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10月対米証券投資:米国債保有高で主要国リスト入りしたのはこの国

by • December 18, 2018 • Finance, Latest NewsComments Off2756

This Country Is Now On The List Of The Major Foreign Treasury Holders.

10月対米証券投資は、65億ドルの売り越しとなった。前月の75億ドルを含め、3ヵ月連続での資金流入トレンドにブレーキが掛かった。民間が297億ドル買い越し4ヵ月連続で資金流入させた一方で、海外中銀を含む公的機関は362億ドル売り越し、過去6ヵ月間で5回目の流出に転じた。海外投資家の米国債投資は65億ドルの売り越しと、前月の116億ドルを含め2ヵ月連続で資金流出させている。民間が444億ドル買い越し4ヵ月連続の流入した一方で、海外の公的機関が426億ドルの売り越しと前月の157億ドルに続き資金流出させ、過去7ヵ月間で6回目の流出となった。

期間中、トランプ政権は通商301条を根拠に500億ドルの対中追加関税を発表、7月6日に第1弾として340億ドル、8月23日に第2弾として160億ドル踏み切った。中国も同等の措置を講じるなか、9月には2,000億ドルへ対象品を拡大し10%の課税率で発動。中国も600億ドルの追加的報復措置を取る構えをみせ、米中間で通商上の緊張が高まった。その間、NAFTA再交渉で米国がメキシコと合意するなど、欧州に続き貿易摩擦が後退する場面も。一方で、米決算発表が開始したが、追加関税措置への影響が懸念され米株が急落を開始、米債利回りは上昇が一服した。

国別での米国債保有高トップ5動向は、8~10月と同じ顔触れだった。順位は、9~10月と入れ替わりなし。なおアイルランドは租税回避地として知られ、米国のIT企業や製薬企業などが拠点を置き、海外留保利益を米国債として保有してきた経緯がある。しかし、レパトリ減税が税制改革法案に盛り込まれ、米国証券保有高が減少するか注目だ。

1位 中国 1兆1,389億ドル(2017年5月以来の低水準)、125億ドルの売り越し、5ヵ月連続で流出
2位 日本 1兆185億ドル(2011年10月以来の低水準)、95億ドルの売り越し、3ヵ月連続で流出
3位 ブラジル 3,139億ドル(8月は過去最高)、31億ドルの売り越し、2ヵ月連続で流出
4位 アイルランド 2,873億ドル(2016年11月以来の低水準)、31億ドルの売り越し、2ヵ月連続で流出
5位 英国 2,639億ドル(9月は2011年6月以来の高水準)、124億ドルの売り越し、3ヵ月ぶりに流出

トップ5の米国債保有高の推移。

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(作成:My Big Apple NY)

――中国は米国債を5ヵ月連続で売り越しつつ、16ヵ月連続で保有高トップの座を堅持しました。しかし中国は、9月24日にトランプ政権による追加関税措置(2,000億ドル相当の輸入品に10%)が発動された直後とあって、流出額でトップに立っています。米国債保有高2位の日本は、3ヵ月連続で流出し2011年10月以来の低水準を維持。税制改革法案成立で駐米企業の短期債証券の売却とレパトリが予想されるなか、アイルランドは今回31億ドルの売り越しと流出が続いた結果、米国債保有高は約2年ぶりの水準まで減少しました。

気になる米国債保有高の主要国リスト(300億ドル以上)ですが、10月は前月から1ヵ国増えて32ヵ国でした。9月は危険水域にあったフィリピンが遂に脱落して31ヵ国に下振れしたものの、10月にはイラクが少なくとも年初来で初めてランクインしています。10月と言えばサウジアラビアでカショギ事件が発生したのは10月2日ですが、中東の地政学上のリスクを踏まえた決断なのでしょうか? 中東市場関係者は地政学的リスクより「2014年の油価急落以降、イラクでは事実上新規投資がストップしていたため、浮いた石油収入を米国債の買い付けに回してきた結果なのでは」と分析されていました。こちらの見方が正しければ、原油安によってイラクを始め中東諸国が米国債を取得しなくなるリスクが浮上しないとも限りません。

ちなみに、中東諸国で米国債保有高の主要国リスト入りしている国はサウジアラビア(10位)をはじめ、UAE(22位)、クウェート(23位)、イラク(31位)、イスラエル(32位)。そのうち、最も外貨準備高が低い国はというと・・・イラクではなく、クウェートでした。

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なお、これまで5月にロシア、6月にトルコが外れ、5月に主要国入りしたチリも以降は圏外。8月にイスラエルが入って32ヵ国に増えた後、9月にフィリピンが脱落していました。

(カバー写真:David Stanley/Flickr)

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