Foreign Investors Sold Record Amount Of U.S. Treasury But China Stopped Scaling Back.
12月対米証券投資は、331億ドルの売り越しとなった。前月の321億ドルの買い越しから転じ、3ヵ月ぶりに流出している。海外の資金動向をみると、民間が687億ドル売り越しと6ヵ月ぶりに資金を流出させた。海外中銀を含む公的機関は227億ドル売り越し、少なくとも4ヵ月連続の流出となる。海外投資家の米国債投資は773億ドルの売り越しと、過去最大を記録した。前月の132億ドルを含め4ヵ月連続の資金流出となる。これまで買い越してきた民間が526億ドル売り越し6ヵ月ぶりに流出させたほか、海外の公的機関も247億ドルの売り越しと前月の333億ドルに続き資金流出させ、流出トレンドを保った。
トランプ政権は通商301条を根拠に500億ドルの対中追加関税を発表、2018年7月6日に第1弾として340億ドル、同年8月23日に第2弾として160億ドル踏み切った。中国も同等の措置を講じるなか、同年9月には2,000億ドルへ対象品を拡大し10%の課税率で発動。中国も600億ドルの追加的報復措置を取り、米中間で通商上の緊張が高まった。その間、NAFTA再交渉で米国がメキシコと合意するなど、欧州に続き貿易摩擦が後退する場面も。ただ米中間は同年12月1日の米中首脳会談後に2,000億ドルの対中追加関税措置の課税が10%から25%の引き上げをめぐり90日間の猶予で合意した程度で、未だ妥結の道は不透明だ。一方で、米株安・原油安・米債高(利回り低下)を受けて、2018年12月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)は2019年の利上げ見通しを従来の3回から2回へ変更、下振れリスクを警戒する姿勢を打ち出した。
国別での米国債保有高トップ5動向は、2018年8~11月と同じ顔触れで、順位も同年9~11月と入れ替わりなし。なおアイルランドは租税回避地として知られ、米国のIT企業や製薬企業などが拠点を置き、海外留保利益を米国債として保有してきた経緯がある。しかし、レパトリ減税が税制改革法案に盛り込まれ、米国証券保有高が減少するか注目されていたが、足元では漸減にとどまる。
1位 中国 1兆1,235億ドル(2017年5月以来の低水準から小幅改善)、21億ドルの買い越し、7ヵ月ぶりに流入
2位 日本 1兆1,214億ドル(2011年10月以来の低水準近くを維持)、57億ドルの買い越し、2ヵ月連続で流入
3位 ブラジル 3,031億ドル(2018年8月は過去最高)、83億ドルの売り越し、4ヵ月連続で流出
4位 アイルランド 2,873億ドル(2016年11月以来の低水準近くを維持)、4億ドルの買い越し、4ヵ月ぶりに流入
5位 英国 2,729億ドル(2018年9月は2011年6月以来の高水準)、140億ドルの買い越し、3ヵ月ぶりに流入
トップ5の米国債保有高の推移。
今回の買い越しトップ5ヵ国は、以下の通り。
1位 ノルウェー 376億ドル増の849億ドル
2位 英国 140億ドル増の2,729億ドル
3位 スイス 75億ドル増の2,350億ドル
4位 タイ 71億ドル増の720億ドル
5位 香港 70億ドル増の1,962億ドル
今回の売り越しトップ5ヵ国は、以下の通り。
1位 ドイツ 79億ドル減の698億ドル
2位 シンガポール 77億ドル減の1,211億ドル\
3位 クウェート 26億ドル減の413億ドル
4位 オーストラリア 16億ドル減の397億ドル
5位 スウェーデン 7億ドルの438億ドル
――中国は米国債を7ヵ月ぶりに流入に転じるなか、18ヵ月連続で保有高トップの座を堅持しました。2018年9月24日にトランプ政権による追加関税措置(2,000億ドル相当の輸入品に10%)が発動されてまもなく、流出額で2018年10~11月はトップでしたが、米中首脳会談での90日間猶予での合意を受けて、買い越しを再開させたのでしょうか?米国債保有高2位の日本は2ヵ月連続で流入しつつ、2011年10月以来の低水準近くを維持。翻って、税制改革法案成立で駐米企業の短期債証券の売却とレパトリが予想されるなか、アイルランドは4ヵ月ぶりに買い越しましたが、米国債保有高は約2年ぶりの水準近くを保ちます。
金融市場でリスク・オフの勢いが増した2018年12月、気になる米国債保有高の主要国リスト(300億ドル以上)ですが、今回は前月に続き31ヵ国で、イスラエルが圏外へ転落したままです。
なお、これまで2018年5月にロシア、同6月にトルコが外れ、同5月に主要国入りしたチリも以降は圏外となりました。9月には、フィリピンが脱落。同8月にイスラエルが入って32ヵ国に増えたものの、11月に同国が圏外へ落ち込み、米国債保有高が300億ドルを超える主要国の数は、31ヵ国へ戻しています。
(カバー写真:Michael Pick/Flickr)
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