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【追記】米1月CPIは1982年以来の高い伸び、6回以上の利上げ確率は8割超え

by • February 10, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2610

With Consumer Prices Reaches 40-year High, Fed Could Raise Rates More Than 6 Times.

※文末にて、FF先物市場での利上げ織り込み度につき追記致します。

米1月消費者物価指数(CPI)は前月比0.6%上昇し、市場予想の0.5%を上回った。とはいえ、前月と変わらず、2008年6月以来の高い伸びだった21年6月と9月の0.9%以下となった。オミクロン株の感染拡大を受け、原油価格が下落しガソリンもつれてマイナスに沈んだが、積雪に見舞われ暖房需要が拡大した結果、電力・ガスが急伸しCPIを押し上げた。また、食品もオミクロン株感染拡大を一因とした人手不足が影響したのか、一段と上昇。そのほか、服飾や娯楽、自動保険の伸びも目立つ。住宅価格の高騰を一因に、家賃も1999年以来の高い伸びとなった。ただし、1月に従業員約1割の新規感を発表したデルタ航空など人手不足による減便を背景に航空運賃のほか、中古車は高止まりしていたものの前月から伸びは鈍化した。

内訳を前月比でみると、エネルギー(全体の7.3%を占める)が0.9%上昇。ただし、ガソリンは同0.8%下落し、9ヵ月ぶりにマイナスに転じた。なおエネルギー情報局(EIA)によると、ガソリン価格は21年11月8日週に一時3.410ドルと2014年9月以来の高値をつけ、同年12月に一時3.275ドルまで下落、1月末に一時3.368ドルまで切り返したが、前月比では下落した。その他のエネルギーでは、電力など公益が2.9%上昇し前月の0.3%を超え急伸し、2014年3月以来の上昇率を記録。電力が4.2%と6ヵ月連続でプラスを維持し2006年1月以来の高い伸びとなったためで、逆にガスは0.5%下落と2ヵ月連続でマイナスだった。

エネルギー以外では食品・飲料(全体の14.9を占める)が0.8%上昇、2008年7月以来の力強い伸びに並んだ。伸びが加速した一因は、シリアル・パンの伸び加速で、1月は前月比1.8%上昇し20年4月以来の高い伸びとなった。外食も0.7%と高い伸びを維持。一方で、これまで上昇をけん引していた肉類・卵・魚が0.3%の上昇にとどまり、21年夏頃の1%超えから鈍化していた。なお、肉類の高騰を背景にバイデン政権は1月3日、寡占状態の食肉加工業者の間で競争を推進すべく、独立業者を支援するため10億ドル投じると発表した。

CPIコアは21年12月に続き前月比0.6%上昇し、市場予想の0.5%を上回った。だし、前月比では1982年6月以来の伸びへ加速した21年6月の0.9%以下が続く。

チャート:CPIの費目別寄与、前月比(21年12月は四捨五入前で0.575%に対し、1月は0.645%)

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(作成:My Big Apple NY)

食品とエネルギー以外をみると、前述したように航空運賃がホリデー明けでも従業員の感染者増加と減便に伴い高止まりしたほか、半導体不足に伴う減産を受け中古車が4ヵ月連続で上昇。オミクロン株感染拡大でも厳格な措置が講じられない環境を一因に服飾も4ヵ月連続でプラスとなった。また、自動車保険もオミクロン株感染拡大が自動車利用につながったためか、大幅なプラスに反転。その他、CPIの23.6%を占める帰属家賃は、2016年10月以来の高い伸びを維持し、家賃に至っては21年8月の立ち退き猶予期間の撤廃を一因に、1992年12月以来の上昇率を記録をつけた。一方で、宿泊はオミクロン株感染拡大やホリデー明けで需要低下もあって5ヵ月ぶりに下落した。新車は前月まで9ヵ月連続で上昇を経て、横ばいにとどまった。エネルギー関連と食品・飲料以外で主な項目の前月比は、以下の通り。

