Has U.S. Economic Growth Lost Momentum? Q2 GDP Growth Less Than Expected.
米4〜6月期実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率6.5%増と、市場予想の8.50%増を大幅に下回った。ただ前期の6.3%増は超え、2期連続のプラス成長となっただけでなく、実質ベースで新型コロナウイルス感染拡大前の水準を超え過去最大を記録した。前年比では12.2%増と前期の0.5%増を超え、経済活動の停止で急激に落ち込んだ反動で2桁増となった。
米経済の寄与度は、項目別に以下の通り。GDPの約7割を占める個人消費が最も成長を支えた。一方で、半導体不足などサプライチェーン途絶の問題を抱え、企業の在庫投資のほか住宅投資を含む民間投資は2期連続でマイナス、純輸出は4期連続でマイナスだった。
・個人消費 7.8%pt、4期連続でプラス>前期は7.4%pt
・民間投資 0.6%pt、2期連続でマイナス<前期はマイナス0.4%pt
・純輸出 0.44%ptのマイナス、4期連続>前期はマイナス1.56%pt
・政府支出 0.27%ptのマイナス、過去4期で3回目のマイナス<前期は0.8%pt
チャート:Q2実質GDP成長率・速報値、
(作成:My Big Apple NY)
チャート:実質ベースでは、コロナ以前となる2019年Q4の水準超え
なお、GDP改定により2020年については3.4%減と、従来の3.5%減から上方修正された。ただし、1946年以来の大幅な落ち込みであることに変わりはない。
四半期毎の内訳は、以下の通り。
▽個人消費の内訳
・個人消費 11.8%増、4期連続で拡大>前期は11.8%増
・耐久財 9.9%増、4期連続で拡大<前期は50.0%増
・非耐久財 12.6%増、4期連続で拡大<前期は15.9%増
・サービス 12.0%増、4期連続で拡大>前期は3.9%増
▽民間投資の内訳
・民間投資 3.5%減、2期連続でマイナス<前期は2.5%減
・固定投資 3.0%増、4期連続で拡大<前期は13.0%増
・非住宅固定投資(企業の設備投資) 8.0%増、4期連続で拡大<前期は12.9%増
あ構築物投資 0.7%減、過去7四半期で6回目のマイナス<前期は5.4%増
あ機器投資 13.0%増、4期連続で拡大<前期は14.1%増
あ無形資産 10.7%増、4期連続で拡大<前期は15.6%増
・住宅投資 9.8%減、4期ぶりにマイナス<前期は13.3%増
・在庫投資 1,659億ドルの減少、2期連続でマイナス<前期は868億ドルの減少
チャート:国内の最終需要(変動が大きい貿易と在庫を除く)は前期比年率7.7%増と4期連続でプラスも、伸びは鈍化気味
▽政府支出
・政府支出 1.5%減、過去4四半期で3回目のマイナス<前期は4.2%増
あ連邦政府 0.5%減(防衛支出が0.8%減、非防衛財は10.4%減)、2期連続でマイナス<前期は11.3%増
あ州/地方政府 10.4%減、過去4四半期で3回目のプラス>前期は0.1%減
GDP価格指数は前期比6.0%の上昇と、予想5.4%を上回り1981年9月来で最大を記録した。コアPCE価格指数は市場予想通り6.1%上昇、前期の2.7%(2.5%から上方修正)を大きく上回った。
――Q2実質GDP成長率は、バイデン政権下で成立した1.9兆ドルの追加経済政策で現金給付や失業保険の給付上乗せが盛り込まれた結果、力強い伸びを維持した。とはいえ、①半導体不足などサプライチェーン途絶の向かい風、②失業保険給付上乗せを一因とする人手不足、③住宅価格高騰を受けた減速、④需要拡大を背景とした輸入増(純輸出の低下)、⑤政府支出の鈍化――などを受け、市場予想以下にとどまったことも事実。足元では、デルタ株感染拡大を受け、新規感染者数は6月後半の2万人割れから足元は6万人を超える状況です。こうした状況を鑑み、バンク・オブ・アメリカは2021年の米実質GDP成長率見通しを従来の7.0%増から6.5%増へ下方修正しました。また、2020年11月、ファイザー・独ビオンテック製のワクチンの有効性が確認される直前に21年の成長見通しを引き上げ、今年2月にさらに上方修正しQ2を最大11%増と掲げたゴールドマン・サックスも、今年の成長率予想を7.0%増から6.7%増へ下方修正しています。IMFが世界経済見通し最新版でバイデン政権の財政出動をにらみ、米成長見通しを2021年(従来:6.4%増→7.0%増)と2022年(従来:3.5%増→4.9%増)をそろって引き上げた動きと、対照的です。
もちろん、金融機関のエコノミストが成長見通しを下方修正されたとはいえ、米国は他国と比較すると力強い成長が見込まれます。その陰で、インフレ加速やペントアップ需要の一巡も気掛かり。中間選挙を控え正念場を迎える2022年、カギを握るのはインフラ計画と人的インフラ計画の行方であることに間違いありません。
(カバー写真:elysiumcore/Flickr)
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