NYC To Ban Discrimination Against Natural Hair.
自由な小学校生活を過ごした後、中学校に進学して衝撃を受けたのは、その厳格な校則でした。
筆者が通った神戸市立の中学校で、女子の場合①前髪は眉毛の上(いわゆるオンザ眉毛)、②肩につく長さの髪は耳の後ろで、耳上部以下の高さで二つ結び、肩以上の長さは三つ編み、③段カット不可(意味が分からない方も多いかもしれません)、④スカート丈は膝下、⑤靴下は三つ折りで最低2cm幅——などが義務付けられたものです。男子学生は、野球部など関係なく全員が丸坊主でした。もちろん染髪、パーマは禁止。卒業後は、校則が再びゆるくなった高校でたっぷりオシャレを満喫したもので、ルーズソックスもそんなアイテムのひとつです。
翻ってアメリカでは、白人、黒人、ヒスパニック系など多種多様な人種が共存しているために、名門校や特殊な学校でない限り身だしなみに関して校則などあってないようなものだと認識してきました。
しかし、そこはアメリカ。2019年だというのに、ニューヨーク市の人権委員会がこんなガイドラインを提示しました。何と、全米で事実上初めて、髪型への差別禁止に踏み切るというではありませんか。
日本人にはピンとこない話ですよね?
どういうことかと申しますと、黒人差別撤廃の一環なんですよ。これまでは企業、学校、団体、スポーツ競技などで黒人の髪質にフィットした髪型への差別がまかり通っていたため、黒人は白人の髪質に合わせたヘアスタイルを余儀なくされていました。確かに、ウォール街でお見掛けする女性はストレートへア、男性はスッキリ刈り上げたスタイルばかりでしたっけ。しかし、今回のガイドラインは差別撤廃を強化するもので、違反した企業などには最高で25万ドル(2,750万円)の賠償金支払いを命じるといいます。
左からアフロ、ボックス・ブレイズ、ドレッド。
(出所:Twitter)
個人的には、非常に意外でした。金融機関を除けば広告代理店のクリエイターから名門大学の職員、小学校の教員などアフロヘアやドレッドへアの男性、女性と知り合ってきましたので、こんなガイドラインが今さらリリースされるなんて、想定の範囲外だったのです。
しかし、髪型をベースにした差別問題がマンハッタンを始めNY市各地で頻繁に報道され、当局として対策を講じる他なかったようです。例えば、2017年には服飾大手ギャップ傘下のバナナ・リパブリックに勤務していた女性は、白人の女性店長からボックス・ブレイズ(細かな三つ編み)が不適切と申し渡されたとして、同社を提訴しました。2018年12月には、男子高校生がレスリングの試合前にドレッドへアを切り落とした動画が大きな波紋を呼びました。レフリーが、そうしなければ試合を放棄させると通告したためです。
トランプ政権発足以前から、黒人差別をめぐってはNFLのキャパニック選手(当時)が2016年に始めた国歌斉唱時の起立拒否問題などが大きな物議を醸しました。そしていま、トランプ大統領がメキシコ国境間の壁建設で非常事態を宣言するなど、移民差別を連想させる政策を打ち出す裏で、彼のお膝元であるNYでは州政府が非常事態宣言への提訴を進めるほか、同市は髪型を通じた人種差別の廃止を着々と進めます。
(カバー写真:Steven Depolo/Flickr)
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