A Tale Of Two Labor Indicators : ADP Private Payrolls Hit 9-Month High, Job Opening Plunges To 2-year Low.
米4月ADP全国雇用者数は前月比29.6万人増と、市場予想の14.8万人増を上回りました。前月の14.2万人増(14.5万人増から下方修正)を超え、2021年2月以降の増加トレンドを継続しただけでなく、9カ月ぶりの高い伸びとなっています。
チャート:米4月ADP全国雇用者数、2022年7月以来、9カ月ぶりの高い伸び
ーー今回の好結果を受け、ドル円は一時135.94円へ上昇しました。ただし、米4月ADP全国雇用者数は2022年夏に統計手法を修正したものの、米雇用統計の民間就業者数との乖離はそれほど縮小していません。過去12カ月間の両者の乖離(ADP全国雇用者数マイナス米雇用統計・民間就業者数)は平均でマイナス5.5万人。これを大雑把に今回の数値に合わせると米4月雇用統計の民間就業者数は35,1万人増と予想されますが、ADPが上回るケースでの平均値はマイナス5.2万人なので、単純に当てはめると24.4万人増と見込めます。どちらにしても労働市場は引き続き堅調と判断されそうな雲行きとあって、引き続きドル円の上値は限定的と見込みます。
米3月雇用動態調査(JOLTS)を振り返ってみましょう。
米3月雇用動態調査によると、求人数は959.0万人と市場予想の977.5万人(下方修正)より弱い結果となりました。前月の997.4万人(993.1万人から上方修正)も3.9%下回り、3カ月連続で減少。求人数自体は、2021年4月以来の低水準でした。求人数は23ヵ月連続で失業者数を上回りましたが、その差は375.1万人と2021年9月以来で最小です。
チャート:求人数は3カ月連続で減少した結果、2021年4月以来の低水準
求人数が減少した一方で失業者が増加した結果、求人数は失業者の1.64倍と前月の1.68倍(修正値)を下回っただけでなく、2021年10月以来の水準へ低下しました。
チャート:22年9月FOMCでパウエルFRB議長が「労働市場を見る上で良い手段」と発言した求人数は失業者数の1.64倍に小幅低下
採用者数は前月比微減の615.0万人と、2カ月連続で減少しました。2022年3月の利上げ開始以降、前月比では13カ月間で10回目のマイナスとなります。
離職者数は593.2万人と前月の584.1万人(修正値)を1.6%上回り、4カ月ぶりに増加しました。解雇者数は前月比15.9%増の180.5万人と、2020年12月以来の水準へ膨らみ離職者数を押し上げました。一方で、定年や自己都合による自発的離職者は同3.2%減の385.1万人と、過去4カ月間で3回目の減少に。自発的離職者数の減少は、米景気の先行き不安を示唆するかのようです。なお、自発的な離職者数が減少したといっても、自動車大手GMが今年から年間10億ドルのコスト削減を目指し、早期退職制度を通じ全世界で定額給従業員5,000人を削減する方針を発表したように、”自主退職制度”を通じた離職であれば解雇者ではなく自発的離職者数にカウントされる場合があります。
チャート:離職者数は増加しつつ、解雇者数は大幅減
ーー米3月雇用動態調査は、求人数から採用者数、離職者数を含め、米4月ADP全国雇用者薄に反し労働市場の減速を示唆する内容でした。2つ重要な労働指標で明暗が分かれましたが、問題はFedが5月FOMC以降、利上げへ道を残すか否かで米景気とドル円の運命を決定することに違いありません。
(カバー写真:joiseyshowaa/Flickr)
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