低水準となる。原油関連を除く貿易赤字も384.29億ドルと、前月の412.07億ドル(修正値)を下回り、2017年3月以来の低水準だった。1月に太陽光パネル・洗濯機、3月に鉄鋼・アルミへのセーフガードが発動し、トランプ政権が対中関税措置中国に対しても知財制裁関税を賦課する意志を表明するなかで、輸出が急増。特に大豆が押し上げたほか、民間航空機も支え輸出自体は過去最高を更新、貿易赤字が縮小につながった。
内訳をみると、輸出が1.9%増の2,153.28億ドルと4ヵ月連続で増加し3ヵ月連続で過去最高を更新した。輸入は0.4%増の2,583.81億ドルと3ヵ月ぶりに増加、輸入額は3ヵ月ぶりの高水準だった。
輸出が大幅増加し、貿易赤字は2016年10月以来の低水準。
国内総生産(GDP)の算出に使用されるインフレを除いた実質ベースのモノの赤字は、752.38億ドルだった。前月の774.80億ドル(修正値)を下回り、こちらも2017年3月以来の低水準となる。
当該単月の輸出の内訳をみると、モノは前月比2.6%増と4ヵ月連続で増加した。項目別では食品・飲料が急増、特に大豆が89.6%増と過去2ヵ月の2桁増に続き大幅な伸びを記録している。前月2桁増だったコーンは7.9%増と堅調な伸びを保った。そのほか資本財、消費財、サービスが増加している。
(増加項目)
・食品・飲料 14.1%増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は5.1%増
・資本財 4.4%増、過去5ヵ月間で2回目の減少<前月は3.9%増
・消費財 3.4%増、過去5ヵ月間で4回目の増加>前月は0.4%増
・サービス 3.4%増、10ヵ月連続で増加>前月は0.4%増
(減少項目)
・産業財 2.8%減、過去5ヵ月間で2回目の減少<前月は3.0%増
・自動車 2.6%減、過去5ヵ月間で3回目の減少<前月は1.5%減
輸入の内訳をみると、モノは0.5%増と3ヵ月ぶりに増加した。原油価格が2014年11月以来の高値をたどる過程で、量ベースでのエネルギー関連輸入が1.6%増と過去5ヵ月で4回目の増加を示した。前年比では逆に8.6%減と、減少基調へ戻している。金額ベースでは3ヵ月連続で上昇した。エネルギー製品を除いたモノの輸入は0.6%増と、過去5ヵ月間で2回目の増加に。項目別では資本財や食品・飲料で増加していた。詳細は、以下の通り。
(増加項目)
・資本財 3.6%増、過去5ヵ月間で3回目の増加>前月は0.7%増
・食品・飲料 0.9%増、過去5ヵ月間で2回目の増加>前月は0.5%減
・産業財 ±0%<前月は2.4%増、過去5ヵ月間で3回増加
(減少項目)
・消費財 0.9%減、過去5ヵ月間で4回目の減少>前月は5.1%減
・自動車 1.0%減、過去5ヵ月間で3回目の減少>前月は2.8%減
国別でのモノの貿易収支動向を前月比でみると、中国への赤字は前月比18.7%増の331.87億ドルと、4ヵ月ぶりの水準へ拡大した。日本への赤字は12.6%減の54.92億ドルと縮小に反転。欧州全体への赤字額は8.7%減の162.76億ドルと、3ヵ月ぶりに減少した。対英貿易黒字は過去最高を更新した前月の14.0%減の6.51億ドルと前月に続き黒字が縮小したものの、9ヵ月連続で黒字となった。
主な産油国への貿易収支は、石油関連の輸入量と金額が増加した結果、NAFTA加盟国であるカナダとメキシコで赤字が拡大した。カナダへの貿易収支は前月比86.23%増の15.01億ドルの赤字と4ヵ月ぶりの高水準となり、2ヵ月連続で赤字を計上した。メキシコに対する赤字額は18.8%増の67.15億ドルと前月ら拡大に反転した。一方で、石油輸出国機構(OPEC)への貿易赤字は78.4%減の7.01億ドルと、赤字に転落した年初来で最小にとどまる。OPECのみで赤字が大した一因は、原油の輸入量にある。OPECからの石油関連の輸入量は前月比22.5%減だった半面、カナダは7.5%増、メキシコも5.3%増と前月からそれぞれ増加に転じた。
国別動向の年初来・貿易赤字は、3~4月に続きカナダがトップ10圏外に陥落、3月の13位から16位へランクを下げた。詳細は、以下の通り。以下は、各国ごとの単月の貿易収支動向は以下の通り。
――大豆の輸出急増に反映される通り、トランプ政権の対中制裁関税発動など追加関税措置を警戒し米国の民間企業は中国向けを中心に輸出を拡大させたように見えます。とはいえ対中赤字も5月に大幅増で、これは他品目で中国からの輸入額が増加していたためです。例えばテクノロジー製品の輸入は前月比10.9%増、自動車関連は11.5%増と2桁増でした。対中知財制裁関税発動は7月6日であるため、6月も引き続き対中向けの輸出増・輸入増の流れが続く余地を残します。
その半面、トランプ政権は鉄鋼・アルミ関税をEUやカナダ、メキシコに発動した余波が6月に確認されそうです。メキシコは30億ドルの米国輸入品に15~25%の報復関税発動の決定し、EUは6月22日から28億ユーロ相当の米国輸入品に25%の報復関税を課し、カナダは166億加ドル相当の米輸入品に7月1日から賦課しています。6月にはEU、メキシコの報復関税措置の影響が現れることでしょう。
(カバー写真:Carol Von Canon/Flickr)
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