Global Markets Plummet As Two Big Default Risks Emerge.
負債総額3,000億ドル(約33兆円)と、中国の名目国内総生産(GDP)の約2%に相当する中国恒大の破綻懸念が国境を越え駆け巡り、世界同時株安を迎えました。
ニュースのヘッドラインやSNSで“中国版のリーマン危機(China’s Lehman Moment)”とセンセーショナルな文字が踊り、売りの連鎖が招いた格好です。
9月15日には、格付け会社S&Pが中国恒大を「CC」に格下げ、流動性枯渇に警鐘を鳴らしていました。
フィッチも、中国恒大がデフォルトなら多くのセクターに影響と警告、まさにリーマン・ショック前夜を彷彿とさせます。
その一方で、ウォール街からは冷静なコメントが寄せられています。
アライアンスバーンスティーンのアジア担当フィクスト・インカム共同責任者のジェニー・ゼン氏は、ドル建て中国不動産関連ハイイールド債市場において中国恒大は4%を占める程度であり、中国国内での不動産セクターでのドミノ倒しが発生しても、リーマン・ショックのような世界全体を巻き込んだ危機は発生しづらいと見込みます(リーマン・ショックを経験した筆者からすれば、当時エコノミストが「住宅市場は米GDPの1割程度に過ぎないため、大きな危機となりづらい」との分析を彷彿とさせますが・・)。
独アリアンツのモハメド・エラリアン首席経済顧問も、中国版のリーマン危機を懸念していません。しかし「問題は、市場での事故に直面するのか、政策的失敗に直面するかだ」と指摘。その他「中国市場への投資に対する信頼を恒久的に揺るがすものだ。また、米経済が鈍化しつつあり、Fedがテーパリングに向かい、中国もモメンタムを失いつつあるという、極めて不確実性の高いタイミングである点が問題」と語っていました。
その他、ウォール街からは「リーマン・ショックの二の舞というより、LTCM危機に近いのでは」との指摘も。ただ、人民銀行が当時のFedのように3ヵ月間で3回の利下げに踏み切るかは定かではありません。一方で、当時のような救済融資あるいは債務返済のシンジケートが結成される微かな希望を残します。
英キャピタル・エコノミクスのマーク・ウィリアムズ・アジア担当首席エコノミストは、中国政府による「管理された再編」の可能性を挙げます。いわく「中国恒大が開発用に保有する土地の権益と引き換えに、別業者が未完成の物件を引き継ぐ」というシナリオです。一方、同氏は「過剰な借り入れで成長してきた時代の申し子」なだけに、中国政府自体が規制強化に舵を切る状況もあって、公的資金を注入するとは想定していません。
環球時報の胡錫進編集長は「大きすぎてつぶせない企業ではない」とWechatに投稿、公的資金注入より自力での立て直しを主張しています。根拠として中国不動産市場の頭金比率の高さを挙げ、市場を急変させる破産申請の可能性は低いと訴えます。
一方で、JPモルガン・チェースは他セクターにドミノ倒しが及ぶリスクを回避すべく、政府による追加措置が必要と指摘。また、顧客やサプライヤーの利益を守るべく、中国恒大の事業継続の必要性を説きます。
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日経新聞が伝えたところ、中国の過去の債務不履行のケースを紐解くと「破産重整」と呼ばれる企業破産法に基づく措置、つまり事業を継続しながら再建を進められる枠組みが最も多く、約4割を占めるのだとか。この枠組みなら、JPモルガンの主張と合致しますね。中国政府としても、同社が労働市場20万人の従業員を雇っているだけでなく、毎年プロジェクト開発で380万人もの間接雇用を生み出しているだけに、無秩序な破綻を望んでいるはずはありません。
だからこそ、中国金融当局は、恒大集団側の求めに応じ債務支払いの期日延長を含む提案を承認、広州政府は中国恒大の大口の債権者と債権者委員会を設立に向け意見交換中とも伝わっています。中国恒大の債務には128以上の銀行と121以上のノンバンク系機関が関与し、利払いは今月23日の8,350万ドルを皮切りに年末まで7回を数え、総額は6億6,900万ドルに及びます。今月23日の利払い分は特約条項により、デフォルトと判断されるまで30日間の猶予期間が設定されていますが、債務再編交渉への時間は極めて限られていることに変わりありません。
債務と言えば、米国も問題を抱えます。債務上限引き上げで決着がついていない上、10月からの新年度入りの歳出法案も通過していません。
ペロシ下院議長とシューマー院内総務は20日、つなぎ予算(ブルームバーグによれば、12月3日まで)と、8月から再導入された米連邦債務の上限適用を中間選挙後となる2022年12月まで凍結する法案の議会通過を10月1日までに目指す方針を表明。ただし、マコーネル院内総務が発言するように、3.5兆ドルの育児・医療支援策を民主党が財政調整措置により単独で通過させる方針に抗議する狙いから、反対姿勢を鮮明にしています。
従って、上院で同法案を進める上で必要な賛成60票の獲得に不確実性が残り、9月末の年度末を経てつなぎ予算が成立しなければ政府機関の閉鎖、さらに10月半ば頃までに債務上限引き上げあるいは停止でまとまらなければ、米国初のデフォルトに陥るリスクが高まります。イエレン財務長官は19日付けWSJ紙の論説で政府債務の上限引き上げを要請しましたが、実際に上下院議員に説得している様子は見られませんが、果たしてイエレン氏は米国初のデフォルトに直面した財務長官として歴史に名を刻むことを回避できるのでしょうか。
(カバー写真:sparth/Flickr)
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