Industrial Production Growth Slows, Dragged By Auto.
※鉱工業生産の前月比の数値をお詫びして、訂正致します。
米8月鉱工業生産指数は前月比0.4%上昇し、市場予想の1.0%を下回った。前月の3.5%(3.0%から上方修正)を含め4ヵ月連続でプラス、年初来で6回目の増加となる。経済活動の再開が対面サービス以外で幅広く進むなか製造業活動は改善を続けたが、その半面自動車など回復鈍化もみられた。
前年比は以下の通り。
・鉱工業生産→前年比7.7%低下し、12ヵ月連続で低下し前月の7.4%から下げ幅を小幅拡大
・製造業→6.9%低下、14ヵ月連続で落ち込んだものの前月の7.3%から下げ幅を縮小
・鉱業→17.9%低下、4ヵ月連続でマイナスとなり前月の13.9%から下げ幅を拡大
・公益→0.5%上昇、3カ月連続でプラス
稼働率は71.4%と、市場予想と一致した。前月の71.1%(70.6%から上方修正)に続き、コロナ禍により外出禁止令が発動され始めた3月以来の71%台に乗せた。
チャート:鉱工業生産は製造業(前年比)が支え回復、稼働率の上昇を促進
鉱工業生産指数の内訳を前月比でみると、製造業(全体の75.3%)が4ヵ月連続で上昇した。航空機/輸送機がけん引したほか、一次金属や雑貨、組み立て金属、コンピュータ・電子機器などが支えた。これまで上昇をけん引してきた自動車は4カ月ぶりに低下、3月以降の落ち込みを完全に相殺するには至らなかった。そのほか油価が40ドル前後で伸び悩むなかで鉱業(全体の14.2%)は3ヵ月ぶりに低下。公益(全体の10.4%)は夏場の冷房需要がクールダウンし、3カ月ぶりに低下した。詳細は、以下の通り。
■製造業 1.0%の上昇、4カ月連続でプラス<前月は3.9%の上昇、6ヵ月平均は0.8%の低下
▽耐久財 0.7%の上昇、4ヵ月連続でプラス<前月は6.5%の上昇、6ヵ月平均は0.6%の低下
・航空機/輸送機 4.2%の上昇、4ヵ月連続で上昇<前月は6.5%の上昇、6ヵ月平均は1.0%の低下
・一次金属 2.1%の上昇、3ヵ月連続で上昇<前月は4.4%の上昇、6ヵ月平均は3.1%の低下
・家具関連 1.8%の上昇、4ヵ月連続でプラス<前月は1.0%の上昇、6ヵ月平均は1.2%の低下
・組立金属 1.5%の上昇、過去4カ月間で3回目の上昇>前月は0.6%の低下、6ヵ月平均は1.7%の低下
・木材 1.4%の上昇、4ヵ月連続でプラス<前月は3.5%の上昇、6ヵ月平均は0.6%の低下
・コンピュータ/電子部品 1.1%の上昇、3ヵ月連続で上昇>前月は1.3%の上昇、6ヵ月平均は0.2%の上昇
・機械 1.0%の上昇、4ヵ月連続でプラス<前月は3.1%の上昇、6ヵ月平均は1.2%の低下
・電気製品 0.9%の上昇、2カ月連続で上昇>前月は1.7%の上昇、6ヵ月平均は2.0%の低下
・自動車関連 3.7%の上昇、4ヵ月ぶりにマイナス<前月は31.7%の上昇、6ヵ月平均は25.9%の上昇
チャート:製造業、品目別ではコンピュータ・電子機器の回復が顕著に、自動車はコロナ禍以降の低下を完全に相殺できず。
▽非耐久財 1.2%の上昇、4ヵ月連続でプラス<前月は1.5%の上昇、6ヵ月平均は0.8%の低下
・服飾 7.8%の上昇、過去4カ月間で3回目の上昇>前月は2.6%の低下、6ヵ月平均は0.4%の低下
・プラスチック/ゴム 3.7%の上昇、4ヵ月連続でプラス>前月は1.9%の上昇、6ヵ月平均は0.6%の低下
・石油製品 2.3%の上昇、4ヵ月連続でプラス<前月は5.6%の上昇、6ヵ月平均は2.1%の低下
・食品/飲料/タバコ 1.0%の上昇、4ヵ月連続でプラス<前月は0.1%の上昇、6ヵ月平均は0.4%の低下
・化学品 0.6%の上昇、4ヵ月連続でプラス>前月は1.7%の上昇、6ヵ月平均は0.5%の低下
・繊維 0.1%の上昇、4ヵ月連続でプラス<前月は2.3%の上昇、6ヵ月平均は1.5%の低下
■公益 0.4%の低下、3カ月ぶりに低下<前月は3.8%の上昇、6ヵ月平均は0.5%の上昇
・電力 0.4%の低下、3ヵ月ぶりに低下<前月は4.3%の上昇、6ヵ月平均は0.7%の上昇
・天然ガス 0.2%の低下<前月は1.3%の低下、6ヵ月平均は0.5%の上昇
■鉱業 2.5%の低下、3ヵ月ぶりに低下<前月は1.4%の上昇、6ヵ月平均は3.0%の低下
――米8月鉱工業生産は、非耐久財が牽引したほか製造業のうち航空機/輸送機や金属関連、コンピュータ・電子機器などが支え、4カ月連続で上昇しました。主要業種を振り返ると、コロナ禍直前の2月との数字を比較してコンピュータ・電子機器が上昇に反転しています。一方で、自動車は今回4カ月ぶりに低下したため、2月以降の低下を完全に相殺するには至りませんでした。
チャート:2月時点の指数と今回の比較、コンピュータ・電子機器は上昇に反転
製造業生産は8月に鈍化しましたが、現時点では改善トレンドを維持する見通しです。米8月ISM製造業景況指数は2018年8月以来の水準へ上昇し、米9月NY連銀製造業景況指数も2018年11月以降で2番目の高水準でした。米8月新車販売台数も1,519万台と2月以来の水準を回復し、8月の鉱工業生産の落ち込みが一時的にとどまる示唆を与えています。ただ、キャタピラーが6~8月に機械売上高が前年比20%減と、3ヵ月連続で20%台のマイナスを維持したほか、フォードが9月に1,400人に早期退職を呼び掛けた点は気掛かり。製造業を始めとした生産活動は、ゆるやかなペースにとどまりそうです。
(カバー写真:Cory M. Grenier/Flickr)
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