(上昇費目)

・航空運賃 2.3%の上昇、3ヵ月連続でプラス<前月は2.5%の上昇し7ヵ月ぶりの高い伸び
・中古車 1.5%の上昇、4ヵ月連続でプラスとなるなか最も小幅な伸び<前月は3.3%の上昇
・服飾 1.1%の上昇、4ヵ月連続でプラスとなり21年5月以来の高い伸びを維持=前月は1.1%

・自動車保険 0.9%の上昇、3ヵ月ぶりにプラスに転じ21年2月以来の高い伸び>前月は0.1%の下落
・娯楽 0.9%の上昇、3ヵ月ぶりにプラスに転じ21年4月以来の高い伸び>前月は0.1%の下落
・医療サービス 0.6%の上昇、7ヵ月連続でプラスとなり2019年10月以来の高い伸び>前月は0.3%の上昇

・家賃 0.5%の上昇、プラスのトレンドを維持し1999年12月以来の高い伸び>前月は0.4%上昇
・帰属家賃 0.4%の上昇、上昇トレンドを維持し2016年10月以来の高い伸びを維持=前月は0.4%の上昇
・住宅 0.3%の上昇、上昇トレンドを維持=前月は0.4%の上昇
・教育 0.1%の上昇、2ヵ月連続で上昇=前月は0.1%

(横ばい、低下項目)

・新車 横ばい<前月は1.2%の上昇、9ヵ月連続でプラス
・宿泊 3.9%の下落、5ヵ月ぶりにマイナスに転じ20年4月以来の落ち込み<前月は1.6%の上昇

CPIは前年比で7.5%上昇し、市場予想の7.3%を上回った。前月の7.0%を上回り、1982年2月以来の上昇率
となる。CPIコアは同6.0%上昇し、市場予想の5.9%を上回った。前月の5.5%を超え、1982年8月以来の高い伸びを記録した。

チャート:CPIの前年比、費目別の寄与など

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チャート:CPIとCPIコア、前年比

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(作成:My Big Apple NY)

――米1月CPIは電力や食品に加え、航空運賃や中古車、服飾、家賃が押し上げ高い伸びを維持しました。

経済活動の再開を受け物価の伸びが顕著な費目のうち、中古車は20年2月比で54.7%上昇し著しい状況が続きます。ただ、米1月新車販売台数が1,504万台と前月の1,244万台から回復するなか、中古車価格は今後鈍化する期待があります。

チャート:経済活動の再開で上振れが目立った費目、20年2月からみた上昇率

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(作成:My Big Apple NY)

CPIの14.9%を占める食費は、肉類・卵・魚介類の伸びがやや鈍化したとはいえ、シリアル・パン類などが上振れしていました。

チャート:食費の費目全てが20年2月から右肩上がりを継続

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(作成:My Big Apple NY)

7.3%を占めるエネルギーを始め、前述の生活必需品の費目も高止まりを維持。21年12月は暖冬の様相でしたが、1月に入ると積雪に見舞われ気温が低下したため、暖房需要を押し上げ電力・ガスは前年同月比13.5%上昇。食費(同7.4%)や家賃(同3.8%)と加速しました。ガソリン(前月:49.3%→1月:40%)は鈍化したとはいえ、家計を圧迫する状況に変わりありません。ただ、暖房需要は春にかけ後退する見通しで、あとはウクライナ情勢など地政学的リスクが後退し油価の上昇にブレーキが掛かるかどうかとなります。

チャート:食費に加え生活必需品のガソリン、電力・ガス料金のほか、家賃も家計を圧迫

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(作成:My Big Apple NY)

物価の高止まりは、実質賃金を押し下げ続けています。1月の実質平均時給は前年同月比1.7%下落し、10ヵ月連続でマイナスでした。ただし、下げ幅は前月の2.0%から縮小。実質賃金が上昇するには賃上げだけでなく、インフレ鈍化が待たれます。

