Private Payrolls Increase More Than Expected, Hiring Plans Surge Before Holiday Season.
9月のADP全国雇用者数、チャレンジャー人員削減予定数、新規失業保険申請件数をおさらいしていきます。
米9月ADP全国雇用者数は前月比56.8万人増となり、市場予想の43万人増を上回った。前月の34.0万人増（37.4万人増から下方修正）を超え、3ヵ月ぶりの高水準に。1回以上のワクチン接種率が8月2日に全米の成人人口の70％に達しバイデン政権の目標を達成するなか、デルタ株の感染拡大も8月末にピークアウトした結果、雇用回復が進んだ。また、米失業保険給付上乗せが9月6日に終了したことも、労働市場への復帰を促した可能性がある。なおADP全国雇用者数は民間のみであり、政府を含まない。
チャート：ADP全国雇用者数、9ヵ月連続で増加
（作成：My Big Apple NY）
セクター別では、サービス部門が46.6万人増と前月の29.7万人増（修正値）を上回り、9ヵ月連続で増加した。内訳は以下の通り。
・娯楽／宿泊→22.6万人増、9ヵ月連続で増加＞前月は15.5万人増
・教育／健康→6.6万人増、17ヵ月連続で増加＞前月は5.4万人増
・専門サービス→6.1万人増、17ヵ月連続で増加＞前月は3.0万人増
・貿易／輸送→5.4万人増、9ヵ月連続で増加＞前月は1.9万人増
・その他→2.8万人増、9ヵ月連続で増加＞前月は2.2万人増
・金融→2.2万人増、14ヵ月連続で増加＞前月は1.3万人増
・情報→1.1人増、2ヵ月連続で増加＞前月は0.4万人増
財部門（製造業、建設、鉱業）は前月比10.2万人増と7月の4.2万人増を上回った。ただし、7ヵ月連続で増加している。内訳は以下の通り。
・製造業→4.9万人増、7ヵ月連続で増加＞前月は1.1万人増
・建設→4.6万人増、7ヵ月連続で増加＞前月は4.6万人増
・鉱業→0.7万人増、8ヵ月連続で増加＜前月0.8万人増
ADPリサーチ・インスティチュートのニラ・リチャードソン首席エコノミストは、結果を受け「労働市場の回復は、4～6月期平均の74.8万人増から大幅に鈍化した」と振り返った。特に娯楽・宿泊が雇用増加を牽引するものの「中小企業を中心に、コロナ感染拡大の影響を受けている」と指摘。ただし、既に感染拡大の最悪期をひとまず脱したとみられ、数ヵ月先には「堅調な雇用増加への道が拓ける」と予想した。
▽米9月人員削減予定数、ITバブル期の2000年6月以来の低水準
米9月チャレンジャー人員削減予定数は前年同月比で84.9％減の1万7,895人と、8ヵ月連続で前年比で減少した。前月比では、1997年以来の低水準となった8月から13.8％増と小幅ながら4ヵ月ぶりに増加となる。
7～9月期では前年同期比89.4％減の5万5,260人と、1997年4～6月期以来で最小を更新した。年初来では、前年同期比87.3％減の26万5,221人と、同じく1997年以来の低水準を記録した。
チャート：人員削減予定数は単月で過去最低、年初来では1997年以来の低水準
（作成：My Big Apple NY）
発表元であるチャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのアドリュー・チャレンジャー副社長は、今回の結果を受け「企業は採用並びに雇用確保に動いており、売り手市場と化している」と指摘。さらに、企業は応募者の選定に時間を掛け過ぎ、採用にこぎ着けずにいる」とあって、解雇している場合ではないようだ。
人員削減が多かったセクターのランキングは、単月で以下の通り。今回1位に入ったヘルスケアは、ワクチン接種の義務化が影響した可能性がある。民主党知事州を中心に少なくとも22州で医療従事者のワクチン接種または定期検査の義務化、そのうち6州で義務化を制定。チャレンジャー社によれば「ファイザーのワクチンが米食品医薬品局（FDA）から承認を得た後にワクチン接種義務化が進むなか、企業は1,772人の人員削減を発表し、そのうち1,452人がヘルスケアだった」という。実際、NY州で大手病院グループは10月初めにワクチン接種を拒否した約1,400人を解雇していた。
1位 ヘルスケア 2,673人
2位 産業財 2,328人
3位 倉庫 1,936人
4位 サービス 1,679人
5位 テクノロジー 1,546人
年初来では、以下の通り。前月までの年初来では1位が航空・防衛、2位が通信、3位がサービス、4位がエネルギー、5位は2ヵ月連続で小売の代わりにヘルスケアがランクインした。
1位 航空・防衛 3万3,646人（前年同月は7万4,867人）
