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米11月CPIは鈍化傾向を確認、市場は23年Q4に2回の利下げを織り込み

by • December 13, 2022 • Finance, Latest NewsComments Off2815

Inflation Hits Lowest For The Year, Calms Concerns Over Higher Rates.

米11月消費者物価指数(CPI)は前月比0.1%上昇し、市場予想の0.3%を下回った。前月の0.4%以下で、4カ月連続で上昇した。エネルギーを始め中古車、航空運賃、宿泊などが押し下げ、ただし、帰属家賃や家賃は引き続き堅調な伸びを保った。FF先物市場では、結果を受け米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測が後退し、ターミナル・レートは市場予想を上回った米11月生産者物価指数(PPI)後の5.25%から5.0%へ下方修正されただけでなく、利下げ転換見通しも2023年12月の25bp1から同年11月と12回にわたって25bpずつ2回に修正された。

チャート:FF先物からみたターミナル・レート(各FOMCで最も確率が高いFF金利水準を採用)

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(作成:My Big Apple NY)

内訳を前月比でみると、原油価格が80ドル前後で推移するなか、エネルギー(全体の7.3%を占める)1.6%下落し、過去5カ月間で4回目の低下を迎えた。ガソリンも2.0%低下し、過去4カ月間で3回目のマイナスとなる。その他のエネルギーも軟調で、電力など公益は1.1%と2カ月連続で下落。電力が0.2%低下したほか、ガスも3.5%低下しそろって2カ月連続でマイナスとなり公益を押し下げた。

エネルギー以外では食品(全体の13.4%を占める)が前月比0.5%上昇し、8~9月の0.9%、10月の0.8%を下回った。なお、コロナ禍で経済活動が停止した20年4月は1.4%上昇していた。詳細をみると、肉類・卵・魚は逆に0.2%低下、5カ月ぶりのマイナスとなった。なお、肉類の高騰を背景にバイデン政権は1月3日、寡占状態の食肉加工業者の間で競争を推進すべく、独立業者を支援するため10億ドル投じると発表した。しかし、ウクライナ情勢緊迫化の影響もあって、シリアル・パンが同1.1%と、15カ月連続で上昇しただけでなく前月のから上振れ。その結果、食費は同0.5%と前月の0.4%を超え堅調な伸びを維持した。一方で、外食は3カ月連続で同0.5%上昇、賃上げトレンドを一因に1981年3月以来の伸びとなった10月の0.9%を下回ったとはいえ堅調な伸びを保った。

CPIコアは前月比0.2%上昇し、市場予想と前月の0.3%を下回った。なお、21年6月は同0.9%と1982年6月以来の伸びへ加速していた。

チャート:CPIの費目別寄与、前月比は引き続きガソリンなどエネルギーが押し下げたものの食品とその他が上昇を主導

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(作成:My Big Apple NY)

食品とエネルギー以外をみると、中古車が5カ月連続で低下したほか新車も横ばいだった。また、経済正常化の恩恵を受け上振れしていた航空運賃や宿泊も弱い。一方で、自動車保険と自動車メンテナンスは力強い伸びを保った。さらに、帰属家賃や家賃は、高止まりを維持した。家賃は新規契約分でマイナスが続くものの、通常1~2年契約という事情もあってサンプルに足元の動向は反映されづらいもようだ。エネルギー関連と食品・飲料以外で主要な項目の前月比は、以下の通り。

(上昇費目)

・自動車メンテナンス/修繕 1.3%上昇、8カ月連続で上昇>前月は0.7%上昇、6月は2.0%と1974年9月以来の高い伸び
・教育サービス 1.0%上昇>前月は0.2%の上昇
・自動車保険 0.9%上昇、11カ月連続で上昇<前月は1.7%上昇と4カ月ぶりの高い伸び

・家賃 0.8%上昇、1986年4月以来の高い伸びに並び上昇トレンドを維持>前月は0.7%
・住宅 0.6%上昇、上昇トレンドを維持<前月は0.6%と1976年7月以来の高い伸び
・帰属家賃 0.6%上昇、上昇トレンドを維持<前月は0.8%と1990年6月以来の高い伸びに並ぶ

