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米7月雇用統計:中卒以下とアジア系の労働参加率、コロナ前の水準回復

by • August 9, 2021 • Latest News, NY TipsComments Off2545

Labor Participation Rates Are Now Above Pre-Covid Levels Among Asians And Americans With Less Than High School Diploma.

米7月雇用統計は、非農業部門就労者数(NFP)が市場予想を大幅に上回っただけでなく、平均時給や失業率、労働参加率、不完全就業率など幅広く改善しました。バロンズ誌の名物コラムが指摘するように、Fedによるテーパリング開始を正当化する内容です。8月26~28日開催のジャクソン・ホール会合や9月FOMCでのテーパリング発表の公算は小さいながら、年末までに決定する道筋が固まりつつあります。

労働市場の改善を確認するなか、業種別の平均時給を始め、人種や学歴別などでどのような結果になったのでしょうか?以下、詳細を追っていきます。

〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給

生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は0.4%上昇の25.83ドル、前年比は4.7%上昇し、管理職を含めた全体の前月比0.4%と一致、前年比の4.0%を上回った。

業種別を前月比でみると、0.4%以上だったのは13業種中で5~6月通り7業種だった。1位は娯楽・宿泊(1.4%上昇)、2位は輸送・倉庫と卸売(0.9%上昇)、4位は教育・健康(0.7%上昇)、6位は金融(0.5上昇)、7位は専門サービス(0.4%)だった。なお、6月の1位は娯楽・宿泊、2位は情報、続いて小売、製造業、建設、輸送・倉庫、公益が入った。6月と比較すると、製造業や建設の平均時給の伸びが鈍化した一方で、サービス部門で上昇が目立った。一方で、7月は前月比で平均時給が下落した業種はゼロだった。

チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額

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(作成:My Big Apple NY)

娯楽・宿泊はNFPの約4割を占め人手不足が深刻とされるなかで、前月比の伸びは6月(2.4%)から鈍化したが、7ヵ月連続で1%以上を記録した。また、デルタ株感染拡大を受け需要が高まる輸送・倉庫も4ヵ月連続で上昇し、過去4ヵ月間で2番目に高い伸びとなった。ただし、共和党知事州で失業保険給付上乗せなど特例措置を撤廃しており、娯楽・宿泊や輸送・倉庫など人手不足が深刻とされる業種に労働者が再参入すれば、賃上げ圧力が後退するか注目される。また、7月の平均時給のうち、前月以下の伸びにとどまったのは13業種中で7業種と、6月と変わらず生産労働者・非管理職の平均時給自体も4月以降、7月まで伸びは3ヵ月連続で鈍化している点にも留意したい。

〇労働参加率

労働参加率が61.7%と前月から上昇したように、働き盛りの男性(25~54歳)の労働参加率は全米が88.3%と前月を0.2%ポイント上回り、2020年3月以来の水準へ回復した。全米と白人、25~54歳、25~34歳そろって上向いただけでなく、20年3月以来の水準へ戻した。特に白人と25~34歳で改善が顕著となる。以下、季節調整済みで、白人は季節調整前となる。

・25~54歳 88.3%、20年3月以来の高水準、20年2月は89.1%
・25~54歳(白人) 89.3%、20年3月以来の高水準>前月は88.8%、20年2月は90.6%
・25~34歳 88.1%、20年3月以来の高水準>前月は87.4%、20年2月は89.0%
・25~34歳(白人) 89.4%、20年3月以来の高水準>前月は88.1%、20年2月は90.7%

チャート:働き盛りの男性、労働参加率はそろって20年3月以来の水準を回復

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(作成:My Big Apple NY)

働き盛りの女性は、25~54歳と25~34歳そろって上昇し前月と同じく2020年3月以来の水準を回復した。

・25~54歳 75.5%、2020年3月以来の水準を回復>前月は75.4%、20年2月は76.8%
・25~34歳 76.5%、2020年2月以来の水準を回復>前月は76.4%、20年2月は78.2%

〇縁辺労働者

縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は前月比で1.4%増の651.7万人(男性は317.8万人、女性は333.9万人)。前月から増加した背景は、男性が減少した一方で女性が大幅増となったため。こうした結果を反映し、女性が3ヵ月ぶりに男性を上回った。