2位 通信 2万5,148人（同14万8,499人）
3位 サービス 2万2,505人（同14万1,779人）
4位 エネルギー 1万9,545人（同3万5,949人）
5位 ヘルスケア 1万8,936人（同5万5,462人）
州別動向は、年初来で以下の通り。1位は前月に続きテキサス州となった。なお、年初来の人員削減予定数で最多となった航空・防衛産業が盛んで、ボーイングが本社を置くワシントン州は、1～7月までの1だった。
1位 テキサス州 4万420人（前年同月までの年初来は15万4,064人）
2位 ワシントン州 3万8,555人（同8万5,708人）
3位 カリフォルニア州 3万7,193人（同37万2,288人）
4位 イリノイ州 1万2,375人（同3万4,337人）
5位 ミズーリ州 1万4,166人（同5万2,425人）
リストラ実施の理由別ランキングは、年初来で以下の通り。今回は、1位に閉鎖が入り、代わりに市場動向は2位に下がった。3位以下は前月と変わらない。一方で、新型コロナウイルスは3～4月に6位だったが、5～7月に7位、8月に8位を経て、今回は9位だった。
1位 閉鎖 5万3,571人
2位 市場動向 4万8,148人
3位 再編 4万7,297人
4位 需要低下 4万5,614人
5位 M&A 1万2,225人
採用予定数は前年同月比で1.1％増の93万9,790人だった。前月比では約10倍と、2ヵ月連続で増加した。年初来では前年同期比40.0％減の160万3,864人だが、これは2020年に経済活動停止の解除の反動で急増した前年の反動によるものである。
チャート：9月の採用予定者数は、前年同月を超える水準
チャート：採用予定数、年初来では2020年以下も高水準を維持
セクター別では、単月で以下の通り。年末商戦を控え、小売と輸送が目立った。
1位 小売 66万8,000人
2位 輸送 19万7,750人
3位 テクノロジー 5万6,339人
4位 自動車 1万900人
5位 ヘルスケア 1,820人
年初来では、以下の通り。
1位 小売 93万6,403人
2位 輸送 73万7,300人
3位 娯楽・宿泊 43万1,007人
4位 政府 11万6,612人
5位 倉庫 10万8,215人
なお、9月に入り年末商戦が近づくなかで、アマゾンは12.5万人、百貨店大手メイシーズも7.6万人の雇用計画を発表するなど、小売業は続々とフルタイムを見据えた臨時雇用に取り組みつつある。
チャート：今年の年末商戦、主要企業別の雇用増加動向
（作成：My Big Apple NY）
▽米新規失業保険申請件数、コロナ禍での最低を更新
10月2日週までの米新規失業保険申請件数は32.6万件と、市場予想の34.8万件を下回った。前週の36.4万件（修正値）を下回り、4週ぶりに減少。デルタ株の感染拡大がピークアウトするなか、大幅減となっている。
9月25日週までの継続受給者数は271.4万人と、前週の281.1万人（修正値）を下回り、2020年3月14日週以来の低水準だった。詳細の結果は、以下の通り。
・新規失業保険申請件数（10/2週）3.8万人減の32.6万件、4週ぶりに減少
・継続受給者数（9/25週）→前週比9.7万人減の271.4万人、2週連続で減少し2020年3月14日週以来の低水準
・失業者に占める被保険者の割合（同）→2.0％、前週の2.1％を上回り20年3月21週以来の水準に並ぶ
・PAU（同）→前週比5,776人増の2万3,453人
チャート：米新規失業保険申請件数は、約1ヵ月ぶりの水準へ減少
（作成：My Big Apple NY）
――米9月ADP全国雇用者数は堅調に伸び、まさにパウエルFRB議長がいう「よい」雇用統計となる期待が高まってきました。米新規失業保険申請件数も再び減少トレンドに戻しつつあるようで、バイデン政権もFRB高官も安堵したことでしょう。また、9月は採用予定数が急増したように、臨時雇用が見込まれます。前述したようにワクチン義務化の普及によるヘルスケアの雇用減少という攪乱要因に気を配る必要があるとはいえ、2ヵ月連続で失望を招くような結果は回避される公算大。一方で、米新規失業保険給付上乗せの終了により労働参加率が上昇すれば、失業率の改善にブレーキが掛かる見通しですが、テーパリング開始の方向性を変えることはないでしょう。
（カバー写真：Baker County Tourism Travel Baker County/Flickr）
Comments
ウォール街のエコノミスト、中国成長見通しを下方修正―米国への影響は？ Next Post:
米上院、債務上限引き上げを可決―バイデン大統領の支持率は40％割れ
about the author: Sawako