・娯楽サービス 0.5%上昇、11カ月連続で上昇<前月は0.7%の上昇
・服飾 0.2%上昇、3カ月ぶりに上昇>前月は0.7%低下

(横ばい、下落項目)

・新車 横ばい<0.4%上昇と9ヵ月連続でプラス
・宿泊 0.7%低下<前月は4.9%上昇と2021年7月以来の高い伸び
・医療サービス 0.7%低下、2カ月連続でマイナス<前月は0.6%の低下
・中古車 2.4%の低下、5ヵ月連続で下落>前月は2.9%の低下
・航空運賃 3.0%低下、2カ月連続<前月は1.1%の低下

CPIは前年同月比で7.1%上昇し、市場予想の7.3%と前月の7.7%以下となり、2021年12月以来の低い伸となる。CPIコアも同6.0%上昇、市場予想の6.1%並びに前月の6.3%を下回った

チャート:CPIの前年比、費目別の寄与もその他が大きい

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(作成:My Big Apple NY)

チャート:CPIとPCE、そろって鈍化傾向をたどる

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(作成:My Big Apple NY)

――経済正常化を受け、特に上昇した食品関連を除く費目は自動車保険(前月:12.9%→13.4%)以外で鈍化傾向を示した。宿泊(前月:5.8%上昇→3.1%上昇)、航空運賃(前月:42.9%上昇→36.0%上昇)。新車(前月:8.4%上昇→7.2%)などは、そろって前月の伸びを下回った。中古車に至っては同3.3%低下、2020年7月以来のマイナスに転じ、下落率は2017年9月以降で最大となった。

チャート:経済活動の再開で上振れが目立った費目、新車と中古車は鈍化も他は高止まり

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(作成:My Big Apple NY)

CPIの13.7%を占める食品の前年同月比は、シリアル・パン類(前月:15.9%→16.4%)以外で鈍化した。食費(前月:12.4%→12.0%)は伸びを縮めたが、肉・魚・卵が8ヵ月連続で伸びが前月を下回った(前月:8.0%→6.7%)ことで押し下げられた。外食は(前月:8.6%→8.5%)と、1981年4月以来の高い伸びを記録した10月に近い伸びを保った。

チャート:食費の費目全て、前年比で鈍化が優勢に

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(作成:My Big Apple NY)

7.3%を占めるエネルギーは前年同月比で13.0%上昇し、前月の17.6%を大幅に下回り2021年2月以降の上昇トレンドで2番目に低い伸びだった。ガソリンが前月の17.5%から10.1%へ減速したほか、公益(電力・ガス)も前月の15.6%を下回り14.2%だった。

チャート:生活必需品関連、家賃以外は鈍化傾向

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(作成:My Big Apple NY)

物価が高止まりするなか、実質賃金の伸びを押し下げ続けた。ただし、マイナス幅はCPIの伸び減速に合わせ縮小。11月の実質平均時給は前年同月比1.9%下落、20ヵ月連続でマイナスとなったとはいえ前月の2.7%を下回った。生産労働者・非管理職も1.2%下落し、前月の2.2%から下げ幅を狭めた。

チャート:実質賃金の下落を続けたものの、下げ幅は縮小

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(作成:My Big Apple NY)

インフレ鈍化を受け、FF先物市場では前述したようにターミナルレート見通しが25bp下方修正され5.0%となった。2023年の利下げ転換も同年11月と12月の2回が織り込まれつつあり、リスク選好度の改善につながった格好。米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者はタカ派とハト派で意見が対立しているようですが、パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で高金利を維持する姿勢を強調するなど、市場の過度な利下げ期待をけん制しかねません。ただ、パウエル氏のメッセージを文字通り受け止めるかは不透明。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙のFed番記者、ニック・ティミラオス記者のFOMC直前記事では「パウエル氏は人の話を聞く調整型とみられているが、インフレ抑制に確固たる意志をもつ」とのクオールズFRB前副議長のコメントを紹介していた。ただ多くの人々の脳裏には、2019年の利下げ転換や2021年11月のインフレ一時的発言撤回など、当時の環境に合わせ柔軟性をもって対応していたことが焼き付いているだろう。

(カバー写真:Calms/Flickr)

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