Unemployment Rate Rises Among Black, Hispanic And Women While Each Labor Force Participation Rate Remains Low.
米10月雇用統計・NFPはこちらで紹介しましたように市場予想を上回った一方で、労働参加率が低下しながら失業率が上昇するなどまちまちな内容でした。しかも、家計調査ではパートタイムのみ増加し、フルタイムは減少。平均時給は全米と生産労働者・非管理職で前年同月比そろって21年8月以来の6%割れを迎えるなど、引き続き賃金インフレのピークアウト感も漂います。
では、業種別や性別や人種、学歴などではどうなったのか、詳細は以下の通りです。
〇業種別、生産労働者・非管理職部門の平均時給
生産労働者・非管理職(民間就労者の約8割)の平均時給は前月比で3カ月連続で0.4%上昇を経て、今回は0.3%へ鈍化。前年同月比は5.5%と、前月の5.8%を下回り21年8月以来の低い伸びだった。
業種別を前月比でみると、同部門の平均時給の伸び0.3%以上だったのは13業種中で8業種と、前月の速報値時点の7業種を上回った。今回の1位は公益(1.1%上昇)で、続いて娯楽・宿泊(0.6%上昇)、卸売と小売、建設(0.5%上昇)、専門サービスと製造業(0.4%上昇)教育・健康(0.3%上昇)だった。一方で、輸送・倉庫は年末商戦前にも関わらず0.1%下落した。
チャート:業種別でみた前月比の平均時給、チャート内の数字は平均時給額
〇労働参加率
労働参加率は62.2%と、前月の62.3%並びに20年3月以来の高水準に並んだ8月の62.4%から低下。働き盛りの男性(25~54歳)は全米で低下も白人男性で上昇し、明暗が分かれた。以下は全米男性が季節調整済みで、白人は季節調整前となる。
・25~54歳 88.5%、3カ月ぶりの低水準<前月は88.8%と2月に続き20年3月以来の高水準に並ぶ、20年2月は89.1%
・25~54歳(白人) 89.8%、7カ月ぶりの水準を回復>前月は89.7%、3月は90.0%と20年3月(90.3%)以来の高水準、20年2月は90.6%
・25~34歳 88.9%<前月は89.2%、4月は89.5%と19年11月以来の高水準
・25~34歳(白人) 90.4%、3月の90.5%に次ぐ高水準、20年2月は90.7%>前月は89.9%
チャート:働き盛りの男性、25~34歳は4ヵ月連続で低下
働き盛りの女性(25~54歳)では、まちまちとなり25~34歳で上昇した。
・25~54歳 76.5%<前月は76.6%、8月は77.2%と2004年4月(76.8%)以来の高水準
・25~34歳 78.0%>前月は77.2%、8月は78.6%と過去最高
65歳以上の高齢者の労働参加率は、男女ともに上昇した。物価高止まりと景気減速が背景と考えられよう。
・男性 24.3%、2月と並び20年2月(25.2%)以来の水準を回復>前月は24.2%、
・女性 16.1%、2020年3月と同水準>前月は15.9%
〇縁辺労働者
縁辺労働者(ここでは直近4週間にわたり職探しをしていないが、職を求める非労働力人口)で「今すぐ仕事が欲しい」と回答した人々の数は、労働参加率の低下するなかで前月比で2.0%減の571.7万人(男性は261.8万人、女性は309.9万人)と、そろって減少した。男女ともに減少に転じ、特に女性が前月比3.4%減と著しく、男性は同0.3%減と小幅にとどまった。
チャート:職を望む非労働力人口、男性が減少し女性が増加
〇男女別の労働参加率と失業率
男女別の労働参加率は、男性が横ばいで女性は低下。男性は前月の68.1%で変わらず、3月以来の高水準を保った一方で、女性は56.7%と6カ月ぶりの水準へ低下、20年3月の水準に並んだ8月の57.1%から後退した。
チャート:男女別、労働参加率、直近は女性が上向き
男女の失業率は男女ともに上昇。男性は労働参加率が横ばいでも前月の3.6%から3.7%へ、女性は労働参加率の低下にも関わらず20年2月の水準に並んだ前月の3.4%から3.7%と8カ月ぶりの水準へ上昇した。
チャート:男女別の失業率は、男女ともに低下も女性は20年2月以来の低水準に並ぶ
〇男女別の就業者、20年2月比
人種・男女別の就業者数を20年2月比でみると、引き続き黒人男性を始めヒスパニック系男性、ヒスパニック系女性がプラスだった。ただし、黒人男性は前月の7.0%増→6.1%増へ、ヒスパニック系女性も前月の4.4%増→4.3%増と前月を下回った。ヒスパニック系男性のみ、前月の4.1%→4.7%へ上昇した。
白人男性(前月は0.2%減→0.1%減)は、3カ月連続でマイナスも下げ幅を縮小した。白人女性(前月は2.9%減→3.1%減)は引き続きマイナスで下げ幅を拡大。黒人女性は前月の1.2%減→0.6%減と下げ幅を狭めつつ、6カ月連続でマイナスだった。
チャート:男女・人種別の就業者数、20年2月との比較
〇人種別の労働参加率、失業率
人種別の動向を紐解く前に、人種別の大卒以上の割合を確認する。2010年と2016年の比較では、こちらの通りアジア系が突出するほか、白人が全米を上回る一方で、黒人とヒスパニック系は全米を大きく下回っていた。
人種別の労働参加率は、黒人のみ低下した。白人、ヒスパニック系、アジア系は横ばいだった。
・白人 62.0%=前月は62.0%、3月は62.3%と2020年3月(62.6%)以来の水準を回復、20年2月は63.2%
