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米8月個人消費支出は増加、コアPCEは再加速-年末商戦に影

by • October 11, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2193

Personal Spending Rebounds While Core PCE Deflator Accelerates Again.

米8月個人消費支出は前月比0.4%増と、市場予想の0.2%増を上回った。21年12月以来のマイナスとなった前月の0.2%減(0.1%減から下方修正)から増加に転じた。

個人所得は前月比0.3%増と市場予想や上方修正された前月(0.3%増)に並び、7ヵ月連続で増加した。

個人所得の伸びが消費支出を上回ったとはいえ、貯蓄率は前月通り3.5%。リーマン・ショックが直撃した2008年4月以来の低水準だった6月を上回った水準ながら、低いレベルが続く。

詳細は以下の通り。

〇個人消費支出

個人消費の結果は以下の通り。名目ベースとインフレを除く実質ベースともに増加した。

・前月比0.4%増、市場予想の0.2%増を上回り過去8ヵ月間で7回目の増加、前月は0.2%減(0.1%減から下方修正)
・前年比8.2%増と18ヵ月連続で増加、前月は8.6%増
・実質ベース前月比0.1%増、下方修正された前月の0.1%減(0.2%増から下方修正)から増加に反転
・前年比では1.8%増、18ヵ月連続で増加したなかで最も小幅な伸び

米8月新車販売台数が小幅減少したが、値上がりもあって2カ月連続で増加した。サービスも伸びを拡大。一方で、非耐久財はガソリン価格が軟調で、2カ月連続で減少した。

個人消費支出の内訳(前月比ベース)
・財 0.5%減と2カ月連続で減少、前月は0.7%減
・耐久財 0.1%増と3カ月連続で増加、前月は0.3%
・非耐久財 0.8%減と2カ月連続で減少、前月は1.3%減
・サービス 0.8%増と18カ月連続で増加、前月は0.1%増

チャート:個人消費、前月比の項目別内訳

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(作成;My Big Apple NY)

〇個人所得

個人所得の結果は以下の通り。。

・前月比0.3%増と、市場予想と上方修正された前月(0.3%増)に並び、7ヵ月連続で増加
・前年比では3.9%増と5ヵ月連続で増加、前月は3.8%増
・実質ベース前月比横ばい、前月は0.5%増
・前年比では2.3%減と8カ月連続で減少、前月は2.4%減

個人所得のうち、名目ベースで賃金・給与は16ヵ月連続で増加し、家賃収入も引き続き力強い伸びとなった。なお、米疾病対策センター(CDC)は21年8月、新型コロナウイルス感染予防策対策として、感染率が高い地域を対象に新たに21年10月3日まで住宅立ち退き猶予期間を設定。しかし、家主や不動産団体が撤回を求め提訴し、米連邦最高裁判所が21年8月26日に無効の判断を下したため、販売用物件の減少も重なって家賃の上昇が進行中だ。

所得の内訳は、名目ベースの前月比で以下の通り。

・賃金/所得 0.3%増と18ヵ月連続で増加(民間は0.3%増、政府部門は0.4%増)、前月は0.8%増
・経営者収入 1.2%増(農業は0.9%減、非農業は1.3%増)、前月は0.2%減
・家賃収入 0.4%増と7ヵ月連続で増加、前月は0.3%増
・資産収入 0.1%減と減少(金利収入は0.2%減、配当は横ばい)、前月は横ばい
・社会補助 0.2%増、前月は0.4%減
・社会福祉 0.2%増(メディケア=高所得者向け医療保険は0.7%増、メディケイド=低所得者層向け医療保険は0.4%増、失業保険は2.1%増、退役軍人向けは0.4%増と増加基調を維持、その他は0.5%減)、前月は0.1%減

チャート:個人所得、前月比の項目別内訳

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(作成:My Big Apple NY)

〇可処分所得
・前月比0.4%増と7ヵ月連続で増加、前月は0.3%増
・前年比は1.5%増と4ヵ月連続で増加、前月は1.4%増
・実質ベースの可処分所得は0.1%増、前月は0.5%増
・前年比は4.5%減と9ヵ月連続で減少、前月は4.7%減

〇貯蓄率
・3.5%と前月と変わらず、6月は3.0%と2008年4月以来の低水準

チャート:実質の個人消費は、再び貯蓄を取り崩して拡大した様子を示す

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(作成:My Big Apple NY)

〇個人消費支出(PCE)デフレーター
→全体のPCEはガソリン価格が最高値を更新した6月からエネルギーを中心に下押しするものの、コアは前月比・前年同月比ともに加速した。

・PCEデフレーターは前月比0.3%上昇、前月は0.1%下落と20年4月以来のマイナス
・前年比は6.2%上昇し7カ月ぶりの低い伸び、前月は6.4%(6.3%から上方修正)
・コアPCEデフレーターは前月比0.6%上昇し6月の水準に並ぶ、市場予想の0.5%や21年2月以来の低い伸びだった前月の0.1%超え
・コアPCEの前年比は4.9%上昇、市場予想と前月値は2021年10月以来の低い伸びだった4.7%

チャート:物価上昇ペースは再加速、引き続き実質賃金に下方圧力

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(作成:My Big Apple NY)

――米8月個人消費は名目と実質そろって増加したとはいえ、貯蓄率は低水準を維持しています。可処分所得も前年同月比で9カ月連続で減少している状況では、引き続き消費者の裁量的支出の余地は限られそうです。米国ではガソリン価格が再び上向きつつあり、OPECプラスの減産を受け油価も90ドル台を回復しており、年末商戦に影を落とすこと必至。しかもコアPCEが加速しているだけに、過去最高の売上を記録した21年の年末商戦と打って変わって、今年は厳しい冬を迎えです。

(カバー写真:Luis Gonçalves/Flickr)

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