チャート:就職を望む非労働力人口、ゆるやかに減少中

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(作成:My Big Apple NY)

〇人種別の労働参加率、失業率

人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年を比較すると、ご覧の通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。

チャート:人種別、25歳以上の大卒以上の割合

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(作成:My Big Apple NY))

人種別の労働参加率は、黒人以外で全て上昇した。上昇幅はアジア系(1.3ポイント)、白人(0.3ポイント)、ヒスパニック(0.2ポイント)と大卒の割合が高い順となっている点に注目。アジア系の労働参加率は、20年2月を超え19年11月以来の高水準を叩き出していた。娯楽・宿泊が雇用増加の約4割を担ったとはいえ、学歴の差が雇用に多少は影響している可能性を示唆した。

・白人 61.6%、20年10月以来の高水準>前月は61.3%、20年2月は63.2%
・黒人 60.8%、4ヵ月ぶりの低水準<前月は61.6%、20年2月は63.1%
・ヒスパニック 65.7%、20年3月以来の高水準>前月は65.5%、4ヵ月ぶりの水準を回復>前月は65.3%、20年2月は68.0%
・アジア系 64.5%、19年11月以来の高水準>前月は63.2%、20年2月は64.1%
・全米 61.7%、20年3月以降の高水準に並ぶ>前月は61.6%、20年2月は63.3%

チャート:人種別の労働参加率、アジア系と黒人で明暗が分かれる

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(作成:My Big Apple NY)

人種別の失業率は、全ての人種で低下した。黒人以外は労働参加率の上昇と合わせて改善しており、経済正常化に合わせ労働市場が健全化しつつあると言える。その半面、黒人の失業率低下は労働参加率の下振れが一因であり、これが一時的な現象か見極める必要がある。

・白人 4.8%、20年3月以来の低水準<前月は5.2%、20年2月は3.0%
・黒人 8.2、20年3月以来の低水準<前月は9.2%、20年2月は6.0%
・ヒスパニック 6.6%、20年3月以来の低水準<前月は7.4%、20年2月は4.4%
・アジア系 5.3%、20年3月以来の低水準<前月は5.8%、20年2月は2.4%
・全米 5.4%、20年3月以来の低水準<前月は5.9%、20年2月は3.5%

白人黒人の失業率格差は3.4ポイントと5~6月の4.0ポイントから大幅に改善したが、黒人の労働参加率の低下が一因であり健全な縮小とは言い難い。また、引き続きトランプ前政権で記録した19年8月の1.8ポイント超えの水準を保つ。

チャート:黒人と白人の失業率格差

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(作成:My Big Apple NY)

〇学歴別の労働参加率、失業率

学歴別の労働参加率は、経済活動が全面再開を受けて対面サービス需要が拡大したとみられ中卒で最も改善がみられ、20年2月以来の高水準をつけた。大卒以上も上昇した一方で、高卒と短大卒が低下し学歴別でまちまちとなった。

・中卒以下 46.7%、20年2月以来の高水準>前月は44.1%、20年2月は47.7%
・高卒 55.3%、3ヵ月ぶりの低水準<前月は55.9%、20年2月は58.3%
・大卒以上 72.4%、過去3ヵ月間のレンジを維持>前月は72.3%、20年2月は73.2%
・全米 61.7%、20年3月以来の高水準>前月は61.6%、20年2月は63.3%

チャート:学歴別の労働参加率、中卒以下と大卒以上で改善も、高卒と短大卒で低下しまちまち

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(作成:My Big Apple NY)

学歴別の失業率は、大学院卒以外で全て低下。大学院卒の失業率の上昇は、彼らを含む大卒以上の労働参加率の改善が考えられよう。逆に、中卒と高卒は労働参加率の低下が背景とみられる。

・中卒以下 9.5%<前月は10.2%、20年2月は5.8%
・高卒 6.3%、20年3月以来の低水準<前月は7.0%、20年2月は3.5%
・大卒 3.1%、20年3月以来の低水準<前月は3.5%、20年2月は1.9%
・大学院卒以上 3.2%、4ヵ月ぶりの高水準>前月は2.9%、20年2月は1.7%
・全米 5.4%、20年3月以来の低水準<前月は5.9%、20年2月は3.5%

--以上から、何が読み取れるのか?それは次回、解説していきます。

(カバー写真:Maryland GovPics/Flickr)

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