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米6月小売売上高は増加も、前月分は下方修正され不確実性残る

by • July 18, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off2425

Retail Sales Unexpectedly Increase, But Uncertainty Remains.

米6月小売売上高は前月比0.6%増と、市場予想の0.4%減に対し増加した。前月の1.7%減(1.3%減から下方修正)を超え、年初来で4回目の増加となった。バイデン政権下で成立した現金給付効果の剥落に加え、サプライチェーン障害で生産が需要に追い付かない環境でありながら、ワクチン普及や経済活動の再開が再び消費を押し上げた。一方で、米5月貿易収支で消費財の輸入が小幅な伸びにとどまったように、ペントアップ需要が一巡したシナリオも依然想定される。何より、今回の結果はインフレによる押し上げ効果とされ、実質ではマイナスとの指摘もある。

自動車とガソリンを除いた場合は前月比1.1%増と、前月の1.0%減(0.8%減から下方修正)のマイナスを相殺した。国内総生産(GDP)の個人消費のうち約4分の1を占めるコントロール小売売上高(自動車、燃料、建築材、外食などを除く)は1.1%増と、市場予想の0.4%増を超えただけでなく、前月の1.4%減(0.7%減から下方修正)も上回り、年初来で3回目の増加となる。

チャート:小売売上高、前月比で改善

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チャート:前年比はベース効果で過去最高の伸びとなった4月から鈍化を継続

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(作成:My Big Apple NY)

前月比の内訳をみると、主要13カテゴリー中9項目増加し、前月の5項目から増加した。今回、最も力強く増加したのは雑貨、続いて電気製品や服飾、ガソリンスタンド、外食、一般小売などが入った。一方で、住宅市場の減速を背景に家具が最も落ち込み、続いて半導体不足に伴う減産が販売に影響したため自動車・部品も弱い。前月比の項目別詳細は以下の通り。

(プラス項目)

・雑貨→3.4%増、3ヵ月ぶりに増加>前月は3.5%減、6ヵ月平均は1.3%増
・電気製品→3.3%増、年初来で4回目の増加>前月は5.5%減と3ヵ月ぶりに減少、6ヵ月平均は4.6%増
・服飾→2.6%増、年初来で4回目の増加>前月は2.2%増、6ヵ月平均は4.7%増

・ガソリンスタンド→2.5%増、年初来で5回目の増加<前月は2.5%増、6ヵ月平均は4.7%増
・外食→2.3%増、4ヵ月連続で増加<前月は3.7%増、6ヵ月平均は5.6%増
・一般小売→1.9%増、3ヵ月ぶりに増加>前月は3.1%減、6ヵ月平均は2.3%増(百貨店は5.9%増>前月は1.9%増、6ヵ月平均は5.6%増)

・ヘルスケア→1.6%増、年初来で4回目の増加>前月は1.2%減、6ヵ月平均は1.3%増
・無店舗(主にネット)→1.2%増、年初来で4回目の増加>前月は2.3%減、6ヵ月平均は3.0%増
・食料/飲料→0.6%増、4ヵ月連続で増加<前月は1.0%増、6ヵ月平均は0.8%増

(マイナス項目)

・建築材/園芸→1.6%減、3ヵ月連続で減少>前月は5.3%減、6ヵ月平均は1.2%増
・スポーツ用品/書籍/趣味→1.7%減、3ヵ月連続で減少=前月は1.7%減、6ヵ月平均は3.8%増
・自動車/部品→2.0%減、2ヵ月連続で減少>前月は4.6%減、6ヵ月平均は2.7%増
・家具→3.6%減、2ヵ月連続で減少<前月は2.3%増、6ヵ月平均は2.0%増

チャート:6月の品目別動向、服飾や外食がけん引も建築・庭園や家具など住宅市場の減速に伴う落ち込みが足を引っ張る

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(作成:My Big Apple NY)

――6月小売売上高のうち、雑貨や電気製品、服飾など増加した品目はあまり高価格帯ではないものが目立ちました。逆に、引き続き高価格帯の家具に加え、建築・庭園など住宅市場の減速を受け減少。自動車・部品も減産の影響が尾を引き弱いままです。

20年2月との比較では、前月に続き全て2月の水準を上回りました。一方で、20年2月の水準を大幅に上回る品目は、6月に前月比で減少していたスポーツ用品/趣味/書籍を始め、自動車/部品、建築/園芸などと重なります。自動車は半導体不足の影響ですが、その他はペントアップ需要の一巡のサインか、留意すべきでしょう。

チャート:20年2月時点との比較

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(作成:My Big Apple NY)

経済活動停止前20年4~6月と再開後の比較をみると、今年4~6月にいかに支出が急増したかが伺えます。服飾は以下のチャートに含めていませんが、4月に769%増、5月も200%増ときて、6月は47%増でした。

チャート:品目別の小売売上高、前年比

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(作成:My Big Apple NY)

全ての品目が既に20年2月の水準を超えていることもあり、今後も個人消費が勢いを維持し続けるかは、疑問が残ります。実際、こちらで紹介したようにミシガン大学消費者信頼感指数の購入見通しは、落ち込みが目立つ。今後、7月から開始する扶養控除の影響で逆に消費が活性化するのか、失業保険給付上乗せ措置の9月6日期限切れやFedのテーパリング協議の影響と合わせ、引き続き見極めが必要と言えるでしょう。

(カバー写真:Rob Olivera/Flickr)

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