The Reasons The Virginia Governor’s Race Is So Tight Ever.
こちらで、大接戦を演じる11月2日予定のバージニア州知事選をお伝えしました。少し時間が空いてしまいましたが、続報です。
チャート:10月12日時点での民主党マコーリフ候補、共和党ヤンキン候補の支持率
近年、民主党の地盤と化した同州で、なぜ共和党候補が善戦しているのでしょうか?
まず考えられるのは、民主党のマコーリフ候補の立場です。同氏は民主党の間でも支持が広がるプログレッシブの政策に明確な支持を表明していません。3.5兆ドルの歳出案に至っては、共和党のヤンキン候補に質問され「規模が大き過ぎる」と発言していました。また、約1.2兆ドルのインフラ法案に対し「上院では69票の賛成を受け2ヵ月も前に成立している・・議会でのおしゃべりはたくさんだ」と、同法案を人質に取る民主党プログレッシブへの苛立ちを隠そうともしません。こうした言動が、民主党のプログレッシブを中心に選挙戦への関心を低下させたはずです。
パンデミックの状況を踏まえると、コロナ対策が問題視されているようにも見えます。バージニア州では民主党のノーサム知事の下、州政府職員はワクチン接種あるいは週毎の検査を義務化しています。一方で、バイデン政権は9月9日にコロナ対策を強化し、①従業員100人以上の全ての企業にワクチン接種あるいは週1回の陰性証明の提出、②ワクチン接種に伴う有給休暇の義務付け、③これらの規則違反企業に数千ドル規模の罰金、④ワクチン義務化を病院、在宅介護者など全ての医療従事者に拡大、⑤連邦政府職員や委託業者の従業員へのワクチン接種義務化――などを盛り込みました。
こうした事情から、討論会で民主党のマコーリフ候補と共和党のヤンキン候補の間でワクチン接種義務化をめぐり、以下のポイントで白熱した議論が展開されたわけです。
〇民主党のマコーリフ候補
・ワクチン接種義務化を教職員や保育士、医療従事者に拡大
・「バージニア・イズ・フォー・ワクチン・ラバーズ」を展開、連邦政府の補助金を活用し接種率の低い地域での接種推進を目指す
〇共和党のヤンキン候補
・自身も家族もワクチンを接種済みだが、ワクチン接種は個人の判断に任せるべき
・ロックダウンの再開は、州経済に壊滅的な打撃を与えると予想され想定せず
マコーリフ氏にしてみれば、カリフォルニア州でのリコールでワクチン対策強化を図る民主党のニューサム知事の続投が決定した結果を踏まえ、勝利を呼び込みたいところ。マコーリフ氏が放映した過去約1週間半のTV広告の6割は、ヤンキン氏のコロナ対策を攻撃するものでした。
しかし、10月4~11日にCBSが実施した世論調査結果では、バージニア州民は企業でのワクチン接種要請には賛成が54%と反対の46%を上回るとはいえ、バージニア州のワクチン完全接種率は成人人口で73.6%(10月16日時点、全米は68.4%)に届きません。従って、接種済みを含め一部ワクチンに慎重な人々がヤンキン氏に傾いたと言えそうです。
またワクチンに注目されがちですが、経済の正常化が進むなかで有権者の視点がコロナからシフトしていることも考えられるます。余談ながら、米金融経済誌バロンズの投資家調査でも、市場にとってのリスク上位から新型コロナウイルスが消えておりました。
では、バージニア州民の関心は何かというと、その一つこそ州経済。バージニア州は4 ~6月期に前期比年率5.7%増だったとはいえ、全米の同6.7%増を下回っていました。
NY市長選でクローズアップされたように、犯罪の増加も懸念材料となっています。米連邦捜査局(FBI)によれば、殺人件数は2020年に全米で前年比29.4%増の2万1,570件と1960年代に統計を開始して以来で過去最大の増加幅となりました。バージニア州も例外ではなく、前年比18.0%増と全米ほどでないにしても2桁増だったんですよね。
こうした事情は、最新の世論調査結果でも明らかです。投票に行く理由として、州経済の改善が最も多く71%、次いで治安維持・回復が67%となり、ワクチン接種義務化は66%と後塵を拝していました。しかも、ワクチン接種義務化は賛成と反対が混ざった結果である点は留意すべきです。
チャート:投票に行く理由、アジェンダ(※ワクチン接種義務化は賛成、反対両方含む)
州経済の改善や治安回復が投票に行く理由との回答がコロナ対応を上回るなか、民主党のマコーリフ氏と共和党のヤンキン氏への政策期待度は、雇用創出(ヤンキン氏:45%、マコーリフ氏:41%)と治安回復(ヤンキン氏:45%、マコーリフ氏:35%)でヤンキン氏が小幅ながらリード。マコーリフ氏はコロナ対応で48%とヤンキン氏の41%を上回りましたが、逆に言えば支持を集めるにあたってコロナ対応に頼る状況と言えます。
チャート:政策別の各候補への期待度
何よりマコーリフ氏にとって頭痛の種は無党派層の支持率で、最新の世論調査結果でヤンキン氏が53%と過半数を獲得していました。その理由としては、前述したバイデン氏の支持率低下に加え、トランプ前大統領の不在が大きい。2020年の米大統領選でバイデン氏が勝利した理由は彼自身より、反トランプで民主党だけでなく無党派層がバイデン氏支持に傾いた事情が挙げられます。バイデン支持で結束しなかった背景から、足元でCNNなどリベラル寄りのメディアは民主党の支持率回復にはトランプ氏が必要とする論陣を張るなど、ある意味でトランプ・ロスが起こる有様です。ワシントン・ポスト紙の論説に至っては「バイデン氏の政治的ジレンマを救えるのはトランプしかいない」と掲げ、共通の敵を持つ有益性を伝えていました。
チャート:無党派層での各候補の支持率
大接戦とあって無党派層がヤンキン氏に優勢とあれば、共和党が知事の席を奪回する可能性が意識されます。その一方で、期日前投票ではマコーリフ氏が61%と、ヤンキン氏の37%を上回っていました。
チャート:期日前投票の動向では、マコーリフ氏がリード
混戦模様のバージニア州知事選ですが、共和党候補のヤンキン氏が敗北しても共和党にはノーダメージとの説もあります。というのも、上院は改選を予定していませんし、下院の議席数は220対212とわずか8議席とあって、過半数を獲得するにあたってリベラル寄りのバージニア州での勝利が必須ということではありませんから。
バージニア州と言えば「南部の入口(where the south begins)」との言葉で知られます。今回の結果で、他南部のようにレッドステート(共和党支持)に戻るのか、あるいはブルーステートの座を維持するのか、11月2日の投票結果が待たれます。
(カバー写真:Glenn Youngkin/Flickr)
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