チャート:実質賃金の下落に加え、生活必需品のインフレ加速で裁量消費余地が狭まる

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(作成:My Big Apple NY)

パウエルFRB議長率いるFedは、1月FOMCで①3月の利上げ示唆、②年内の保有資産圧縮――の方向を示しました。米1月雇用統計で賃上げ圧力を確認した上、今回のCPIの結果を受け、米10年債利回りは2019年8月以来の2%の壁を突破。では、利上げ織り込み度はどうなったかといいますと、NY時間午前11時15分時点で以下の通り。

チャート:3月利上げ織り込み度、引き続き25bpが73.4%と優勢

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チャート:年内の利上げ織り込み度は5回→6回へシフトし6回以上の織り込み度は約8割、毎回利上げも視野に

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(作成:My Big Apple NY)

3 月15~16日開催の次回FOMC会合では引き続き25bpの利上げの見方が優勢です。ブラインダー元FRB副議長がWSJ紙の論説に寄せたように、財政支援が剥落するなかオミクロン株感染拡大後の景気回復の見極めが必要であるほか、ベース効果を見極める必要があります。また、ウクライナ情勢が気掛かりながら、暖房需要の鈍化を受けてエネルギー関連の価格が一服する期待も。何より、これまで物価を押し上げてきた中古車も、足元でピークアウトの可能性を示唆していました。以上の観点から、市場関係者の間では3月FOMCをめぐり50bpの利上げよりも25bpずつ実施していき、着実にインフレを抑制する手段を選ぶと考えている節があります。3月FOMCの前には2月分の雇用統計とCPI発表を予定しますから、1月の結果だけで判断するのは時期尚早とみる向きもあったことでしょう。

【追記】

NY時間の2月10日、取引終了後時点でFF先物市場での利上げ織り込み度は以下の通り。

チャート:3月利上げ織り込み度、1日で50bp利上げ織り込み度が94.7%に大逆転

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:年内の利上げも、1.75%以上が前日の21.8%→74%へ急伸

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(作成:My Big Apple NY)

CPIの結果を受け、シティグループのエコノミスト・チームは3月FOMC利上げ予想を25bp→50bpへ引き上げました。彼らは「CPIの内容に基づけば、CPIは鈍化する前に6%台での推移が続き広範囲に波及する恐れがある」と指摘。その上で「3月FOMCは50bpの利上げに踏み切り、5月以降は5月、6月、9月、12月に25bpずつ行い、年内FF金利を125bp引き上げる」と予想しています。2023年の利上げは、3回となる見通しです。

ハト派からタカ派の急先鋒に転じたセントルイス地区連銀のブラード総裁が10日、ブルームバーグTVにて「7月1日までに100bpの利上げが望ましい」と発言したことも大きな影響を与えました。3月15~16日開催のFOMC、5月3~4日開催のFOMC、6月14~15日開催のFOMCの3回で100bpですから、少なくとも1回の50bp利上げ支持を表明した格好。同地区連銀総裁は今年の投票メンバーですから、FF先物市場が50bpの利上げを織り込むきっかけとなったわけです。

Fedが仮に50bp利上げに動くならば、パウエルFRB議長率いるFedが必ずメッセージを送るはずです。そうなれば、金融政策に関し2月と7月、半期に一度行うFRB議長による議会証言が注目されます。前回は2月23、24日に行われましたが、今年も後半に開かれるならば、その時に金融政策の示唆を与えるに違いありません。

なお足元でFRB議長は再指名、副議長2人と理事は承認手続きの真っただ中。Fedはこうした事情に鑑み、任期切れに合わせパウエル氏を臨時議長にする決定を下しました。グリーンスパン氏が上院の指名承認を待っていた時も、1996年3月3日~同年6月20日に臨時議長に就任していましたよね。パウエル氏の場合は、2月15日に上院銀行委員会で再指名承認の採決を予定し、上院本会議はその後となります。

カバー写真:Susan Jane Golding/Flickr)

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