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米11月個人消費支出は実質ベースで横ばい、インフレが重石に

by • December 26, 2021 • Finance, Latest NewsComments Off1898

Real Personal Spending Flat As Inflation Surge.

米11月個人消費支出は前月比0.6%増と、市場予想と一致した。前月の1.4%増(1.3%増から上方修正)に届かなかったとはいえ、年初来で9回目の増加となる。

個人所得は同0.4%増と、市場予想と一致した。前月の0.5%増を下回ったとはいえ、年初来で7回目のプラスとなる。引き続き、賃金・給与が所得を支えた。

個人消費支出の伸びが所得を上回ったため貯蓄率は6.9%と、前月の7.1%はもちろん新型コロナ感染拡大直前の水準(8.3%)を下回った。7月15日から開始した1人当たり最大300ドルの子育て世帯向け税額控除の前払い効果の減退、年末商戦を受けて個人消費は増加したが、貯蓄率が低下しただけに裁量消費余地が狭まったかたちだ。詳細は以下の通り。

〇個人消費支出
→子育て世帯向けの税額控除前払いや賃金上昇を支えに、名目ベースの前月比で4ヵ月連続で増加した。ただ米11月新車販売台数が20年5月以来の低水準近くを維持したため、耐久財は4ヵ月ぶりに減少非耐久財は逆にガソリン価格が高騰し約7年ぶりの水準を付ける上、食品や雑貨、光熱費などが支え、4ヵ月連続で増加した。感謝祭明けにオミクロン株が南アフリカで検出されたものの、サービスは9ヵ月連続で増加した。しかし、実質ベースで個人消費は前月比で横ばいにとどまり、物価上昇が名目の個人消費を押し上げたかたちだ。

・前月比0.6%増と市場予想と一致、10月は1.4%増
・前年比13.5%増と9ヵ月連続で増加、10月は12.2%増
・インフレを除く実質ベースでの個人消費は前月比横ばい、10月は0.7%増と年初来で7回目のプラス
・前年比では7.4%増と9ヵ月連続で増加、10月は7.4%増

個人消費支出の内訳(前月比ベース)
・財 0.1%増と年初来で8回目のプラス、前月は2.8%増
・耐久財 0.6%減と4ヵ月ぶりに減少し年初来で5回目のマイナス、前月は4.3%増
・非耐久財 0.5%増と年初来で7回目のプラス、前月は1.9%増
・サービス 0.9%増と9ヵ月連続で増加し年初来で10回目のプラス、前月は0.9%増

チャート:個人消費、前月比の項目別内訳

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(作成;My Big Apple NY)

〇個人所得
→子育て世帯向けの税額控除前払いや賃金・給与が支え、所得は名目ベースで2ヵ月連続で増加した。賃金・給与は、9ヵ月連続で増加。その他、住宅価格の高騰を受け賃貸需要が高まり、家賃収入も5ヵ月連続で増加した。なお、米疾病対策センター(CDC)は8月、新型コロナウイルス感染予防策対策として、感染率が高い地域を対象に新たに10月3日まで住宅立ち退き猶予期間を設定。しかし、家主や不動産団体が撤回を求め提訴し、米連邦最高裁判所が8月26日に無効の判断を下した結果、家賃の上昇が進み始めている。一方で、実質ベースでは年初来で8回目、4ヵ月連続でマイナスに陥り、物価上昇が所得増加分を吸収していたことが分かった。

・前月比0.4%増と年初来で7回目のプラス、市場予想と一致、10月は0.5%増
・前年比では7.4%増と7ヵ月連続で増加、10月は5.9%増
・実質ベースでは前月比0.2%減と年初来で8回目のマイナス、10月は0.2%減
・前年比は1.6%増と年初来で7回目のプラス、10月は0.7%増

