Ongoing Trade Tensions Push Down Job Openings, Hires, And Separations.
米労働省が発表した米5月雇用動態調査(JOLTS)で求人数は732.2万人と、市場予想の747万人を下回った。前月の737.2万人(744.9万人から下方修正)を0.7%下回り、2ヵ月連続で減少。過去最高だった2018年11月の762.6万人から後退した。求人数自体は15ヵ月連続で失業者数を上回った。
採用数は前月比4.4%減の572.5万人となり、過去最高を更新した前月(599.1万人)以下となった。それでも、高水準を維持している。なお、米5月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は2月以来の10万人割れを迎えた。
離職者数は549.5万人と、統計開始以来で2番目の高水準だった前月を3.4%下回った。年初来で最低となる。定年や自己都合による自発的離職者も、過去最高をつけた前月の351.6万人から3.4%減少。解雇者数も3.8%減の176.0万人と、減少に転じた。
求人率は4月まで2ヵ月連続で4.7%を経て、今回は4.6%だった。過去最高に並んだ1月の4.8%以下が続く。民間が前月通り4.9%となり、鉱業や建設、貿易・輸送・公益、小売りなどが低下した半面、専門サービスや教育・健康が支えた。政府は前月の3.2%から2.9%へ低下した。
採用率は前月に2007年5月以来の4%乗せを果たしたが、今回は3.8%へ低下した。民間が前月の4.4%から4.2%へ低下、特に鉱業、建設、製造業など材部門が弱かったほか、金融や娯楽・宿泊が低下した。政府も前月に続き1.7%だった。
求人数と採用数は減少、米5月雇用統計と整合的。
自発的および引退、解雇などを含めた離職率は3.6%と前月の3.8%から低下し6ヵ月ぶりの低水準だった。民間が前月の3.8%から3.6%へ低下、特に鉱業、製造業、情報、金融、専門サービスなどで低下した。政府は前月通り1.6%だった。自発的離職率は2018年6月以降の流れを受け継ぎ2.3%と、2001年4月以来の高水準だった9月の2.4%以下が続く。解雇率は2ヵ月連続で1.2%、2000年12月に統計が開始してから最低となる2018年3月の1.0%が小幅に遠のいた。
自発的離職者数と解雇者数も減少、離職者数は年初来で最低となる。
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(作成:My Big Apple NY)
――以上の結果を踏まえ、今となっては懐かしいイエレン・ダッシュボードをおさらいしてみましょう。達成項目は前月に続き9項目中6項目。未達項目は2月の大幅鈍化が響くNFPのほか、長期失業者の割合、労働参加率でした。ただ非農業部門就労者数は労働市場逼迫に伴い、鈍化する傾向が強まります。以下は詳細で、()内の最悪時点とは、金融危機以降での最も弱い数字となります。
1)求人率—○
2009年7月(最悪時点) 1.6%
2004-07年平均 3.0%
現時点 4.6%
2)解雇率—○
2009年4月(最悪時点)2.0%
2004-07年平均 1.4%
現時点 1.2%
3)自発的離職率 ○
2010年2月(最悪時点) 1.3%
2004-07年平均 2.3%
現時点 2.3%
4)採用率—○
2009年6月(最悪時点) 2.8%
2004-07年平均 3.8%
現時時点 3.8%
5)非農業部門就労者数—×
2009年3月までの3ヵ月平均(最悪時点) 82.6万人減
2004-07年の3ヵ月平均 22.4万人増
現時点の3ヵ月平均 17.1万人増
6)失業率—○
2009年10月(最悪時点) 10%
2004-07年平均 5.0%
現時点 3.7%
7)不完全失業率—○
2010年4月(最悪時点) 17.2%
2004-07年平均 8.8%
現時点 7.2%
8)長期失業者の割合—×
2010年4月(最悪時点) 45.3%
2004-07年平均 19.1%
現時点 22.4%
9)労働参加率—×
2015年9月(最悪時点) 62.3%
2004-07年平均 66.1%
現時点 62.8%
有効求人倍率は求人数と採用数が減少し失業者が増加したため、低下。
(作成:My Big Apple NY)
――米5月雇用動態調査は芳しくない結果でしたが、米中貿易摩擦の激化を嫌気した動きだった可能性があります。5月6日にトランプ大統領が中国製品約2,000億ドルの関税率を10%から25%へ引き上げる方針のほか、同13日には約3,000億ドルの同製品への追加関税措置の検討開始を発表。さらに20日には、通信機器大手ファーウェイに対する禁輸措置に踏み切っていました。幸い6月29日の米中首脳会談で最悪の事態を回避し、それ以前にはFedの利下げ示唆も手伝ってセンチメントは好転、米6月雇用統計はNFPが20万人台を回復したものです。従って6月は改善する見通しで、今回の結果は労働市場のネガティブな変化を表わしたものではないでしょう。
(カバー写真:U.S. Army Garrison – Miami/Flickr)
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