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米4月個人消費支出は急減も、所得と貯蓄率は経済活動再開を下支えへ

by • June 4, 2020 • Finance, Latest NewsComments Off1679

Forget About Record Decline In Personal Spending, Embrace Personal Income Growth And Saving Rate.

米4月個人消費支出は過去最大の減少率を記録した半面、個人所得は景気刺激策に盛り込まれた①1人当たり1,200ドルの支給、②州政府による失業保険に対し連邦政府から支給額上乗せ――などが影響し、所得と貯蓄率が記録的な拡大を遂げた。詳細は以下の通り。

〇個人消費支出
→外出禁止措置が影響し、新車販売台数が4月に860万台に落ち込んだ影響が現れたほか、美容院やサロンなどの閉鎖もあってそろって大幅に減少。ガソリン価格の下落により、非耐久財も弱かった。

前月比13.6%減市場予想の12.9%減より悪化し過去最悪
・前年比16.9%減と2ヵ月連続で減少、前月の3.1%減を超え過去最大の減少率
インフレを除く実質ベースでの個人消費は前月比13.2%減、前月の4.4%減から悪化し過去最悪
・前年比では17.3%減と2ヵ月連続で減少、前月の4.4%減から一段と弱まり過去最悪

個人消費支出の内訳
・財 16.493%減、3ヵ月連続で減少<前月は1.561%減
耐久財 17.272%減、3ヵ月連続で減少<前月は12.146%減
非耐久財 16.156%減、過去3ヵ月で2回目の減少<前月は3.853%増
・サービス 12.242%減、2ヵ月連続で減少<12.242%減

〇個人所得
景気刺激策の影響で所得が大幅に拡大した。

前月比10.5%増、市場予想の0.5%減と前月の2.2%減に反し過去最大の伸び
・前年比では11.7%増と、前月の1.4%増を超え1981年9月以来で最大。
・実質ベースでは前月比11.0%増、前月の1.9%減から転じ過去最大の伸び
・前年比は11.1%増、前月の0.1%増を超え過去最大の伸び

所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。

・賃金/所得 8.0%減と2ヵ月連続で減少(民間が8.9%減、サービス部門は8.4%減、財部門(製造業、鉱業、建設)は11.3%減とそろって2ヵ月連続で減少)
・経営者収入 0.6%増、前月は1.4%減(農場が11.6%減と2ヵ月連続で減少、非農場は0.8%増と4ヵ月連続で増加)
・家賃収入 0.5%増と4ヵ月連続で増加、前月は0.6%増
・資産収入 0.4%増、前月は1.0%増(配当が1.1%増と2ヵ月連続で増加、金利収入は0.1%減と3ヵ月ぶりに減少)
・社会補助 89.6%増と4ヵ月連続で増加、前月の2.1%増から急増
・社会福祉 91.1%増と4ヵ月連続で増加、前月の2.2%増から急増(メディケア=高所得者向け医療保険は0.5%増と増加基調を維持、メディケイド=低所得者層向け医療保険は5.7%増と2ヵ月連続で増加、失業保険は518.0%増と前月の165.6%増に続き景気刺激策を背景に急増、退役軍人向けは0.3%増と増加基調を維持、その他は491.0%増

〇可処分所得
・前月比12.9%増、前月の2.1%減から転じ過去最大の伸び
・前年比は14.4%増、前月の1.6%増を超え過去最大の伸び
・実質ベースの可処分所得は前月比13.4%増となり、前月の1.8%減から反転し過去最大の伸び
・前年比は13.8%増、前月の0.3%増を超え過去最大の伸び

〇貯蓄率
・個人所得の急増に反し個人消費が減少した結果、貯蓄率は33%と過去最高を更新

チャート:所得の伸びが消費を上回り、貯蓄率は9ヵ月ぶり8%乗せに接近。

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(作成:My Big Apple NY)

〇個人消費支出(PCE)デフレーター
→油価が4月に一時40ドル台までマイナスが進んだ影響で、全体的に減速。

PCEデフレーターは前月比0.5%低下、市場予想の0.6%の低下ほど悪化せず、前月の0.2%(0.3%から上方修正)と合わせ2ヵ月連続でマイナス、2015年1月以来の最大の落ち込み
・前年比は0.5%上昇、市場予想と一致も前月の1.3%から鈍化し2015年12月以来の低水準
コアPCEデフレーターは前月比0.4%低下、市場予想の0.3%より弱く前月の横ばい(0.1%の低下から上方修正)を下回り2017年4月以来のマイナス
コアPCEの前年比は1.0%上昇、市場予想の1.1%と前月の1.7%を下回り2011年1月以来の低水準

チャート:PCEコアの前年比、2011年以来の伸びにとどまる

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(作成:My Big Apple NY)

――米株高が進み、6月2日時点でナスダックは2月19日につけた高値に1.4%に迫りました。S&P500も7.8%、ダウは11.1%と高値更新が視野に入ります。経済活動の再開で期待先行の米株高が進行中とされますが、米GDPの約7割を占める個人消費の屋台骨である所得と貯蓄率の急伸を踏まえれば、不思議ではないとも解釈できますね。この辺りは、別の記事でご紹介します。

(カバー写真:Steven Depolo/Flickr)

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