所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。

・賃金/所得 0.5%増と9ヵ月連続で増加(民間は0.5%増、政府部門は0.2%増)、前月は0.8%増
・経営者収入 0.3%減(農業は4.8%減、非農業は0.1%減)、前月は0.1%増
・家賃収入 1.0%増と5ヵ月連続で増加、前月は0.9%増
・資産収入 0.3%増(金利収入が0.3%増、配当が0.2%増)、前月は0.8%増
・社会補助 0.8%増と3ヵ月ぶりに増加、前月は0.5%減
・社会福祉 0.8%増、前月は0.5%減(メディケア=高所得者向け医療保険は1.0%増と7ヵ月連続で増加、メディケイド=低所得者層向け医療保険は微減と2ヵ月連続でわずかに減少、失業保険は18.1%減と8ヵ月連続で減少、退役軍人向けは1.5%増と増加基調を維持、その他は3.3%増)

チャート:個人所得、前月比の項目別内訳

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(作成:My Big Apple NY)

〇可処分所得
・前月比0.4%増、10月の0.4%増と合わせ年初来で7回目のプラス
・前年比は5.8%増と年初来で10回目のプラス、10月は4.0%増
・実質ベースの可処分所得は0.2%減、前月の0.3%減を含め4ヵ月連続で減少
・前年比は横ばい、10月は1.0%減と年初来で6回目のマイナス

〇貯蓄率
・6.9%、10月の7.1%を下回り2017年12月以来の低水準

チャート:実質の個人消費は、貯蓄率の低下と共に大幅に伸びが縮小

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(作成:My Big Apple NY)

〇個人消費支出(PCE)デフレーター
→油価の上昇やサプライチェーン途絶による影響を受け、上振れ傾向が続く。PCEデフレーターの前年比は1982年7月以来、コアPCEも1989年2月以来の高い伸びを記録した。インフレ加速は一時的との見方を示していたFRBだが、12月FOMCではこの文言を取り下げ、参加者はインフレ見通しを上方修正。テーパリング加速を決定すると共に2022年FF金利見通しでは3回の利上げを見込む。

・PCEデフレーターは前月比0.6%上昇し市場予想と一致、10月は0.7%の上昇(0.6%から上方修正)
・前年比は5.7%上昇し市場予想と一致し1982年7月以来の高い伸び、10月は5.1%の上昇
・コアPCEデフレーターは前月比0.5%上昇し市場予想の0.4%超え、10月は0.5%の上昇(0.4%かから上方修正)
・コアPCEの前年比は4.7%上昇し市場予想の4.5%超え、10月の4.2%から加速し1989年2月以来の高い伸び

チャート:物価上昇を受け、実質賃金の伸びを抑制へ

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(作成:My Big Apple NY)

――米11月個人消費は前月比0.6%増と堅調でしたが、ふたを開けてみればインフレという下駄を履いていたに過ぎません。インフレを除く実質ベースでの個人消費も同横ばいですから、年末商戦は需要の先食いで本番に鈍化した可能性が高まります。

引き続き、懸念材料は所得と貯蓄率です。実質ベースでの所得は、いくら賃上げしようにもインフレ加速が吸収し、マイナス傾向が続きます。貯蓄率もコロナ直前の水準を下回るどころか、2017年末以来の水準まで低下してきました。

オミクロン株による感染拡大も、重症化に至らないと指摘されながら、一部で急増中です。NY州では12月22日時点での新規感染者数は約2.8万人と、過去最多を更新。結果、室内でのマスク着用義務化が再開され、カリフォルニア州でも同様の措置が敷かれています。

足元で、モビリティ動向は下振れしていないものの、改善にもブレーキが掛かる状況。ペントアップ需要が今後の消費を支える期待がある半面、繰り返しますがインフレ圧力による所得増加の効果打消し、貯蓄率の低下が懸念されるだけに、ウォール街の専門家の2022年米株見通しに慎重さを帯びるのは、致し方なしと言えるでしょう。

(カバー写真:Yisong Yue/Flickr)

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