・黒人 62.0%<前月は62.1%、3カ月ぶりの水準を回復、5月は63.0%と20年2月(63.2%)以来の高水準
・ヒスパニック系 66.1%、4月以来の低水準を維持=前月は66.1%、20年3月は67%、20年2月は68.0%
・アジア系 64.9%=64.9%、8月は65.3%と19年10月以来の高水準に並ぶ
・全米 62.2%<前月は62.3%、8月と3月は62.4%と2020年3月(62.7%)以来の水準を回復、20年2月は63.3%
チャート:人種別の労働参加率、黒人のみ低下し他は横ばい
人種別の失業率は、労働参加率が低下した黒人を含めそろって上昇。特にヒスパニック系は、1973年以来の低水準だった前月から0.4%も上昇した。
・白人 3.2%>前月は3.1%と20年2月(3.0%)以来の低水準
・黒人 5.9%>前月は5.8%と19年11月以来の低水準に並ぶ
・ヒスパニック系 4.2%>前月は3.8%と1973年以来の低水準
・アジア系 2.9%>前月は2.5%と4カ月ぶりの低水準、5月は2.4%と19年6月以来の低水準
・全米 3.7%>前月は3.5%、20年2月の水準に並ぶ
チャート:人種別の失業率、軒並み上昇
白人と黒人の失業率格差は、横ばい。白人と黒人そろって0.1%ポイントずる上昇したため、失業率格差は2.7ポイントと、20年4月以来の水準に低下した6月の2.5ポイントに次ぐ水準となった。ただし引き続き、トランプ前政権で記録した19年8月の1.9ポイント超えの水準を保つ。
〇学歴別の労働参加率、失業率
学歴別の労働参加率は、中卒を除いて全て低下した。
・中卒以下 46.7%、8カ月ぶりの高水準、2月(46.8%)は20年2月(47.8%)以来の高水準>前月は45.7%
・高卒 55.9%<前月は56.1%と21年12月以来の低水準に並ぶ、1月は57.2%と20年2月(58.3%)以来の水準を回復
・大卒以上 72.8%<前月は73.0%、5月は73.3%と20年1月以来の高水準
・全米 62.2%<前月は62.3%、8月は62.4%と2020年3月(62.7%)以来の水準を回復、20年2月は63.3%
学歴別の失業率は、労働参加率の上昇した中卒で顕著に上向いたほか、高卒や大卒以上も上昇した。
・中卒以下 6.3%、9カ月ぶりの高水準>前月は5.6%、2月は4.3%と1992年の統計開始以来で最低
・高卒 3.9%>前月は3.7%、6~7月は2ヵ月連続で19年9月(3.5%)以来の低水準
・大卒 1.9%>前月は1.8%、07年3月以来の低水準に並ぶ
・大学院卒以上 1.7%>前月は1.5%と8カ月ぶりの低水準、21年12月は1.2%と1992年1月の統計開始以来で最低
・全米 3.7%>前月は3.5%と20年2月の水準に並ぶ
チャート:失業率は中卒以下を始め、全て上昇
--米10月雇用統計の詳細のポイントは、以下の通り。
①生産労働者・非管理部門の平均時給全体の前月比の伸びを上回った業種は8業種と前月の7業種を上回り、前月比では賃金上昇圧力が執拗であることを示唆。
②働き盛りとされる25~54歳の労働参加率は、男性では白人のみで改善、女性はまちまち、65歳以上の労働参加率はそろって上昇
③男女別の労働参加率は男性が前月と変わらず、女性は低下。ただし失業率は労働参加率が低下した女性と合わせ上昇
④人種別の労働参加率は黒人のみ低下で他は横ばい、失業率は労働参加率が低下した黒人を始め全て上昇し、特に雇用回復を支えたヒスパニック系で顕著に上昇
⑤学歴別では中卒のみ労働参加率が上昇したが、失業率は中卒を含めそろって上昇
②~⑤の結果通り、労働市場の減速局面で影響を受けやすい女性、非白人の間で弱含みを確認しました。単月の数字で判断すべきではありませんが、特に黒人は大卒の割合が低いなど構造的な事情から、景気減速局面で最もインパクトを受けやすい人種であり、労働参加率の改善でも失業率が上昇した点は気掛かりです。失業率以外に注目すべきは、黒人の就業率です。1980年以降の景気後退局面で、黒人の就業率は景気後退前の12カ月間で平均6.8回は低下してきました。足元の12カ月間では5回低下しており、景気後退の黄信号が灯っています。
チャート:黒人の就業率低下と景気後退
コロナ禍で、パウエルFRB議長は20年6月のFOMC後の記者会見から「黒人とヒスパニック系における失業の増加は深刻」と言及し、20年8月のジャクソン・ホール会合の講演では雇用の最大化という統治目標に「広範かつ包摂的(inclusive)」の意味を加え、人種格差などに配慮した目標達成を打ち出しました。しかし、労働市場が回復しインフレ抑制が最優先課題へシフトした過程で黒人とヒスパニック系への文言もポジティブな内容へ修正され、今年9月FOMCからは文言を削除しています。仮に景気後退入りとなれば、黒人を始めヒスパニック系、女性など社会的マイノリティに負担を強いることになりますが、果たしてFRBは彼らに犠牲を強いるまでインフレ抑制を続けるのか。中間選挙前から民主党陣営から利上げ打ち止めの圧力が掛かるなか、仮に選挙で大敗すれば、さらに同党からの反発が強まりかねません。
画像:民主党陣営、Fedの積極的な利上げに批判を展開
(カバー写真:WOCinTech Chat/Flickr)
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